この輪廻から外して貰えるのなら……
短編の恋する少女を書いてみたくなりました。
また死ぬのね。子供を身籠ることもできずに。
二度とこの家に生まれたくはなかった。
私は何のためにここで生きるのだろう。
いつもいつも、思い出しては絶望する。
私はこの世で生きている限りこの身体になるのだ。
どの時代に生まれようとも。
もう、何度目なのかすらわからない。
「貴方の子を産みたかった……」
そう告げて逝くのも……
今度こそ、違う言葉が出ればいいけど。
次こそ、違う人生を歩むのよ。
今まで精一杯頑張ったじゃない。
貴方に出会ってまた思い出したけど、今度は大丈夫。
いつものように、貴方に恋をしたけれど。
貴方にはすでに好い人がいたのだから。
「どうして…… 私があなたと婚約をしなければならないの? あなたには恋人がいるじゃないっ」
「何故わかってくれないんだ。この婚約には家の総てがかかっているといってるじゃないか」
「あなたの家の事なんて、私に関係ないわ」
「君の家も、これで持ち直すはずだぞ」
「家の為の結婚なんてしたくないわ。だいたい恋人はどうするの。お腹には子供がいるって聞いているのよ」
「結婚と愛情は別でいいだろう?」
「なんて酷いことを…… まさか彼女にそう言ったんじゃないでしょうね」
「納得してくれたさ。子供の認知はするのだし……」
「私がそれに納得するとでも?」
「するしかないだろう? 君は一人で生きていけるはずがない」
「私は嫌です。あなたと結婚なんてできません」
「我儘をいうなよ。昔はもっと素直だったじゃないか」
「我儘と? 愛人のいる男と結婚したくないのが我儘ですか?」
「親の決めた結婚を断るのが我儘というんだっ」
そう言って、彼は私の頬をはたいた……
「ふぅん。言うことを聞かないならと暴力をふるうのね」
「なぁ。どうすればいい返事をするんだ? まさか、子供を堕ろせというんじゃないだろうな」
「はあ? 私と結婚せず、彼女とすればいかか?」
「もういいっ。どうせお前はでていけやしないんだからなっ」
ドアを叩きつけるように閉めてでていく彼。
ええ、歩くことがようやくの私が飛び出すのは無理ですものね……
どうして諦めてくれないの?
どうして幸せそうな生活を見せつけるの?
あなた達が勝手にくっつけば、みんな幸せになるじゃない。
彼女もその子も、きちんと認められるじゃない。
どうして…………
「あの人は帰ったかしら」
「お帰りになられました……」
「そう……」
ほっとする……
顔を見ない済むことに。言葉をかわさずにすむ事に……
胸に痛みが走る。潰されていくような痛みが断続的に……
うっくぅっ……ずくんずくんと鈍く不正確な鼓動……
ふっふぅぅ……
こんどの終わりは病気なのかしらね……
暫くして痛みも遠のいたので、部屋の中を歩き回る。
どうすれば、いいのかしら……
彼が彼女と結婚できれば、少なくとも二人は幸せになれるはず……
私と結婚しても、彼は彼女とは切れないだろうし……子供もいるのだから……彼女も日陰者と揶揄されるばかり……
そして、そんな絆を目の前にして……わたしはただ苦しむばかり……
そのうち、早く死なないかと待たれるようになるんだわ……そう遠くは無いだろうけど。
「着替えます。用意を……」
「庭でしょうか?」
「ええ、少し外の風にあたりたいわ……」
着替えを手伝ってもらうと、部屋から庭へ通じる戸を開けた、
「少し歩いてきます」
そう告げて庭に降り立つ。ひっかけただけの靴は踵のないサンダル……
風が……身の回りを舞って通りすぎていく。
小さなハーブの花が、風にゆれ、香っていく……
庭の中央に位置する池のまわりに光が舞っている……
きらきらと水面に反射するヒノヒカリ。
『そこから身を投げても死にはしないぞ』
声が……
辺りを見回すが、何処にも声の持ち主は見当たらない。
『見えはせぬよ』
どこからか声が、聞こえる……
まだ狂ってはいないと思うのだけれども……
『どうした、我が守護の娘ごよ』
はっ!
「あなたさまが、私をこの家に縛りつけるお方でございましょうか」
この声のせいで私は苦しむのか?
『縛りつけてなど、おらん』
「なら……私はどうしていつも同じなのです?」
『同じ……と……は?』
「どの時も記憶が絶えずあります……あの木、その石、この池にそそぐ水にさえ、見覚えがあるのは……」
『契約……だ…… 我こそ 縛り付けられておる』
「どうすれば、その契約とやらが無効になるのでしょう」
『我はそなたの血筋と血縁に封じられておる』
「血筋? 私は一度として子を孕んだ事もございませんが」
『言い直そう。この家の血筋だ』
「では!この家の血筋が破棄をすれば、あなたさまも私も解放されるのでございましょうな」
『いや、そなただ。その記憶を持つそなたが破棄を宣言すれば解放されるが。良いのか?守護がいなくなってしまうぞ。そなたの父御も母御も……弟君も、今までのようには行かぬぞ?良いのか?』
「では、お聞き致しますが、守護とは何で御座いましょう。他の方々はお持ちなのでしょうか?」
『いや、与えられるものは極少数だ。だからこそ、何としても欲しがっておるな……』
「では、これからはご自分で頑張って頂くとしましょう」
『本当に良いのだな?そなたの想い人も巻き込まれ……』
「良いのです。あの方は既に他の方に巡り合えておられるのだから」
『そうか…… では、そなたはこれからは異界に魂が送られる事になるが、それでも良いか?』
「ええ。この場所でなければいいのです。記憶も無ければ猶よいと」
『わかった。では我の手をとり祝詞をあげよ』
すると目の前には壮年の偉丈夫が……
大きく厳つい手に私は手を預け……教えられた祝詞を……
『「……………………!」』
池のほとりにて息絶えた娘が見つかったのは、それからすぐの事。
えっと、もしかすると短編の異世界転生につながるかも?
頑張ってみました。