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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第十話 宇津白家(4)



 さすがにこれはうっかりすぎるだろっ!


「み、見てしまったのか……」

 ‼

 背筋が縮み上がるくらい驚いた。

 いつの間にか宇津白さんが、俺の背後に存在していたのだ! 

 くそっ! 焦ったせいで集中力が散漫になったか……。

 しかもその手に握られているのは…………日本刀⁉

 宇津白さんはぷるぷる……と静かに体を小刻みに震わせながら、一切無言のままに日本刀を鞘から抜き放つ。

「すっ、すまないが…………き、ききききみをこりょさなくちゃなりゃないいいいい! 死んでくれえええええっ‼」

「ひいいいいっ!」

 きっ、斬りかかられたぁ⁉

 まるで〝赤信号〟かというくらい頬を紅潮させ、さらには、すごいうるうるとした涙目になった宇津白さんが――――鈍い光がギラつく刀身を、俺目がけて振るってきやがった!

「どっ、どうしてよけりゅんりゃああああああぁぁぁ!」

「きっ、斬らないでええええええええぇぇぇ!」

 お互い絶叫しあいながら、部屋の中をグルグルと回転するように、ひたすら動きまくる。

「だれにも……誰にも言いませんからああ!」

「嘘りゃあぁっ! 学校中に触れ回るつもりだあああああ!」

「触れ回る友達なんていませんよおぉぉっ!」

 だっ……ダメだ! 全く話に耳を傾けようとしてくれない。

 こ、こうなってしまったからにはしょうがない。最終手段だ。

 宇津白さんはでたらめに日本刀を振り回している。だが、その分隙も多かったので…………俺は、彼女の胴体に飛びかかった。

 二人そろって畳の床へと倒れ込む。そのまま俺は彼女の腹上に馬乗りになるや、尚も台風のように暴れ狂う両腕を、無理やり床へと押さえつける。

「お、おお大人しくするんだぁ!」

「はっ、放してくれえええ! 頼む! 斬らせてくれえええええええぇぇ!」

 ――その時。

 部屋の扉が開いた。

「姉さん何かあった………………の……か……」

 呆然とした様子で室内の様子を眺める進。 

 そしてその背後に……ぴくりとも表情筋を動かそうとしない…………光道の姿が。

「ちょ、ちょうどいい! 助けてくれ」

 ナイスタイミングだ。弟ならば、この狂った姉を鎮められるかもしれない。

「てっ、てめえ何やってやがる!」

 だが進の口から発せられたのは、予想外にも俺を責めるようなセリフであった。

「何のことだ!」

「どう見てもお前が姉さんを襲ってるじゃないか!」

 …………えっ?

 予想外の一言。ふと冷静になった俺は、ゆっくり現状を観察してみた。

 もがき暴れる同い年の女子高生。そして、その上で馬乗りになり、強引に両腕を掴みかかっている俺。さらには激しく動いたせいで、それとなく乱れてしまっている宇津白さんと俺の制服…………。

 

 た、確かにぃ! そのような捉え方もあるかもし――。


「いや違う! 誤解だぁ!」

 その後、宇津白さんが落ち着きを取り戻し、俺に非がないことを二人に説明しれくるまで…………もうしばらく時間を要したのであった……。



「…………」

「…………」

 正気になった宇津白さんは「大丈夫だからもうしばらく二人きりにしてくれ」と進に告げた。よって現在、再び俺と宇津白さんの二人だけが部屋にいる状態。

 しかも…………お互い正座して向かい合っている。

 ………………。


「「すまなかった!」」


 !

 そろそろと、地面にこすり付けていた頭をあげていくと…………ちょうど宇津白さんも、俺と同じように面を上げていた。

 俺達は示し合わせたわけでもないのに、奇跡的なタイミングでそれぞれ相手へ土下座していたのである。

「ふっふっふっ……なら、これでお互いチャラにしようか」

「……わかった」

 …………〝ノートの中身を目撃してしまった〟ことと〝日本刀で斬りかかられたこと〟は、果たして本当につり合いが取れているのか、若干疑問だが……もうどうでもいいや。

「それでは気を取り直して……これが、君に家を訪れてもらった理由というわけだ。この刀を見せるために」

 すごいな……まさか、日本刀なんて代物(しろもの)、所持しているとは……。

 歴史を感じさせる日本家屋の雰囲気と相まってか……何だか、宇津白さんがとても武士っぽく思えてくる。その……現代の武士……みたいな? まあ、とにかく武人ってこと。

「実は、あのお札が貼ってある部屋……あそこにこれが置いてあるんだ。……それで霧白君、この刀を見て…………何か思うことはあるか?」

 そうだな。改めて見ると…………うん? 

 ……待て。これって……()()()()()()()? いや、確かに反りはついているし、柄とか鞘とかもそれっぽい形状になっている…………いる……の、だが。

 なぜか、どうも違和感を覚えるというか。日本刀ってこんなだったっけ? ……みたいな。

 とは言っても。そもそも第一として、俺は日本刀というものを直接間近で目撃したことがない。

 なので……はっきり〝この刀は何かおかしい!“と、指摘するのは(はばか)られる。いやむしろ、俺の認識が誤っている可能性の方が高いかもしれん。

 ――――というわけで。取りあえず、無難な返答をするに留まった。

「……カッコいい……かな」

「っ‼ そうかそうかっ! 私も同じことを思うぞ! しかも、けして錆びず、けして刃こぼれしない素晴らしいものなのだ‼ ちなみにこの刀、『白抗流』誕生とだいたい同時期……つまり千年くらい前に生まれたんだぞ。すごいだろ! 我が家の家宝! 我が家の誇り!」

 こんなにも少年のように、瞳をきらっきらに輝かせながら語る女子、初めて見た……。

「むっ、その顔は信じてないな? いやいやこれが本当なんだ! 私自身、正直あまり詳しくはないんだが……どうやら、()()()()()()()()になっていて……それが理由らしい。もちろん切れ味も抜群だぞ、試した私が言うのだから間違いなしっ!」

 なっ、なんか……聞いてもいないことまで勝手に説明されてしまった。

「日本刀……好きなのか?」

「ふむ、確かに嫌いではないが……だからといって別にマニアってわけでもない。私が好きなのは刀全般ではなく……あくまで〝我が家にあるこの刀〟ということさ」

 その後も、とても嬉しそうにしばらくの間、あれこれ刀について語る宇津白さんであった。

 だけど…………それ以前に、どうして刀の紹介をしたのだろうか? 『誇り』ってことだし……見せびらかしたかったのか?

 

  

 宇津白さんは、語りたい事の全てを伝えきったらしく、光道と進の元に俺達は戻ることとなった。

 最初の部屋に到着すると、そこでは相変わらず、光道と進による謎の会話が繰り広げられており……俺と宇津白さんが加わったことにより、ようやくまともな会話運びが展開されていったように思われる。

 宇津白さんは、自身が光道とまともに話せていることを激しく驚いていた。これまでは無視されていたとのことだし……ある意味、当然といえば当然か。

 もしかすると、光道に「施設へ連れて行ってくれ」なんて、改めて頼もうとする…………かもしれないな。

 その後しばらく、学校についての話題を交わし……俺と光道は、宇津白家を立ち去ることになる。

「今日は来てくれてありがとう、二人とも」

 宇津白さんは光道との会話に成功したからか、大変満足気なご様子。

 だが一方、宇津白さんの隣に立つ進はというと……宇津白さんの部屋での一幕が原因か、俺を睨み付ける視線が、より一層鋭く強いものとなっているように感じる。

 しかし…………俺から光道へと視線を移動させた途端、炎天下に(さら)されたアイスクリームばりに顔面をとろけさせながら、ニヤニヤするので……いまいち凄みに欠けている。

 それにしても……どうも()()()()()()()()というか……。こう……何かが足りない、みたいな…………うーむ、気のせいかな。そんな考えが頭をちらつく。

 そうして――俺と光道は、宇津白家を後にするのであった。

「なんでアイツなんか…………」

 風に乗って運ばれてきた……微かな声を背中に受けながら……。


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