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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第四十八話 逃走



「ダメだ霧白君! この機を逃したら、二度とチャンスは訪れないかもしれない‼」

 東子⁉ な、何をバカなこと言ってるんだ! 

 というか、お前は戦うどころか……早くケガの手当てをしないといけなんだぞ!

 しかし……彼女の表情には、微塵も冗談を口にしている様子がない。

「いいから行くぞ!」

 もうこうなったら最終手段だ。

 俺は東子の負傷していない左腕、それと進の右手を掴むや……無理やり階段へ引っ張っていく。

「うおっ……放せっ!」

 進は俺に絶対従わないとばかり、進を掴んでいる俺の腕を捻り上げるや……強引に腕を振りほどいてしまう。

「っっ‼ 何考え――」

「逃げ切れるわけねえだろ! 誰かアイツら足止めしないと!」

 そんなことでモタついている内、とうとう警備員は二体とも完全に体勢を立て直してしまう。 

 …………足止め……足止め……。

 進の一言は俺の心をガツンとハンマーで殴りつけるかのよう、大きな衝撃を与えるものだった。

 警備員がこちらへやってくる様に進はと舌打ちすると、俺の襟首を掴んで引き寄せ……俺だけに聞こえる小声で呟いた。

「お前になら姉さんを任せられる」

 そう(ささや)いた進は……その後、一切反論受け付けないという風に二体の敵へと視線を集中させながら、力強く一歩前に踏み出した。

 ………………。

「おっ、おい! 霧白君!」

 東子は戸惑い叫ぶが問答無用。俺は彼女の背中と太もも辺りに手を回し……お姫様抱っこする。

 正直、進の言葉は間違ってない。

 三人では逃げ切れないのだ。警備員は外見にそぐわず俊敏である上、東子は負傷し迅速な行動が困難。

 さらに進には疲労が蓄積しており……若干動きの機敏さに衰えが窺える。三人同時の逃走は正直現実的と思えない。

 そして。仮に俺がこの場へ残ると宣言しても……きっと宇津白姉弟は撤退しようとしないだろう。

 特に東子だ。負傷してるに関わらずやる気が全く欠けていない。

 有無を言わさず持ち上げるくらいしなくては、すんなりこの場から去ってくれない事に疑いようはないだろう。

 ……だが。

 東子を抱えて俺が逃走。加えて後方で進が十秒程度でも時間稼いでくれれば……高確率で〝二人だけなら〟生還出来ると思われる。

 無情かもしれないが、これが生還者を増やすための現実的な落としどころ……。

「進を置いていくのかっ! 私はまだ戦え――」

「冷静になれ! 傷を押さえているんだ!」

 東子は声を大きく荒げるも……その途端、苦悶の表情を浮かべる。

 興奮するからだ。腕を刺されているというのに……。

 あっという間に階段へ到着。そのまま息つく暇なく俺は階段を駆け上って――

 


 そんなわけない。 

 


 もちろん、そんなことする訳ない。

 〝進を置いて逃げる〟なんて選択肢、俺の中には一ミリたりと存在しないのである。

 俺は階段の中間辺りで立ち止まり、東子をそっと降ろす。

「じゃあ、行ってくる」

 一瞬、呆然とする東子だったが……徐々に、普段通りの凛々しい雰囲気が戻ってくる。そして……口元に穏やかな笑みを浮かべ。

「…………ありがとう」

 彼女は静かに礼を告げてきた。それと同時、彼女を取り巻く空気もどこか冷静さを帯びたものに変化していく。

 この状況を打破できる策が一つある。


 ――――簡単だ。〝倒せばいい〟……ただ、それだけの話。

 

 結局こうなるのか……。

 直ちに俺は身を翻し……部屋へと直行する。

 一跳びで階下に降り立つや、そのまま室内へ勢いよく踏み込んでいく。

 部屋では……進が一人の警備員と剣戟の音を響かせていた。

 さらに。もう一体の警備員も前方にいる戦闘中の警備員を避けるようにして、進の左側面からジワリ、ジワリ……にじり寄っていく。

 まずは――左のヤツからだ。

 俺は照準を絞るや疾風の如く一気に肉薄。そのまま、抉り込むように痛烈な掌底を見舞ってやる。

 警備員の反応速度を超えた敏捷さで俺の攻撃は胴体へ命中。警備員は全身を弓なり状にたわませ、後方に大きく退(しりぞ)いていった。

 すかさず進は警備員との打ち合いを中断、数度バックステップし警備員との距離を大きく取った。俺は気息が乱れている進の横につく。

「はあ……はあ……はあ……何で戻って……いや、姉さんは?」

「階段にいる」

「そう……か」と呟くように言った進の額からは多量の汗が流れており、戦闘の苛烈さを深く物語っている。

 進が握る刀をちらりと見ると、あれほどの打ち合いを展開したに関わらず刃こぼれ一つ無く……天井の照明を浴び、美しい白金の光を爛々(らんらん)と反射させていた。どれだけ丈夫なんだ。

「だが……倒せるのか? 攻撃食らっているかも怪しいぞ」

「いや、ダメージは確かに通ってる。お前が何回もアイツらをぶっ飛ばしてくれたおかげだ。見ろ、最初より動きが鈍ってる」

 俺は進に告げられたことを念頭に、改めて警備員を観察すると……確かにその通りであった。

 どれだけ蹴ろうと殴ろうと痛みを感じる気配もなく、当然とばかりにむくりと起き上がってみせる『警備員』。

 だが現在。俺達に近づいてくる警備員の足運びにはかつての精彩さを感じ取ることが出来ない。つまり……弱っているのだ!

 どおりで今、俺が進むと会話をする時間があったわけか。接近速度が低下している良い証明だろう……。




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