第二十四話 「 」
ソレイユでの祭りはかなり面白いものだった。ゴッツォにいたときの祭りは、神輿担いだり太鼓叩いたり色々面倒なことがあったか、それが無いなかった。
アオイともかなり喋れてよかった。ドロスエグフという男が死んで悲しんでいると思っていたが、彼女はしっかりとしていた。なんというか清々しい顔をしていたが、時々変に顔を顰めていた。もう立ち直っているというのなら、自分に問題がある可能性が高い。だが、それはよく分からなかった。
あの後アオイは直ぐにサラさんを探しに行った。これがまたものすごい早さで立ち去られたため、嫌われているのではないかと思ってしまった。
しばらくして無事にユサたちにも合流することができ、とりあえず夜遅かったため少し喋ったあと解散したのであった。
今は風呂も上がり、リビングのソファーでただぼうっとして天井を見ていた。相変わらず高い天井である。
「静かだぁ。」
他の人々は既にぐっすりと部屋で寝ていた。ノラやシラも慣れないことをしたためかなり疲れていたようだった。
それと、後からわかったことなのだが、シラとノラは自分だけでなく、シバの近くでも形状を保つことができるようだった。そのため、基本シバか自分のどちらかに二人は着いていた。
シラが祭りで行った実験によると、離れられる限界はせいぜい二十から三十メートルくらいらしい。それが知れただけでもかなり良かった。
「はぁ、色々あったなぁ。」
と、思いにふける。
そう言えば、自分にの過去についてしっかりと向き合ったことがなかったように感じる。
いい機会だ。色々思い出して更に深くふけっていこう。
まず、自分は重大な問題抱えている。これは自分を語る上で必要なこと第一号と言ってもいい。
自分には、十一歳以前の記憶がない。
ないというか、思い出せないのである。何をどうひっくり返しても思い出せないのである。
これはかなり厄介で、知人と話していても困るときは多々あった。
その上で少し昔話をする。
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あれは確か小六のとき。
ふと思ったことがあった。
"ゴッツォはどこまで続いているのだろう"
素朴な疑問だった。地図はあったのだが、端っこはしっかりと表記されていないものだった。この国が一体どこまで続いてどこで終わっているのか。それが無性に気になったのである。
ラズミやラズトに聞いてみても、"さぁ、どうなってるのでしょうね"とか"そうか、僕もよく分からないなぁ"と言った感じでしか答えてくれなかった。
今思えばラズミやラズトが答えなかったのは、知らないのではなく、知られたくないことだったのかもしれないものだったのかもしれないと思えてくる。
そして、テラという人間は一つ自分を手に入れた。
夢を見つけたのである。
"探検家"という夢を。
それを周りの人間に言うと、みんな"なんでそんなこと考えんの?この世界にはゴッツォしかないんだぞ?"といわれ、さんざん馬鹿にされたのだった。
自分は頭がおかしいのだろうか。
否定出来なかった。普通の人より記憶無いという謎の症状をもっていたのだから、そうおもってしまえたのも自然だった。
しかし、自分の夢を認めてくれる人がいた。それはもちろんラズトとラズミである。彼らはバカにしてこなかった。そんことよりも、夢ができたことを喜んでくれた。
"ついにお前はテラになったんだな。"
そう言って泣いていたのである。嬉し涙を流していたのである。
今でもその言葉の意味は全くわからないが、多分今はまだしらなくていいことなのだろう。
それからというもの、自分が小学校の時抱いた夢を中学の時も抱き続けていた。自分がここに生まれた意味を見つけられそうな気がしていたのかもしれない。
しかし、それは次第に頭の隅っこの方に追いやられてしまっていった。自分に出来ることの限界、それを中学三年の時に思い知らされた。高校に行けるかも危ういような成績。そこからは現実逃避の毎日だった。ただ、無意味なことばかりをしていた。
そんなとき、初めてラズトに殴られた。
"そんなことしか出来ないのか!今を見ろ!自分を見ろ!それができないなら家を出てけ!"
酷く落ち込んだのと同時に嫌悪と憎悪がこみ上げてきた。そして、家を出た。
こんな家出てってやる。どうせ血の繋がってない家族なんだ。
そう言ったのを今でも覚えている。
その後、ラズミが探しに来てくれた。それを嬉しいと思ったがすぐにそんな自分に嫌気がさした。自分は誰かに助けて欲しかったのだと気づいたとき、自分の無力さ改めて実感させられてしまった。そして、同時に二人に酷いことを言ってしまったことの申し訳なさが込あぜてきた。
きっと嫌われてしまっただろう。
しかし、ラズミが言った言葉は、全く違うものだった。
"あなたが産まれたのはあなたのお父さんとお母さんのおかげかもしれない。でもね、一番偉いのはあなたなのよ。親の身勝手でこの世界の降り立ったのにあなたはしっかりと今日まで生きてきた。それだけで十分あなた凄いのよ"
自分は知っている。ラズミはこの言葉でテラという男が調子に乗ることは無いと知っていることを。
これを聞いて、"俺は偉いんだ!"
なんて言うことは絶対にない。ただ、ラズミの優しさに深く感謝するばかりだった。
"さぁ、帰ろう。ラズトが待ってるよ。"
その日の帰り道は一生忘れない。
帰ってからはラズトに謝った。そして、今の気持ちを素直に言った。自分のすべてを吐き出した。
"お前はお前らしく生きろ。それはだらけるとかそう意味じゃない。しっかりとした夢と志をもってお前らしく生きろ。そういう生き方をすれば高校なんてすぐ受かる。"
それからは必死に勉強した。他の誰でもない自分のために。
そして、見事合格。
高校に入学したときは、とても清々しい思いだった。
それからというのも、普通日々だった。普通の日だった。何のために高校に来たのか少しずつわからなくなっていっていた。
そして、あの事件は起こった。
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「なんか結局、よくわかんねぇな。」
結論、よくわからない人生だ。平凡というのか。
そして、別にそれたいして嫌な思いはない。あの日々はあの日々として心の中しっかりと刻まれている。
ふと時計を見る。
深夜一時近く。
「......寝るか。」
そして、テラは部屋に戻り眠りについ
"ようよ、少し話さんか?"
いつも黙ってるくせに。こういう時ばっかりずるなぁ、お前。
"いいではないか、あっちだと喋るのが凄く疲れるのじゃ。ただでさえこんなか弱い体をしているというのちさに。"
はいはい。おやすみ。
"何を言っている。ようはすでに寝ているぞ。"
............。
"黙るな黙るな。"
で、何のようだよ。
"少し聞いておきたいことがっての。"
何だ?
"ようは十罪について聞いたことはあるか?"
十罪か、なんだそれ。
"過愛に溺れ、彷徨い歩き、ときには侮蔑し、自らを自棄する。はたまた忘却に走り、非愛し、幻滅し、毀傷につかまり、峭刻に安らう。そして、それらを断罪す。それが十罪。"
よく分からん。
"そのままじゃよ。過愛、彷徨い、侮蔑、自棄、忘却、非愛、幻滅、毀傷、峭刻、断罪。これが十罪。"
なんかダメなことなのか?
"駄目ではない。これが無くては人は人でなくなってしまう。ただ、人はこれらの力に捕まってはならないという戒めじゃ。これらの十罪は人をダメにする。"
まぁ、なんとなく分かったよ。覚えておく。
"それは懸命じゃ。では、おやすみ。"
いや、まじで少しだったのな。
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寝たんかいっ。