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その言葉の続きをまだ誰も知らない  作者: 西東 款音
第一章 まぶしい朝
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第四話 真夏の雪

あの後、市街に国内放送が流れた。


『ゴッツォ国政府に告ぐ。貴国の首都を制圧した。これ以上の被害を出したくなければ、今すぐに投降せよ。また、ゴッツォ国民に告ぐ。生き残っているものは我が軍の指示に従い移動せよ。以上。』


テラとラズトは生き残った人々に紛れ込み、移動していた。


「夏なのに雪が降ってるのどう思う?テラ。」


質問しているものの、ラズトは気の抜けきった様子だった。


「知らねぇよ。でも多分コイツらが原因であることは間違いないと思う。」


「.....そう。」


ラズトはそう言うと、また空を眺め始めた。テラもラズトが見ているであろう空を見あげる。空はさっきよりも曇っている。沈む日も見えないほどに。






「テラっ!!」


広場につくと、誰かがテラの名前をよんだ。その声の方向へ目を向けると胸が苦しくなった。


「アル...カヤナ.....。」


「大丈夫だったか!?すまない。一人にしちまって」


アルがこんなに必死に謝るのは初めてのことで、テラも反応にこまってしまった。


「謝るなよ。無事に生きてたし。カヤナもそんな顔しないで。」


「.....ごめんね。テラ...。本当に、ごめんね...。」


彼女は今にも消えそうな声でそう答えた。怖かったのは彼らのも同じはずなのに。テラはまた胸を押さえ込んた。


「それよりもお前らはどうやって逃げたんだ?」


テラはアルとカヤナに優しく聞いた。


「お前一人にした後、空からいろんな奴が飛び降りてきていきなり襲われたんだけど、誰かが助けてくれたんだ。...本当に助かった。」


アルはいつもより低い声でそう言った。それを聞いてテラはふとラズトに目を向けたが、彼は親指を立てるだけだった。


「テラも無事でよかった。本当に心配してたんだから!何度も電話したのに出ないしメール送っても返信こないから、私.....私.......。」


カヤナは肩を震わせながらテラの顔を見て言った。


「ありがとう、カヤナ。」


そう言うとカヤナはテラを抱きしめた。自分より背の小さい彼女の髪の毛はいい香りがした。彼女も女の子なのだとふと思い出した。


「そういえばテラ。春奈ちゃんは?」


テラはその名前を聞いて一瞬で全身に恐怖が流れた。


「.....ぁ、...っ。」


その様子を見てアルが言った。


「.......そうか。彼女も死んじまったか...。可哀想に。すまねぇな...テラ。辛いこと思い出させちまって。」


アルはテラの肩を叩いた。


違う違う、違う違う違うんだ。違うんだ。


テラは喉まで来た言葉を口から出すことはできなかった。





「貴様ら立て!移動を再開するっ!」


軍の一人が無様にも生き残った者たちにそう叫んだ。


「...テラ。ちょっと聞いてくれ。」


さっきまでずっと黙っていたラズトが呟いた。


「なんだよ。やっと喋った。」


「ごめんごめん。色々考え事をしてたんだよ。まぁそれはいいとして、テラ。一刻も早くこの島を出ろ。」


「.....は?」


テラは呆れすぎて気のない声を出してしまった。


「いいかよく聞け。お前はここにいちゃいけない。今まではここが一番安全だったが、さっきの女みたいのが、またお前を襲ってくる。お前はやつらにとって重要なに.....」


「待て待て、待ってくれよ!ラズト?どうしちまったんだよ。今日のお前は変だよ。今日起きてることも、言われたことも、お前の言動も全部変だ!...なぁ頼むよ。何か知ってるなら言ってくれ...。俺を...一人しなでくれ.....。頼む...。」


テラは本心を彼に伝えた。全力で伝えた。しかしラズトは、本当に困ったような顔して言った。


「.......本当にごめん。テラ。言いたいんだが、これは僕の独断でどうにかなる事じゃないんだ。でも一つだけ、一つだけなら多分、いい。」


ラズトはテラの反応を気にせず続けた。


「お前はここの奴らとは違う。全く違う種族なんだよ。」


また意味のわからないことを言われる。テラは下を向いた。


「もう、いいよ。」


ラズトはテラの返事に驚いた様子だったが、すぐに歩き出した。


「...本当にすまなかったと思ってるよ。でも今は言えないだけなんだ。多分、お前なら聞かなくても自分で見つけると思うけどな。」


「そうだといいけど。」


テラは無理矢理自分を納得させ、ラズトについていった。


「わからないことがあるのは嫌だ。」


テラは小さな声で呟き、拳を握りしめた。


絶対に見つけてやるんだ。


テラはそう決めて空を見上げようとした。その時だった。




「全員伏せろおおおおおぉぉおおお!!!」




また意味のない血が流れようとする。






辺りは黒い砂と雪が舞っていた。そしてついさっき嗅いだ生々しい匂いがした。血の匂いだ。


「ハハハ!!どこのどいつでしょうかぁ?我が同胞を殺した罪深ぁいやつはぁ?」


黒いマントを羽織った男がテラの目に映った。横を見るとテラズトが立っていた。


「あれぇ?貴方様はまさかぁ。ラズミフェベヒト大神卿様ではないですか?おおおおお!!やはりここにいらっしゃいましたかぁ!!ぁあなんとなんとお労しい姿になられてしまったのか!」


「やめろ。その名前で呼ぶな。それにお前のお友達を殺したのは僕だよ。」


ラズトは明らかに怒っているように見えた。


「あらぁ?そうなのですか。そうなると大変です。私は同胞を殺した奴を殺せという命を受けたのですが、貴方様ですかぁ。」


彼は首を気持ち悪い方向に捻りながら言った。


「なに。僕じゃ不満なのかい?邪魔者はいないよ。今君が軍の奴らを狙い殺しにしてくれたからね。」


ラズトは彼に向かってさっきまでの怒りがさっぱりと無くなったかのように言い放った。


「いえいえ。問題は無いのです。褒められるのも光栄であります。ですが、」


「ですが?なんだい?」


彼がポリポリと頭を書きながら言った。


「殺してもいいのですか?貴方様を。」


テラはゾッとしてまた固まってしまった。また何もできない。


「ほう、言ってくれるね。ここしばらくライフを使ってなくても、僕はそう簡単には潰れないよ。」


ラズトはさっきと同じように白い光の粒を体に集めた。


「.....楽しみ、ですねぇ」


彼も黒い光を体に集めだした。



テラはまた自分の弱さを思い知られたような気がした。今日だけで何回こんな気持ちになっただろうか。



「テラ」


テラはハッとして顔を上げた。するとそこには人差し指を口に当てたラズミがいた。


「逃げるわよ。」


ラズミはそう言うと、テラを担ぎあげた。ラズトと謎の男は激しい戦いを繰り広げていた。


「.....ラズミも知ってるのか。」


テラは小さな声で彼女に聞いた。


「...テラ。...知らないことは、罪ではないの。私たちが知っていることは、あなたは知らないほうが幸せに暮らせたの。でも、奴らが来ちゃったせいで...。もう、戻れないのよ。」


ラズミは今まで見たこともないもの凄いスピードで走りながら言った。


「あなたはもうここから出ても大丈夫なぐらいしっかりと成長してくれた。少し早いけどもう大丈夫。」


テラは何故か涙が止まらなかった。


「どうして、どうして俺ばっかり。こんなつまんないんだよ。何でだよ。なんでこんなに弱いんだよ。.....何も、できねぇんだよ.....なんで。」


テラはただ唸るだけだった。そんなテラに言った。


「ねぇ、テラ。」


「.....なんだよ。」


「あなたの将来の夢、覚えてる?」


いきなりの質問にテラは少しポカンとしてしまった。


「ふふっ。その感じじゃ忘れてるのかしら?」


自分の夢、忘れるはずがない。そう自分の夢は


「世界を旅する探検家だ。」


ラズミは微笑んで言った。


「そう。凄い夢だと思ったわ。あなたらしい、いや、あなたにしか見れない夢よ。」


「.....どうゆうこと?」


テラはラズミに聞き返した。すると彼女はまた楽しそうに笑って言った。


「あなたの夢。叶えてあげるわ。」


彼女はそう言ってまた加速した。




まだ長い長い一日が終わらない。

















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