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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第三十七話 暗闇



「行こう」

 俺達は生じた隙間から、慎重に内部へと足を踏み入れていく。

「くっそ、暗いな……非常灯も付いていない。霧白、お前が頼りだ……」

 進の言う通り。施設内には灯りという灯りが点灯しておらず、唯一窓から差し込むわずかな月明かりだけが、建物内部を微かに照らしていた。

 これだともうしばらく…………暗闇に慣れる時間が必要だな……。

 都会の街並みは深夜といえ〝明るすぎ〟だ。引っ越し前なら、ちょっと外を歩けばすぐに目が暗闇に慣れていただろう。

「わかった……こっちだ」

 施設の玄関口はやたらに広く……まるでどこか高級ホテルのエントランスみたいな造りとなっている。きっと威厳を醸し出すというか、何か〝ありがたみ〟ある感じを演出したかったのだろう。

 それにしてもこの廊下……足音がよく響く。

 一層注意を払いながら前進していくが……やはり気づかれないか心配だ。

 俺が先頭となり、それぞれが一定の間隔を空けつつ歩いていく。

 すると。程なくして眼前に階段が姿を現した。加えてこの辺りには窓がなく、辺りの暗さが一層増していく。

早急に目を暗黒に順応させねばならいのだが……如何せん、自分の意思ではどうにもならぬことで、ただただもどかしい限りだ。

 目指すは三階。俺は少し体を前傾に取ってみたりと、極力音の発生しないような歩行方法を模索しつつ……一段一段上っていく。

 …………。

 不気味なほど静か。一切の音も生じない無音状態だ。これだけの静寂に支配されていると、近所の図書館の方が何倍もうるさく感じられるくらいだ。

 二階に到着。俺は鋭く瞳を細め、油断なく周囲に気を配り……続けて三階を目指す。

 出来るだけ呼吸を押し殺すように努力しながら、さらにさらに階段を上っていく……。

 途中、階段の踊り場にて〝3F/2F〟という表記を発見した。それと同時に、表記を自分が読むことが出来たというのは、ようやく眼が暗闇に順応したのだと思い至る。

 そして――。

 ついに俺達の目的階層である三階に到着した…………してしまった……。

「………………っ」

 ドクンッ……と心臓の鼓動が高なり、急に緊張感が襲いかかってくる。

 もうすぐ〝アイツらと接触するかも〟……そう考えるだけで、覚悟は決めてたはずなのにどうも全身がゾッとするような感覚に(さいな)まれる。

 階段を完全に上りきると、右、左――二方向に廊下が伸びていた。どちらも一直線に長く続いている。光量は相変わらず乏しいが、階段にいた時よりは少し明るい。

 …………そ、そうだ。ここで言っておかねば。

「二人とも、聞いてくれ」

 俺は背後に控える東子と進の顔を近くまで引き寄せた。

「いいか。自分の身を大事に……」

 だが……そこで俺は躊躇(ためら)うように口をつぐむ。

 何が〝自分の身を大事に〟だ……。この建物を訪れた時点で、どれだけその一言が意味を成さないことか。

 ……いや。それでもやっぱり、一応忠告しなければ気が済まない。 

「ヤバくなったらすぐ逃げて――」

 ‼

 その時だ。

「……っ」 

 突如、進が俺の口を手で素早く塞いできた。

 俺の発言に怒ったのか? ……咄嗟にそう思った俺だったが、すぐに進が自身の口元に人差し指を当て〝静かにしろ〟とジェスチャーで示してきた。

 さらに続けて、階段から右手側の廊下を親指でくいっくいっと示してみせる。

「…………!」

 俺達は即座に数歩後ろへ下がり……階段の影に身を潜める。


 カツッ、カツッ、カツッ……。


 足音だ!

 数は一つ。たった今進が示した側から、こちらへ向かって来る。

 東子と進は何やらアイコンタクトを交わしたと思いきや、そっと背中に提げていた刀を掴み……恐らく即座に抜刀しやすくするためか、腰元にまで手繰り寄せた。

 ついに……ついに始める気なのだ。

 現在、施設に()()()()()()。……いや仮にいたとしても、どのみち彼らは明るい時でなければ部屋の外をうろつかない習性がある。

 それらが意味すること――それはつまり、現在廊下を歩行しているのは……〝『長』か『付き人』のどちらか〟ということだ。

 い、いいん……だよな? これで……。

 ………………い、いやっ……何を不安になってんだ俺。

 要はこの二人が無事施設から脱出すればいい。

 圧倒的力量差を実感するでもいい、一太刀浴びせるでもいい、とにかく彼らが諦めるなり満足するなりしたら即離脱させる……それが俺の役目だ。

 俺に体を向けた東子が床を指差し、続けて手の平を俺へと突き出した。恐らく〝そこで待機していろ〟という意味のジェスチャーだと思われる。

 あくまでも、二人だけでやるつもりなんだ……。

 カツッ、カツッ、カッ――。

 ……なっ、なんだ?

 〝足音がだいぶ近づいてきた〟と認識し始めたところで……何の前触れもなく、ふっと靴音が止まったのである。

「アレー。アレアレアレレレ? もしかして……そこに、ダレかいるんですか?」

 ‼

 俺達三人、揃って顔を見合わせる。

「ダメですよ……ダメですダメですダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ。関係者以外、入っちゃダメなんですよ……」

 高い声でどこか特徴的な喋り方。発声者はおそらく……男だと思われる。そして、一つ確実なのは……これは長や付き人の声ではない。

 だが。それならば『信者』しかありえない訳だ。

つまり、白井さんから提供された「信者は全員いない」という情報は〝嘘だった〟ということになる。俺達はまんまと白井さんに騙されたのか?

 しかしそんな疑問はひとまず置き、俺達三人は階段の端ギリギリにまで後退する。




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