表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
78/118

第三十二話 引っ越し



 さて……科学室に姿を現したのは一人の女生徒であった。ショートカットの小動物みたいな可愛さを持つ少女だ。

 どうやら学年は一つ下――一年生の後輩らしい。女子は首元につけたリボン、男子はネクタイの色が学年ごとに異なるのですぐわかる。

「はいはいはーい。はじめまーして。白井(しらい)(きょう)ですー」

 身長はやや低め。もし背の順で並んだなら、前から五番目くらいに位置してそうな絶妙な感じ。

 そして……開口一番、中々にテンション高い挨拶をしてきたのだが……どうもセリフとテンションが伴っていない。起伏のない平坦な……淡々とした声なのだ。

 また、顔には感情が(にじ)んでいない。笑うでもなく緊張するでもなく……無表情。まるで光道のような人である。

「あなたが……光道の知り合いですか?」

 どうも主に俺へと挨拶をしてきたように感じたので……人見知りな俺は、恐る恐るという具合に尋ねてみた。

「ピンポーンピンポン。ピンポンピンポンピンポン。その通りですー」

 ………………?

 俺と進は怪訝な表情で顔を向かい合わせる。

 ……というか。光道は『白光神援教』を抜けたに関わらず、どうして現信者である彼女と交流を保てているのだろう? 東子によれば信者に声を掛けても、無視されるのではなかったか――。

「……って、うわっ!」

 ビックリした! 

 いきなり。白井さんが俺の顔へと自分の顔を接近させてきたのだ。……それも息がかかる程近くまで。思わず俺はドキッとさせられる。

「あなた……アナタアナタアナタアナタアナタアナタ……キリシーロ」

「えっ! ええ……そうですけど」

「先輩は……お元気ですーか」

 な、なんだこの少女は……。

「龍太は覚えてない? 一度……いや、()()、彼女に会っている」

 はっ⁉ に、二度も……? こんなインパクト強い女生徒、そう簡単に忘れられるもんじゃないはずだが……。

「一度目は施設で龍太のこと追いかけていた。二度目は……家具売り場、ソファーを買った場所」

 そこで。瞬間的にある映像が、俺の脳裏へ浮上してくる。

 俺が光道の買い物に付き合って、ソファーを持ち上げてしまった時のことだ。

 一人……俺の事をじっと凝視している、同じ学校の制服を着た女生徒がいたではないか‼

 待て待て待て……ということはつまり……俺はすでに『白光神援教』信者に……目撃さられていたということか⁉

 だが……だがだが……『白光神援教』はどうして俺に何らのアクションを仕向けてこない……? 

 ……いや。必ず何か仕掛けてくると決まってたわけじゃない……か。そもそも、あの意味不明な団体の行動原理を理解すること自体、無駄なことかもしれないし。

 ……むにっ。

 …………。

 白井と名乗る少女が俺の左頬に人差し指をくっつけるや、ぐりぐりっと円を描く様にほっぺをいじり始めた。

「私。学校でキリシーロ先輩のことずっと見てたんですーよ。気づきませんでしたか?」

 ……残念ながら全く気付かなかった。あの施設の人間は〝忍者〟とか〝スパイ〟なんじゃなかろうか。気配を消す能力に長けすぎている。

「キリシーロ先輩は、光道先輩がいないと……ずっと一人なんですーね。私も同じですー」 

 ………………うっ。

「京、龍太に今施設で何が起こっていて、誰がそれを指示しているか教えてあげて」

「あっ! わっかりましたあぁぁあ!」

 ようやく俺の頬から人差し指を離してくれた……と思いきや。今度は両手で俺の両頬を摘まみ、ぐいぐい横に引っ張り出したのだ。

「キリシーロ先輩のほっぺ……すごく触り心地いいですー」

「あ、あにょっ! ひゃんひゃおれぇいいいほほあるんへは?」

 すると。俺の意志がちゃんと伝わったのか、やっと白井さんは俺を解放してくれた。

「まずは施設で何をやってるかですーけど。引っ越しですー」

 どうして彼女は「です」という言葉だけ、微妙に(なま)っている感じなのだろう……方言か?

「……引っ越し?」

「そうですーそうですー。ちょっと前から、施設の住人は()()()()に移動することとなったんですーよ。毎日何人かずつ移動していって……今日で最後。今日は私もお引越しでーすが、引っ越しの後も変わらずこの学校には登校します」

 俺はこの情報に十分すぎるくらい面食らったのだが……それでも尚、若干の冷静さを保てていたのは、俺より数倍も衝撃を隠しきれていない人物が二人いたせいか。

 言うまでもない――宇津白姉弟だ。東子は血相を変えて白井さんに詰め寄る。

「そ、それは本当なのかっ‼ ということは……今あの施設に行っても誰もいないのか⁉」

 東子は荒い手つきで白井さんの華奢な肩を掴むや、青ざめた顔をグイッと間近まで迫らせた。

「………………」

 しかし、白井さんは何も答えようとしない。〝無視〟である。

 仮にも上級生に当たる東子の質問を無視するなんて……もし俺が白井さんの立場なら、とてもじゃないが恐れおおくて出来ない。そこまで俺の心臓は強くないのだ。

 ……てか。彼女は授業中先生に指名されたら、どう対応してるのだろう……。

「あの……白井さん? どうしたの?」

 黙り込んでしまった白井さんを心配した俺は、そっと彼女に尋ねてみる。

「はい? なにがですー?」

 東子は白井さんから離れると、お手上げといった具合に両手を宙に掲げ、首を左右に振ってみせた。もしかするとこれが〝信者に話しかけたら無視される〟という状況か。

「ああ、ええと……それじゃあ、今施設は誰もいないってことですか?」

「はいはいはーい。その通りですー……〝()()()〟ですーけど……」

 どうやら、俺と光道には反応してくれるらしい。百歩譲って、光道は元・信者だったという経歴があるものの……俺なんて施設にケンカ売ったヤツだぞ。むしろ積極的に無視される存在な気がするのだが……。

「「信者は」……というと、他に誰かいるってことですか?」

「そうですーよ。それはもちろん……『長』……ですー」

 ………………。

 ……………………。


 …………………………へ?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ