表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
55/118

第九話 宇津白家(3)



 その後もしばらく、宇津白さんから協力を懇願され続け、非常に罪悪感を覚えながらも断りを入れていたところ……ようやく彼女も諦めてくれたらしく「ま、まあ頼みも急だったしな……しばらく考えてくれて構わないよ……」と全く余裕がなさそうな表情で言われた。

「そもそも。どうして宇津白さんは、直接光道へ頼みにいかない?」

「もちろん過去に話しかけたさ! だが……私がいくら話しかけようと、完全に無視されてしまってな……。取りつく島もないとはまさにあのような場面を指すのだろう」

 そうだったのか…………俺が最初に話しかけた時はそんなことなかったのに。……機嫌、悪かったとか?

「なあ霧白君。いきなりで申し訳ないんだが……ちょっと光道さんと進の様子を見てきてくれ

ないかな? 中に入らずとも、隙間から少し覗いてくれればよい」

ふっと、宇津白さんの緩んでいた雰囲気が引き締まる。

「はあ……」

 本当に唐突な頼みだな……。まあ、よくわからないが「見てこい」というなら、そのようにしよう…

…。

「すまんな……私は少しやることがあるんだ」

 俺は部屋を出ると、時々、ギッ、ギッ、と床が軋む音を耳にしながら、長い長い廊下を進んで

いく。

 まあ〝長い〟……とはいっても、ほぼ一本道のようなものなので、特にこれといって迷う要素はなかったりするのだが……。

 そうして目的地にたどり着いた俺は、宇津白さんの指示通り〝ちょっと〟覗いてみるべく、(ふすま)の戸をゆっくり横へスライドしていき、わずかな隙間を生み出すと……そこから、そおっと中の様子を確認してみる。

 隙間の先には、机を挟んで座る進と光道の姿があった。どちらも正座しているのだが……進の緊張具合がとにかく尋常でないことが、傍目(はため)にも窺えた。


「あ、あの……光道さん……しゅ、趣味は……」

「料理」

「あ、りょ、料理……。俺も、よく……やります……」


 ………………。

 …………。

 えっ⁉ それで会話終わり!

 それからしばしの間、場の空気が沈黙に包まれたのだが……ややすると、再び進から。


「あ、あの……光道さん……す、好きな……色は……」

「白」

「あ、し、白……。俺も……白、好きです……」


 ………………。

 …………。

 なっ、なんじゃこりゃ……? 彼らは一体、俺の眼前で何を繰り広げているのだろう……。

 俺は…………そっと襖を閉じた。



 さて、無事任務を完了した俺が、宇津白さんの部屋へと戻っている時だ。ある地点に到達するや、自然と俺の足運びが止まった。

 やはり…………すごいな。感想は、その一言に尽きるだろう。

 無数のお札によって、一ミリの空白なく埋め尽くされている襖。

 明らかに、この一室だけ異彩を放っている。

 …………では。

 ある人が家屋にお札を貼り付けるとしたら……それは、どういった状況が想定されるだろうか。

 そんなもの決まっている。

 幽霊、祟り、呪い……何か良くないものを封じるために使用するのだ。

 ……この家……建ったのは相当昔だろうしな…………。正直言って、怪奇現象の一つや二つ発生しても、なんら不思議はないだろうくらいの貫禄がある。

「…………まっ、いいや」

 俺は気を取り直すと、改めて、宇津白さんの部屋へ向かうのを再開。

 もしかすると説得力がないかもしれないが……一応俺は〝入るな 〟と言われた部屋には、やむにやまれぬ事情でもない限り、けして立ち入ろうとはしない人間である。

 例えそれが、どんなに好奇心そそられる部屋であっても……。

 …………ん?

 そうして、宇津白さんの部屋の前までたどり着いたのだが……どうしてか、宇津白さんが扉の近くで両腕を組み、静かに立っているではないか。いつの間にいたのやら。

 俺が近寄っていくと……大きく一回、満足そうに頷いてみせた。

「うん、合格だ。すまんな……つまらんことをして。だが一応、宇津白家に代々続くしきたりでな。非常に重要な用事を誰かに頼む時、一度その人間を我が家に招いた上で自由にさせて、あの札が張り付いた部屋に入るか入らないかを確かめるのだ。で、もし入ったら、その者とは〝縁を切ること“になっている」

 …………。

 ……それはつまり、〝来訪者の自制心を試験する部屋〟という解釈でよいのだろうか。

 言いつけを守らず、何があるのかこっそり見てしまおうというヤツは信頼できない……というような。

 というか……またもや、どこかで聞いたような話だ……。

「進には秘密だが……実のところ、私としてはこんなことで何かわかるとも思えんのだ。……まあ、今はそんなこといいか。中に戻っていてくれ。大丈夫、もう試すようなことはないよ」

 どうやら、何だか知らない内に俺は試されていたらしいが……ひとまず〝合格〟であるなら別にいいとするか。

 「取ってくるものがある」と宇津白さんはどこかへ去ってしまったので、現在、宇津白さんの部屋には、ぽつんと俺一人が残されてしまう。

 そして、一人きりにされたせいか……急にこの部屋が、同学年の女子の部屋であることを意識し出してしまった。それも、学年で人気ある女子の部屋だ。

 ?

 ちょうど、俺の目線の高さくらいに位置する壁部分に、一枚の写真が留められていることに気づく。

 特にやることもない俺なので、何気なく写真を確かめてみたのだが…………白い箱? 

 恐らくこの家の庭で撮影されたと思われる、〝長方形の白い箱〟のようなものが、二つ並べられている――という内容の写真であった。

 近くに比較対象となるものが映り込んでいないので、正確なことはわからないが……たぶん、箱はだいぶ大きいものだろう。

 よくわからん写真だ……。

 やはり落ち着かない俺は、写真から眼を離せ、さらに周囲にきょろきょろ視線を這わせていたところ…………学習机として使っているのだろう、部屋の隅に置いてある机の上に、一冊の開きっぱなしになっているノートがあることを発見した。

 ノートの周りには消しゴムのカスが散乱しており、頻繁に消しゴムが使用されたのだろうことを窺わせる。

 まだ宇津白さんは帰ってくる気配がないので……なんとなーく、そのノートに何が書かれているのか、内容を眺めてみた。



 ここ……夕焼けが見えるステキな砂浜。

 彼……私の好きな場所、ちゃんと覚えていてくれたのね!

「宇津白……いいや、東子! 俺は君が好きだ!」

 どきん。

 やだ……ばれちゃう。嬉しいって気持ち……コイツに気づかれちゃう! 

「そ、その……私も好き!」

 私は照れ隠し――



 凄まじい高速で、俺は視線を明後日の方向に逸らす。

 ――そして。

 俺――霧白龍太は一瞬で悟った。


 しまった……これは()()()()()()()()()()()……と。


 そういえば宇津白さんは俺に言っていたっけ……「誰かを私の部屋に呼ぶのは人生初」であることを。

 だが…………。


 さすがにこれはうっかりすぎるだろっ!


「み、見てしまったのか……」

 ‼



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ