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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第十七話 様子



「あっ!」

 駅に到着したところで、あるミスに気づいた。

 十時に駅前集合という約束をしたが……具体的には、駅前のどこに待機すればいいのだろうか……。 

 そこそこ人の多い駅前だ。取りあえず、わかりやすそうなところでも探してみるか、と…………そう思い、四方を見渡した……その時だ。

 ――――いた。

 何かよくわからないものを(かたど)った小さな彫像の前に、宇津白さんがすでにいるではないか。

 英語が印字された白いシャツの上に赤い上着を羽織っており、下は膝よりちょっと高い位置くらいの長さをした、明るい紺色のスカート姿。そして、右肩には白い手提げカバンを提げている。

 あれ、おかしいな……少し早めにつくよう家を出発したはずなんだが……。

 腕時計に視線を落とし、やはりまだ集合時間にはなっていないことをしっかり認識する。

 まあ、不思議ではないか。実際、俺自身こうして遅れないよう時間にゆとりを持って、駅前へと足を運んでいるわけだし。

 …………………………んん?

 だが……どうしてだろう。宇津白さんの様子がちょっとおかしい…………。

 なぜか、顔面が蒼白になっているのだ。

 さらに彼女の両足はぷるぷると小刻みに震えており……どうして彼女が未だに立っていられるのか、不思議でしょうがないほどに具合が悪そうである。

 慌てて近寄っていくと……顔中が蒼白になっているばかりか、瞳をぐるぐると回し、口からはすぐにでも泡が噴き出てきそうなくらい、はわはわさせていることが判明した。

「ちょっ! 大丈夫ですか宇津白さん!」

 しかし、俺が声をかけた瞬間。あれほど落ち着きのなかった宇津白さんの体が〝ぴたりっ!〟と硬直した。

 それから……とてつもなくぎこちない挙動で俺の方に首を曲げるや、まるでこの世の終わりみたいな絶望的な眼差しで、俺を上目遣いに見つめてくる。

「ああ…………きり……しろ……君……。ついに……来てしまった……」

 そりゃあ来ますって。あなたが呼んだんじゃないですか。

「じ……実は……私はある重要なことを、君に伝え忘れていたのを思い出してしまってな……」

「重要なこと? ……ああ、そうだ! まずは座れる場所を探しましょうか」

「い、いやっ! 待ってくれ! ここで…………ここで言う……」

 なっ……なんか、すっごい息が荒いんですけど……。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……………………って――――」

 突如、俺の両肩に力強く手を乗せてくる宇津白さん。い、嫌な予感がする……。

「こ、ここ、こんな人の多いところで言えかバカあああぁぁぁ‼」

 そして猛然と俺の肩を揺さぶりながら、涙目で俺に理不尽な訴えをしてきたではないか!

「ああああ、あの……か、肩を揺らさないで……」

 もしかすると、彼女は人の肩を激しくゆする趣味でもあるのかもしれないなあ…………じゃない‼ 何をのんきに考えているんだ俺は。

「こっちに来るのだ霧白君!」

 そのまま俺の手を握ったかと思うや、行き先も告げられるまま駆け出した!

 全く訳がわからない俺は、彼女に導かれるまま足を動かしていく。

 ――――――いや、違うな。〝全く〟ではなく、一つわかったことがある。

 それは…………彼女の体調は悪いどころか、むしろ〝絶好調〟であったことだ。

 一体全体。果たして重要なこととは何なのか……不安な気持ちを、ひしひし心に積もらせていく俺であった……。



 さて。宇津白さんの強引な案内によってたどり着いたのは、駅のすぐ近くにある全国的にチェーン展開している喫茶店であった。

 店内の客層的には、主に若者の姿が目立っている。また、待つことなくスムーズに席まで案内はされたものの……店内は、そこそこ賑わいをみせていた。

 店員によって窓際の四人掛けの席に案内された俺達は、ひとまずそろって紅茶を注文する。

「それで……伝え忘れたこと、というのは?」

 店員が持ってきた水を早々に全部飲み干し、ようやく大和撫子のような風貌に相応しい、通常の落ち着きを取り戻してきた宇津白さん。

「こほん。そ、そうだな………………………………いやっ‼ やっぱり……もうちょっと、待ってくれ……。注文した品が届いたらにしよう……」

 これほどまでに、話すことが躊躇われる重要なこととは一体……? 

 まさか…………誰かに日頃から見られている気がするも、振り返るとそこには誰もいない……なんて相談じゃあるまいな。

 ところで。先ほどからどうも気になるモノが、ちらちら視界に入り込んでくるのだが……。

 歩いている時は背中に背負うような形で所持しており、現在は胸元で大事そうにきつく抱きしめている――野球のバットでも収納するのに、ちょうどよさそうな大きさの黒いケース。

 …………どうも既視感を覚えざるをえない。  

 まるで……夜、どこかの公園で目撃したような……。

「うん? これが気になるのか?」

 どうやら対面に座す俺の視線に気づかれてしまったらしい。俺に見やすいようバットのケースをテーブルの上に置くと、上側についていた銀色のチャックを開放していく。

 それから中に手を差し入れ……まるで〝日本刀の柄〟のようなものを、ゆっくり引き出そうと――。

 ‼

 その柄を視認した瞬間、俺は即座に席から離脱。

 そのまま流れるように宇津白さんの隣の椅子に着席するや、彼女の手に自分の両手を添え、真剣な眼つきで宇津白さんを見つめる。

「そ、それを出すのは……やめておきましょう……」

 …………こんな場所で刃物チラつかせて、万が一にでも人目に触れてみろ。絶対ややこしいことになる……。

「おお……そうか……」

 俺の行動に虚を突かれたかのように、キョトンとした宇津白さんだったが……大人しく、元に戻してくれた。というか、彼女はなぜ躊躇(ためら)いがないのであろうか。

 まさか。日頃から、誰もが普通に刀を所持しているもの、と勘違いしてない……よね?

「どうしてそんなも……刀を持って来たんです……?」

 するといきなり……ずーん、と彼女の周囲を漂う空気が重さを増す。

「こ、これは……だな……。その……き、気合いを入れるというか……身を引き締めるためというか……お守りというか……いざとなったら斬るというか……」

 …………結局、何なのだろう? …………って、斬るってなんだ斬るって‼

「お待たせいたしました」

 その時、女性の店員によって紅茶が運ばれてきた。しかも、俺が宇津白さんの隣にいたせいで、二人並ぶように目の前に置かれてしまう。

 まあ、俺が宇津白さんの向かい側に戻ればいいだけのことだ。俺は椅子から立ち上がろうと――。

「待ってくれっ!」




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