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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
89/118

第四十三話 A ルート1

 


 ????

 よくわからないが……とにかくうさん臭い感じがプンプンだ。特に〝パワースポット〟なんて単語がいかにも怪しい。非常にオカルト的だ。

 きっと信者の信仰心を高めることや、新たな信者の獲得を目的とした研究だったのだろう。

 けれども……一つ、判明した事がある。長が俺に告げた言葉の意味だ。

 「『はっこうりゅう』に興味があるなら地下三階の資料に目を通せ」というメッセージ。

 〝資料〟というのは、この床に散らばったファイル達を指していたのである。

 ……どうせなら。もっと見やすいよう綺麗に整理整頓しておいて欲しかったぜ……。

 気を取り直し改めて周囲へ視線を配ると、さらに地下へと続く階段が部屋の隅にあるのを発見する。並べらている棚のせいで隠れたようになっており発見が遅れたのだ。

 そうして。早速見つけた短い階段を降りていく俺だったのだが……。

 ‼

「……あ、あれ?」

 地下二階の光景を目の当たりにした俺は、軽い困惑に襲われる。

 そっくり同じなのだ。全く同じ。

 地下一階と部屋の構造、置いてあるもの、壁の色、天井の照明の光度、階段の位置、何もかも一緒。

 〝本当に下へ降りたのか?〟……と一瞬そんなありもしない妄想に取りつかれる程、全てにおいて一致していた。

 もちろん、天井の四隅から飛び出している二本の筒状物体もある。ごちゃごちゃに放置してある大量の白いファイルも変化なし。

「……そうだ」

 確か俺は……そう、あそこだ。さっき机の端に置いてある、《超力の研究》とかいうファイルを手に取ったじゃないか。

 つまり。もう一度あの箇所にあるファイルを見て、それが違うタイトルだったのなら……ここは間違いなく〝地下二階〟という証明になる。

 普段ならこんなバカらしい確認まずしないだろう。

 実際に階段を降りた感覚は今でも残っている。なのに再び同じ部屋を訪れるなどあり得ない。

 ……しかし思わず確かめずにはいられない程、部屋の全てが一致していた。

 いってもたってもいられなくなった俺は速やかに確認作業へ移っていく。すると。

 …………ほっ。

 どうやら俺はちゃんと進めていたらしいな……タイトルが違っている。

 少しばかしの安堵感を獲得しながら、ファイルを元ある場所へ戻そうとしたのだが……ふと、そのタイトルに再び視線が吸い寄せられる。

 そこには今年の年代と《信者リスト(1)》という表示が併記されていた。

 ………………。

 俺は咄嗟の思い付きからファイルを開いた。すると二ページ目に、このファイルの〝目次〟であろう書類が挟まれており……軽く目を通していく。



 名字、あ~お…………(1) か~こ…………(2)――



 この部分だけで十分だった。俺は辺り一面ごろごろ散らばっているファイルの中から《信者リスト(2)》を捜索する。

「見つけた……これだ」

 目的のものは割とすぐ近くに置かれおり……俺は大して労せず拾い上げれた。

 中身を捲るや、そのまま〝光道白紗季(こうどうしらさき)〟の名前を探していき…………引き当てる。

 そこには彼女の現在における年齢、性別、身長、体重、血液型……等々、細かな個人情報が、本人の顔写真も添えられた上で印字されていた。

 その下には住所や電話番号、家族構成、また、簡略化されているものの……光道がこれまで歩んできたと思しき人生の内容が(つづ)られていた。何年の何月何日、~学校卒業……みたいな具合で。

 さらにその下には『白光神援教』への〝適正評価〟なる項目があり、詳しくは分からなかったものの相当良い評価が与えられていると思われる。

「うん……?」

 ふと、俺は次の項目に眼が留まった。



 (処理について)


 

 〝処理〟――そんな、不穏な気配を否応なく心の底から引き立たせるような単語が、俺の注意を引き付けたのだ。

 さらに、文章を読み進めていく……。



 祖父、祖母、父、母、は例によって交通事故により死亡とする(A)。死体においては通常対応とする(ルート1)。



 ()()()()()()()()()()()()? 

 これじゃまるで……実際の死因は交通事故じゃないような書き方だ。……いや、もしかすると本当にその可能性はあるかもしれない。

 不意に脳裏へと、かつて目撃したあのワニのような外見をした奇妙な生物の姿がよぎる。

 世間的には〝交通事故として演出〟しつつ、実際は他の方法を用いたのかもしれない。全ては心の拠り所となる存在を消し、忠実な信者を生み出す環境を整える目的のために……。

 目次のページを再度開くと、そこには『(A)…………《処理》のファイル参照』『(ルート1)……《摂取》のファイル参照』と、ご丁寧にも説明があった。

 どうやら他のファイルを読まなければ、わからないことらし――。

 ……………………っ!

 まるで時の流れが静止したように……一瞬で俺の体が固まる。

 さっきまで意識すらしてなかったというのに……無音の室内で、急に自分の呼吸音がうるさく感じられてしょうがない。

 俺の脳は数十秒の間、確実に思考停止状態へと陥っていた。

「はあ……はあ……」

 それからしばらく経過しようやく脳の活動が再開し始めた俺は、眼球をゆっくり動かしていき……今しがた目を通したばかりの文章をもう一度読み返しみる。

 けれども〝見間違いだった〟ということはなく……ただただ、同じ文章を認識し直すだけの結果に終わった。

 せ……〝摂取〟……って……なんだ?

 ――――ヤバイ。

 ドクンッ! 心臓の鼓動が一挙に跳ね上がる。

 ヤバイヤバイヤバイっ‼

 ……今……たった今……。俺は確実に触れてはいけないような何かを知ってしまった……そんな途方もない感覚が全身をくまなく駆け巡る。

 さっき光道の――家族の死体対応のところに(ルート1)って……あったよな。

 そっ、それってつまり……〝死体を摂取する〟……ってことか……?

 食べる? 死体を? 

 ……まさか……まさか……そんなこと……。

 俺が〝摂取〟というたった二文字の単語から、発想を飛躍させすぎているだけだ! 

 だが……だが……。

 恐る恐る……微かに震える指先をどうにか動かし、他の信者リストも目を通してみる。

 こ、ここにも……(ルート1)……ここにも、ここにもここにもここにもここにもここにもここにもここにもここにも(ルート1)……。

 二十人近くチェックした地点で、俺はページを捲る作業をやめた。

 ……そんな訳……そんな訳あるはずない。

 ………………。

 俺はぼんやりとした頭で散らばるファイル群へ視線をふらつかせてみたが……《摂取》と表記されたファイルに巡り合うことは叶わなかった。

 ファイルを発見出来ず失望する気持ちが芽生えると同時……心の片隅では、どこか安心感を覚えている自分の存在を自覚したのであった……。





今回で第一章〝ホワイトアタック〟編の全話数である四十三話と並びましたが、第二章〝ホワイトリベンジ〟はまだ続きます。ここまで読んでくださった読者の方々、本当にありがとうございます。読者がいることは作者として大変嬉しく思うと同時、執筆へのやる気にもつながっております。 

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