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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第二十三話 評価



 姉さんと霧白はショッピングモールへ立ち寄るようだ。

 建物内へ入っていく二人の後ろ姿を見送った俺は、姉さんが霧白を呼んだ理由は〝買い物の荷物持ち〟をさせるためだったのか? ……と推測したのだが。どうも違ったらしい。

 というのも、二人が何か目的を持って内部を巡っているようには思えないのだ。適当に目が留まった店へ心(おもむ)くまま、ふらりと立ち寄っている感じ。

「家電があるフロアに来ましたね」

 二人はパソコンが複数陳列されたコーナーを訪れる。

 心なし気が急いているような光道さんと共に、つかつか足早に前進していき……俺達はいい感じの物陰に体を隠した。そして、そぉっと様子を覗いみる。

 今回は距離的にだいぶ近かったこともあり、会話の内容までしっかり聞き取ることが出来た。

 霧白は手近な棚に陳列されている、円筒状の入れ物に収まったブルートゥースシリコンキーボードを手にすると、不思議そうな表情で姉さんに質問する。

「これ……何に使うかわかる? まるでパソコンのキーボードみたいだけど」

「はっはっはっ……違うぞ霧白君! 以前、学校の授業で『ぱそこん』を実際に使用したからわかるが……こんな紙切れみたいにペラペラしたものじゃなかった。もっと、しっかりした造りになっていたよ」

「それじゃあ……これは一体……」

「私の見立てでは…………これは〝グミ〟だろうね。ほらこれを見てみろ……ピンク、緑、青……三色あるだろ? これはそれぞれ味が違うんだろうな……」

「ああっ! なるほど! 確かに、食べ物だというなら説明がつく。へー、最近はこういう変わったお菓子まであるんだな……」

 …………………………。

 …………………………。


 …………………………はっ?


 えっ! ……えっ! ……な、何コレ? 何だ……おかしいのは俺か⁉

 どうして彼らの間では、こんな意味不明な会話がごく自然に繰り広げられているのだ。

 てか、そもそもここは家電コーナーだぞ。どこをどう捉えれば〝食品が売られている〟という結論にたどり着くのか……。

「あの……どうして光道さんは、あんなアホで運動も出来ない、しかも暗くて光道さんがいなければいつも一人でいるような社交性のカケラもない霧白なんかと一緒にいるんです?」

 さすがの俺もとうとう我慢の限界だ。光道さんのなすことにおいて唯一理解に苦しむことを、ついに思い切って尋ねてしまった。

 すると、光道さんはちらりと俺を一瞥し……再び姉さんと霧白へ熱心な視線を向ける。

「確かに龍太はアホね」

 どうやら彼女自身、霧白が疑いようもない〝アホ〟であることを重々承知していたようだ。

「けど…………宇津白君が思うよりも、ずっといい男よ」

「っ…………」

 すぐ、言い返そうとした。

 した……のだが。

 どうしてだろう……なぜか、言葉に詰まってしまった。喉の奥から出る直前、まるで何かに引っかかったみたく声が止まってしまったのだ……。

 〝光道さんの喋ることに間違いはない〟――この揺るぎない事実に対して、異論を挟む余地もないが……それでも。やはり疑念を抱かずにいられない。

 だが…………その反面。ごくごくわずかだが……俺は霧白を見直した部分も実は存在していた。

 そんな、ほんのわずかな気持ちがあるからこそ……光道さんの返答に「そんなわけないっ!」と即座に訴えられなかった……かもしれない。 

 見直した部分――それは姉さんのことだ。

 今日の姉さんはなんだか楽しそうだ。それも学校で女友達と一緒の時は、また違った具合に。

 もしかすると他の人なら「何が違うの?」と思うかもしれないが……俺からすると〝全然違う〟と断言できる。

 特にその違いは、霧白と話していて度々見せる――()()()()()()によく表れているだろう……。

 その笑顔を何年かぶりに姉さんから引き出した霧白。もしアイツが俺の思い描く通りのクズ人間だったなら、到底そんなこと出来るわけがない。

 もしかすると…………俺が霧白に評価を下すのは、時期尚早だった……か?



 ショッピングモールをふらついた姉さんと霧白は、再び電車に乗り込み……数駅先の駅で降りた。

 しばらくフラフラと、あてどないように街を歩き回る二人だったが……ふいに立ち止まるや、霧白は姉さんに申し訳なさ気な様子でぺこぺこ何度も頭を下げ、姉さんは気にしてないという風に胸の前でパタパタ片手を振った。

 それらが済むや、二人は近くの飲食店へと立ち入っていく。どうやら、そろそろ昼食とするらしい。

 二人は喫茶店にいたとき同様、奇跡的に窓側の席に通されていく。何と都合がいいことか。

 これで監視もだいぶやりやすくなる。もし店の奥側だったなら、多少相手に発見されるリスクを冒してでも入店する必要が生じていただろう。

「しばらく動きなさそうですし……俺達も昼にします?」

 光道さんは俺の提案に了解したので、俺達は二人はすぐ傍にあったコンビニに寄った。

 それにしても……。まさか、あんぱん片手に誰かを尾行するという〝探偵〟的行いをやることになろうとは。過去の自分じゃ想像できなかったことだな。ある意味、いい〝経験〟になったかもしれない……。

 光道さんは菓子パンに飲み物、それと……家で切らしていたのか、黒いインクの()()()()()()()()を購入していた。()()()()

 再び二人のいる飲食店前まで舞い戻る。しかしこの後、特に目立った動きは起きず……姉さんと霧白は食事を終えると店外に姿を現した。

 ……と思っていたら。店の扉から少し離れたところで、姉さんはポケットからティッシュを取り出すと、霧白の口元を甲斐甲斐しく拭き出したのだ。

 しかも、それが済んだ途端。姉さんは急速に顔中を赤くしながら、しきりに何か言葉を発しつつ……とても焦った様子で霧白の両肩を掴むや、激しく上下左右に揺さぶり出した。

 グシャァッ!

「! こ、光道さん⁉ 大丈夫ですかぁ‼」

 なんと! 光道さんは手に持ったまま結局一口しか食べていなかったあんぱんを、力強く握りつぶしていたのだ‼ 

 そのあまりの握力に、袋の開け口からはあんぱんの(あん)がどろり漏れ出し、光道さんの手に少量ながら付着してしまう。

 だ、だだだだだ大参事だぁ! これでは光道さんも、光道さんの洋服も汚れてしまうではないかないかないかぁっ‼ 人類にとっての貴重な財産が……何たる嘆かわしいことか!

「くっそぉ……許せんっ! 任せてください光道さん! すぐにこんな脆弱なものを作った製造元へ抗議の電話を――」

「しなくていいわ」

「はい」




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