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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第十二話 公園



「それで…………どこに行くんだ?」

「公園」

 こ、公園……それも夜に? どうしてそんなところへ?

 まさか「鬼ごっこやろうぜ!」とかいう誘いじゃないだろうな……。いや、もしかすると『かくれんぼ』かもしれないぞ? 

 そうして、進の思惑について色々予想しながら歩くこと数分……目的地に到着した。

 たどり着いたのは、俺の自宅近くにある小さな公園で……わりと昔からあったりする。幼い頃、ここで光道と遊んだのはいい思い出だ。

 ――――また、現在()()()()()()()()()()()()()()でもある。

「それで……何するんだ? ここにはブランコしかないぞ? 靴飛ばしか?」

 ちなみに靴飛ばしとは、適当な高さになるまでブランコを漕ぎ、それから自分の好きなタイミングで片足から靴を前方へ蹴り放ち――その飛距離を競う遊びである。

 すると進は、背中からかけていた細長い、野球のバットでも収納するのにちょうどよさそうな黒いケースのチャックを開ける。そして、すかさずそこから取り出したのは…………なんだ?

 そのまま進は、俺の足元目がけて、ケースから取り出した『ブツ』を乱暴に放り投げてきた。

 進の態度には気に食わない部分があるが……何はともあれ。ひとまず、その正体を確かめるべく拾い上げた俺は、しみじみとその全体図を観察してみる。

 これは……〝木刀〟だろうか。生まれて初めて、木刀の実物を目の当たりにした俺だが……頭の中でイメージしていた木刀より、少し短い印象を受ける。

 どうやら進は、もう一本持ってきていたようで……いつの間にか、俺同様に木刀を手にしていた。

 そのまま、木刀の尖端部を俺の方に向けて、びしっ、と力強く突き立ててくる。

「勝負だ霧白龍太!」

 …………ああ。

 勝負ね。

 勝負。しょうぶ……ショウブ……。

 ……………………勝負?


「ええええええええっ! ムリムリムリムリ⁉」


 過剰なまでにぶんぶんと、何度も何度も俺は首を横に振る。

「うるせえぇっ! お前見ているとムカつくんだよ! お前も一応『白抗流』の端くれなら、正々堂々戦ってみせろ!」

「いやいやいやいや俺パジャマだし…………って、うわぁっ!」

 コイツ……マジで襲い掛かってきた‼ 

 というか‼ 宇津白家、怖すぎだろっ!

 姉も弟も、どうして問答無用で俺に斬りかかってくるのか……。俺は宇津白家に恐れ慄きながらも、横なぎに振るわれてきた木刀の軌道を後方へ飛び去ることで回避する。

 しかも進は、姉よりもさらにタチが悪い。

 彼女は錯乱していたという事情もあり……一振り一振りが大ざっぱで、回避も容易であった(ただし本物の刀剣だったが……)。

 しかし進は違う。口は悪いが、その剣筋はいたって冷静なものだ。

 瞳は鋭く真剣。さらに、長年鍛錬を重ねてきたのだろう……一つ一つの動きが、際立って洗練されている。

 〝俺を切りつける〟という目的の下。縦、横、斜め……自由自在に繰り出される無数の斬撃。時々、突きなんかも織り交ぜてきて、思わずドキリとさせられてしまう。

 とにかく防戦一方。もちろんながら、俺は剣術など習った事はないので……迫りくる縦横無尽な剣線の軌道に、ただただ木刀を添え、自分の体に接触しないようにするだけだ。

 電灯の光が届かないのか。公園はほとんど灯りで照らされておらず……全体的に薄暗くなっている。そのせいで、時折、進の木刀が暗闇から突如として放たれたかのようにすら錯覚された。

 その時だ。

 カーン、と一際高い、木刀同士が衝突し合あう高音。そうして、わざとブレイクポイント作り上げたらしい進が、後方へと飛び退いていく。

「お前‼ どうしてさっきから逃げてばっかなんだ!」

「襲い掛かってくるからだろっ!」

「戦えばいいだけろう……がぁっ!」

 …………俺は素人だっての。

 前傾姿勢を取った進は、そのまま俺目がけ躊躇(ためら)いなく踏み込んでくる。

 カンッ! カンッ! 木刀が乾いた独特の音と共に、何度も何度も激突していく。

 そうして。戦闘は完全に進のペースとなり――――気づけば鍔迫り合いに持ち込まれた。

「くっそぉ! お前に光道さんはふさわしくない!」

「あっ‼ お前! ついに本心を現したなぁっ!」

 二人揃ってバックステップ。

「霧白! お前の剣さばき――まるで素人だっ! 『白抗流』の風上にも置けないヤツめ! お前なんかでは、光道さんどころか自分の身すら守れん!」

 ようやく、コイツが俺にイライラしていた理由が判明してきた。まさかここまで、私利私欲のために動いているヤツだったとは…………。

 だが同時に……これだけ俺に侮蔑の言葉を送り付けてくるだけあって、相当強い。

 ただ、長年鍛えてきただけでなく……もともとの才能……〝運動能力〟が極めて高いことを、ひしひしと感じられる。

「どれだけ奇跡が連続したか知らないが……お前は光道さんに気に入られているようだ。……けどな霧白! 逆にそのせいで、お前は光道さんを縛ってもいる!」

「縛っている?」 

「そうだ! 光道さんは本来もっとたくさんの友達に囲まれ、幸せな生活を送るはずだった……。なのに……根暗で、弱く、(ひね)くれた……何の価値もない、くだらないお前なんかを構ってしまったために……許せん!」

 事情を把握していないだけあって……彼の話は、完全に言いがかりそのものである。

 ………………けれども。

 しかし……俺が光道を縛っている……か……。

 …………確かに、一理あるかもしれない。

 これまで俺は、光道が俺同様に、相当内気な性格なのだと思っていた。

 だが本日、宇津白家を訪れた彼女はどうだっただろうか。初対面な宇津白姉弟に対し、光道が一度でも俺のように臆して、しり込みするようなことがあったか?

 いや…………間違いなく、普通に会話をしていた。

 つまり、今までの生活環境が()()だっただけで……本来の光道白紗季という人間は、けしてクラスで浮くような存在ではなく、むしろクラスの輪に溶け込んでいけるような人材であった……かもしれない。

 けれども、まだチャンスが失われたわけではない。今後の彼女の振る舞い次第では、クラスの皆と仲良くなれる可能性は、まだまだ残されているはずだ。

 ところが……それは恐らく、俺という存在が傍にいる限り叶わないだろう。このままでは、一切、誰も近づいてこようとしないはずだ。

 これまで大して意識して来なかったが……今、ふと思い返してみると、俺は学校内で光道との同伴確率が高い気もする。

 光道には俺と違って……………………普通に友達を作って欲し――――。

「【平白跳斬(へいはくちょうざん)】!」

 いきなり進の木刀が……曲がった⁉

 垂直に伸びているはずの木刀が、ほんの一瞬九十度近くぐにゃりと折れ曲がったように俺の視界へと映りこむ。信じられない軌道だ。

 その瞬間、カンッ! と今までで一番高い音と共に、俺の手の平から木刀が闇夜に向かって勢いよく弾かれてしまう。

 木刀は、まるで扇風機のように空中で何度も何度も身を回転させながら、放物線を描いて飛んでいき……俺の左斜め後方へ、虚しく落下していった。

「ふっ……」

 まるで俺を見下すかのように、嫌みったらしく鼻で笑ってみせた進は…………ぴたり、と俺の鼻っ面に木刀を突き付けた。

「弱いんだよ…………いいか、二度と光道さんに近づくな」

 そう言い残すや、自分の握っていた木刀をケースに収納し、さらに近くに墜落したもう一本の木刀も回収すると…………ただただ無言に、この場を去っていくのであった。



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