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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第六話 訪問



 

「……何かあった?」

「いや……別に……」

 現在、俺は光道と学校の門をちょうど通過した地点にいる。

 ところで俺は、住所だけを頼りに誰かの家を探す……という行為は初めてであり、正直どうすればいいのかよくわかっていなかったりする。まずは、交番にでも聞きに行こうかな……。

「龍太、場所はわかってるの?」

「住所は教えてもらったんだが、よくわからなくてな……。ひとまず、どの辺りにあるか交番へ尋ねに行こうと思ってる」

 すると光道は「私にその住所教えろ」と言ってきたので、ポケットから住所の記された紙を取り出し、彼女に渡してやる。

 差し出された用紙へ静かに目を落とした光道は……スマートフォンを取り出し、何やら操作をし始めた。

「はい」

 それから、俺の見やすい位置にまでスマートフォンを持ってきた光道。その画面には地図のようなものが表示されている。

「これは?」

「ナビ」

 な……び……? なび……ってなんだ。〝なすび〟や〝なべ〟の言い間違いでないことは、考えるまでもなく明白だ。なぜなら、今そんなもの、光道が俺に見せる必要がない。

 待てよ。それならば――――。

「矢印に従って進んでいれば目的地につける」

 …………ああ。そういうことできるのね……。

 学校を出てしばらく歩き、バスに乗車。その後、四つ先にあるバス停で降車し再び歩いていくと……ほどなくして、辺りの景色が住宅街へと変貌する。

「到着した」

 周りに広がる風景をぼんやり眺めていた俺の横顔に、ふと光道が知らせてくれた。

「……こ、ここか?」

 ただ聞かされただけでは、光道の言うことが本当に真実かどうか、疑わしい気持ちがどうしても拭えない俺であったのだが……表札には『宇津白』としっかり表示されており、どうやら間違いなさそうだ。

「大きいな……」

 そう、とにかくデカいのだ。うっかり、疑ってしまうのも無理ないと思うくらいに。

 周囲を石垣で覆われている平べったい感じの日本家屋。その全体の大きさだったり、いかにも長大な歴史を感じさせる古そうな見た目だったりと、ここら一帯の住宅からは浮いた存在となっている感が否めない。

「随分。金がかかっていそうな門だな」

 その様相からは〝威圧感や威厳〟といった要素が、視覚を通じ脳へひしひし伝わってく

る。

 そんな印象を抱かせる、落ち着きのある構えをした木造の立派な門。大きさは、俺の身長よりもやや高いくらいか。

 そうしてひとしきりに感動を覚えてから、門の近くに備え付けられていた、若干場違いにも思える近代的なデザインのインターホンを控えめに鳴らした。

「はい」

「霧白です」

「霧白君かっ! ちょっと待っててくれ」

 インターホンが切れると同時、俺もほっと胸を撫で下ろす。

 両親とかに対応されたらどうしようかと思っていたが……なんか、一つ大きな壁を乗り越えたみたいな、達成感があるな……。

 それから、一分と待たずして門が開かれるや、制服姿の宇津白さんがひょいと現れた。

「やあやあ、よく来てくれた…………な……」

 明るい笑顔を携え、俺を出迎えたのもつかの間。光道の姿を視界に収めるや、途端に表情から笑みは消失し、すっと何かを窺う様に瞳を細める。

「……()()()()も一緒なのか……」

「す、すみません勝手に……あの……まずかったでしょうか?」

 ……………………あれ? 

 そういえば、俺は光道の名前を彼女に伝えていただろうか? 

 言ったような……言ってなかったような……。けど、宇津白さんが知っているということは、たぶん伝えたのだろう。

 宇津白さんはしばしの間、俺と光道を見定めるかのように視線をゆっくり往復させる。

「…………いや、いい。気にしないでくれ。光道さんもどうぞ中へ」

 一体、彼女の心中でどのような判断が下されたかは不明だが……どうやら光道も立ち入って問題ないらしい。

 ……はあ、よかった。

 万が一、ここで宇津白さんに断られていたとしたら……その先は無計画であった。もしかすると、光道に校舎裏まで呼び出され、ボコボコにされていたかもしれない。

 門をくぐり、そのまま広い庭を通って家の中へ。

「ここに来るまでは迷わなかったか?」

「ええ……まあ……」

 外からの見た印象通り、内部もそれなりに年代を感じさせる木造建築となっていた。

 そうして案内されるままに長い廊下を進んでいき……畳の部屋へと案内された。部屋は比較的広いにも関わらず、内部には焦げ茶っぽい色合いの机が一つ置かれているのみ……と非常に質素な内容となっている。

「ここで待っていてくれ」

 宇津白さんはそう言い残すや部屋を後にしていき、俺と光道の二人きりが残される。

 初めて訪れる家ということに加え、この荘厳な建築物に対し、いかに自分という人間が場違いな存在であるかを考えると……どうも気持ちが落ち着かない。

 一方、俺の右隣りにいる光道は……相も変わらずの無表情。物怖じする気配などおくびにも出さず、まるでお手本のような美しい姿勢で正座している。

 常々、光道の座り方に関しては、しっかり教え込まれたかのように綺麗であると思ってはいたのだが……このような場では、その思いもより顕著なものになるな……。

 それから数分が経過したのち、宇津白さんが部屋へと戻ってきたのだが……ただし一人ではなく、その背後には進の姿もあった。

「待たせて申し訳ない。それで光道さん……少しの時間、霧白君と個人的な話があるから待っていてくれないだろうか。その間、進が対応するから気軽になんでも言ってくれて構わない」

 なるほど、それで進が一緒だったのか。

 それにしても個人的な話……ね。そういえばこの人〝『白光神援教』を倒したい〟……と、なんとまあ過激で物騒なことを口にしていたっけ。きっとその話も行うつもりなのだろう。

 ……一応、『白光流』の使い手以外には秘匿したい情報であるらしいな。

「私が聞いたらいけない話?」

 その時だ。宇津白さんの表情に大きな驚愕と動揺が広がっていくのを、俺は確かに見過ごさなかった。

 それからしばらく、呆然と両目を丸くしながら光道のことを眺めていた宇津白さんだったが……ふっと、我に返ったように胸の前で両手をぶんぶんと振りながら口を開く。


「い、いやっ! ソ、ソンナコトハナイノダー」


 ………………………………。

 ほんの……ほんの一瞬ながら……本当に空気が氷ついてしまったように感じられた。

 ――――()()()()()()()()()()()

 だが……その瞬間、なぜだが無性に宇津白さんへの同情心というか、親近感が溢れんばかりに湧いてきた俺は、彼女をフォローするように口添えしたやった。

「まあ、待っててくれよ光道。もとはと言えば俺だけが呼ばれたわけだしさ」

 すると光道は、ぴくりっ、と眉毛をごくごくわずかに動かしたかと思うと……まるで間違い探しでもするかのようにじ~っくり、俺と宇津白さんを見つめてくる。

「……わかったわ」

 俺の横でわかりやすいくらい安心したようなため息をつく宇津白さんに、「ああこの人は嘘つくのが苦手そうだな……」と、そんなことをぼんやり考える俺。

「あっ……あああ、あのあのそれりゃあ、よ、よろしく、くぉ……光道さんっ!」

 進が猛烈に焦っている様をしり目に、俺と宇津白さんはその場を立ち去ることになる。

 それから……ふさふさと眼前で揺れるポニーテールを、なんとはなしに眺めながら案内されることしばらく。最初に通されたのと同じような、至って簡素な部屋の横を何回か通り過ぎた時のことだ。

 ふと、奇妙なものが視界一面に映り込んだことにより……自然と俺の足が停止した。

 なっ……なんだ……これ…………。

 それは、どこかの部屋に続いていると思しき――左右に開くことが出来る(ふすま)

 この辺りには全く日差しが入り込んでおらず、全体的に薄暗い空間となっている。加えて、そのような環境になってるにも関わらず……どういう訳か、照明が天井に設置されていない。

 そして………俺が足を止めた一番の理由。それは……。

 びっしりと、襖の至る所に満遍(まんべん)なく貼り付けてあったのだ――――()()が。

 お札、お札、お札……どこもかしこも札だらけ。縦、横、斜め……貼り方に法則性は存在せず、まるでこのお札群を貼り付けた当時、何か焦ってでもいたかのような乱雑さだ。

 中には、襖の枠を少しはみ出し……古ぼけた木の柱にまで貼り付いているものも、何枚か見受けられた。

 どの札にも、いつの時代に記されたものかわからないが……少なくとも、確実にここ数日で書かれたものではないだろう文字が墨によって書かれいる。どれも達筆であるせいか、一枚として文字が読み取れる札と出会えることはない。

「説明するのを忘れていたが……」

「うぉっ!」

 先行していたはずの宇津白さんが、気づけば俺のすぐ傍で立っているではないか。

もしかすると……最近の都会女子の間では〝気づかれないようこっそり男子の背後に立つ〟ことでも推奨されているのか?

「その部屋には()()()()()()()

 静かな声音でそう警告するや……身を翻し、キイィ……と木製の廊下を軋ませる音と共に、再び俺の前を歩みだしていく宇津白さん。その表情は、暗がりのせいではっきり確認することが出来ず……彼女が心中で何を考えていたのか、推し量ることは叶わなかった。

「………………」

 〝入ってはいけない部屋〟ね……。

 なんだか…………かつてどこかで耳にしたことのあるような文言だ。


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