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その言葉の続きをまだ誰も知らない  作者: 西東 款音
第一章 まぶしい朝
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第三話 忠誠

テラが登校のために家を出たあと、ラズトは部屋に戻った。


「.....まさかねぇ...。」


彼はボンヤリと窓の外を眺めながら言った。

さっきテラから感じた違和感が頭の隅に引っかかっていた。


「...よし。」


彼はそう言うと座っていた椅子から立ち上がり、コルクボードにかけてあった鍵を手にして階段を降りていった。


「どこ行くの?」


階段を降りると目の前にラズミがいた。


「ん。あぁ、下だよ。」


「そう。」


ラズミは少し心配そうに答えた。


「心配しないでラズミたん。ちょーと確認してくるだけだから。」


ラズトは"下"へ向かった。



数時間後、ラズトは用を済ませ上がった。いつの間にか夕方になっていた。ふと棚を見るとテラが小学生のときに書いた、将来の夢が綴られた可愛らしい作品があった。


「世界を旅する探検家.....。相変わらずだな。ここらではお前しかそんな夢抱かないよ。テラ。」


ラズトは愛おしそうに眺めながら呟いた。


「...んん。疲れたな。外行くか。」


ラズトは外へ出た。空はやたらと曇っていたが、太陽が薄ぼんやりと雲に映っていた。


「.......。」


ラズトは雲をじっと見つめる。そして目を閉じる。微かな寒気。常人には分からぬような、微かな。


「.....悪い予想ばかり当たる癖は治りそうにないのでね。」


そう言うとラズトは家の中に戻った。


「ラズミ、起きて。頼みがある。」


「...はい?」


うたた寝をしていたラズミの頭を軽く叩いて起こし、彼は言った。


「逃げる準備しといて。」


ラズミはハッとしたように頷き、家の奥に走っていった。


「...テラが危ないな。」


そう言って彼は家を飛び出した。






腹の痛みと頭痛が酷くなり、血が足りないという症状がテラの意識を消そうとしていた。相変わらず、悲鳴が聞こえ、血の匂いがして、"春奈"と名乗った少女が立っている。ただ、さっきと違うのは彼女の様子がさっきまでと違うことと、酷い寒気がすること。あとは、自分の前に知っている人がいることだった。


「テラ、大丈夫か?ちょっと待ってろよ。すーぐ終わるから。」


そう言ってラズトはテラの頭をポンポンと叩いた。


「...っ駄目だっ。アイツ普通じゃない...。逃げてくれラズト...。」


テラは彼のズボンの裾を掴んで訴えた。だが返ってきたのは、いつもの笑顔だけだった。


「大丈夫。」


彼は立ち上がって少女のほうを向いた。


「あらあら。これは嬉しいわ!御本人が来てくれるだなんてぇ!」


「そんなに有名なのかな僕は。」


「あらぁ。何をおっしゃいます。貴方様は我々の仲間ではないですかぁ」


彼女はさっきまでの態度とは全くの別物だった。まるで尊敬する何かを崇めるような...


「もう君はいつの話をしてるんだ。君に付き合ってる暇は無いよ。パパッと終わらせてあげるよ。」


「ああぁっ!!なんてこと!あぁ、貴方様と直々に戦えるだなんて!」


「...仲間って言ったわりには戦う気まんまんじゃないの?」


言い合っている二人には謎の光が集まっていた。


「あぁ、テラ。これ見ても今までのラズトを忘れないでね。」


またテラは変なことを言われた。


「...もう、嫌だ...。」


そう呟いたあと、周りは白い世界になった。





「.....ら...っら...。ぉい!テラっ!」


聞き覚えのある声に引き寄せられテラは目を覚ました。


「.....。っ!?さっきの女は!」


飛び起きてテラはそばにいたラズトに聞いた。


「そこで全身麻痺状態になって、釣りたての魚になってるよ。」


「は?」


そう言われて彼女のいた方を見ると彼の言葉に納得した。確かに麻痺していた。


「...でもどうやって。」


テラはラズト顔を恐る恐る覗き込んだ。


「大丈夫。ちょーとチョッカイ出しただけだよ。心配要らない。一応生きてる。後でお仲間のところに返してやるとやるさ。まぁ、この子はその人たちを騙して乗り込んできたのだろうけど。」


そうラズトは言って立ち上がった。


「.....なぁ、ラズト。何か知ってるなら話してくれ。今何が起きてるんだよ。なぁ!」


テラは苦しい喉を震わせて言い放った。しかし彼は、悲しそうにこっちを見てしかくれなかった。


「ごめんな...テラ。」


テラはその顔を見て、何も言い返すことが出来なかった。



ラズトに支えられ立ち上がったテラはラズトと一緒にその場を立ち去ろうとした。その時テラは殺気を感じた。


「伏せろ!テラっ!!」


ラズトが叫ぶとナイフのような物が二人を襲った。それをラズトは白く光る薄い壁で跳ね返した。


「しつこいなぁ。君は。そのまま黙っていれば良かったのに。」


さっきまで体が麻痺していた彼女が、まだ動かない下半身を引きずりながら叫んだ。


「ああっっ!!貴方様は我らが神をお忘れになったかあ!!!何故です?!貴方様のようにあれほど忠実だったお方があぁああ!!なぜぇええ!!」


「その気持ち悪い忠誠を君から奪ってあげるべきだね。テラ。ちょっと離すよ。」


「あ、...あぁ。」


ラズトは彼女に近ずいていった。相変わらず呻き続ける彼女に彼は言った。


「どうか君のライフが天の身元に帰りますように。」


「今の貴方様は何の神を崇めていらっしゃるのかあっ...」


「.....神ねぇそんなのがいたらこんな世界にはならないよ。」


「貴方様は変わってしまわれたのか.....。」


「ごめんね。もう落ちてくれ。」


ラズトそう言うと手に紅く染まった光を集め彼女の頭に押し当てた。その後彼女が動き出すことはなかった。


テラは何も出来なかった。






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