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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第二章 ――ホワイトリベンジ――
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第二話 嫌われないために



 家から学校までは徒歩十数分の距離。〝学校に通う〟という面から見れば、我が家も案外いい位置に建っているものだ。

「今日は家具を見たいわ」

 教室に到着した俺達は、放課後の予定について話していた。

 光道には、つい最近まで自分の家ではない場所で数年間生活をしていたという諸事情があり……身の回りの物を改めて揃える必要が出てきたのである。

 そして俺は、買い物の荷物持ちの役目という訳だ。

 放課後。光道の希望通り、家具やら何やらが売っている店に俺達二人は向かった。

「ひじ掛けのついている一人がけの椅子。それとソファーが欲しいの。色は白」

「二つもいるのかそれ? どっちも座るものだろ……」

「でも欲しいわ」

 ……まっ、本人が必要とするのであれば、俺がとやかく口出しすることではないか。

 それにしても……ソファーって結構値段高いのな……。

「これ、どう?」

「いや俺に聞かれても……座ってみたら?」

 ぽすん、と腰を落ち着ける光道。彼女は体の線が細いので、二人掛けのソファーなはずなのに、随分ゆったりした幅があるソファーに思えてくる。

 ぽん、ぽん。

 じぃ…………。

 光道が自分の隣――空いたスペースを軽く手で叩きながら、俺にじっくり、意味ありげな視線を送ってきた。

「ああ……はいはい」

 光道の横へと俺も腰かける。

 おっ、この絶妙に沈み込むような感覚……中々良い心地じゃないか。ソファー……案外いい代物(しろもの)かもしれん……。俺もいつか買ってみようかな。

「…………これ買うわ」

 光道はちらりと俺を一瞥するや立ち上がり、早速値段の札を確認している。

「えっ! いいのか? 他にも色々見て回らなくて」

「いい」

 光道は買い物に時間をかけないタイプらしい。迷わず即決だ。

「でもこれ……片手で運べるかな……」

 〝荷物持ち〟という自身の役職を忘れていない俺はすっと立ち上がると、そのままソファーの底へと手を当て、安定感を得られそうな箇所を探っていく。

 おっ……ここなら持てそうかな……。

 右腕にグイッと力を込めると……上がった。

 うん。肩に担ぐ感じにすれば問題なく持ち運べそうだ。これなら光道が所望するもう一つの商品〝一人がけの椅子〟(ひじかけ付き)も、もう片方の手で運搬出来る……と、思う。

 ……いや、せっかくだ。ここで可能かどうか試してみよう。

 俺は空いている左腕で、すぐ隣に展示してあった『L』字型をした四人掛けソファーの背もたれ部分を掴み……持ち上げてみる。

 やっぱり持てたか。これがいけるようなら、椅子くらい簡単に運べるだろう。

 そうして俺が、右手、左手に掴んでいる二つのソファーを、ダンベルのように何度か上下させていた――――その時。

「……龍太。それは配送してもらう」

「えっ」

 眼前にいる光道からそう告げられた直後……ふと、背後に人の気配を感じた俺は振り返る。

 すると……一人の若い女性客が、驚きでも呆れるでもない、()()()()()()のもと、俺に対してじっくりと視線を注いでいるではないか。またその女性客は、まるで何かの訓練でも受けたのかとばかりに、見事なまでの直立不動であった。

 そして、さらに驚くことに――――俺たちと()()()()()()()()()()()()()()

「ソファーを置いた方がいいわ」

「あっ、ああ……」

 俺はわずかに戸惑いながらも、元あった通り戻そうと商品が傷つかないよう意識しながら慎重に床へと降ろした。

 その瞬間。いきなり光道に腕を掴まれると、そのままどこかへ引っ張られていく。

「こっ……光道?」

「他のところが見たいわ」

 ……だが、このまま、つかつかと他の場所を訪れるものかと思いきや……出口にまで強引に連れていかれてしまった俺。

「どうしたんだよ一体」

「……違う店を回りたくなった」

 ああ、そういうことか。けど……それなら普通に告げてくれればいいのに。

「それと、さっきみたいなことはあまりやらない方がいいわ」

 〝さっき〟…………というと、俺がソファーを持ち上げた時のことだろうか?

 そこで光道が、急に俺を引っ張り始めたのだ。思い当たるとしたらそこしかない。

「龍太が怪力なのは理解しているけど、それを知らない人達の注目を集めてしまう。私達は…………少しでも注目されない方がいい」

 うぅっ…………!

 ……確かに…………これは反省だ。

 よく考えるまでもない。一般的に、あんなことやる人は……まあ、いないだろうさ。

 あまりにも気軽に行えてしまったせいで、少し調子に乗りすぎたのか? とにかく、周りがまるで見えてない、非常に軽率な振る舞いであったことは揺るがない事実である。

 今日は平日であり、お客さんがほとんど存在しなかったからよかったものの……それでも、すでに一人の人間に目撃されるという重大な失態を犯してしまった。

 現在、俺と光道は様々な事情があった結果、ある組織に追われて…………追われて……いる……のか? 

 正直よくわからん状況だ。あちら側から何か危害を加えられたことは今のところないし……かといって、あの出来事が起こってからたいして期間が空いた訳でもないので……判断しようもない。

 …………しかし。だからと言って油断するのは違う。

「それに、他の人からは間違いなく(おび)えられて()()()()。……ううん、他の人から嫌われるどころか、龍太が危険人物扱いされる可能性だってあるわ。恐ろしいものは捕獲されるか……殺される。朝、熊が捕獲されたってニュースみたいに……」

「ご、ごめん……」

 光道の意見には、多少誇張されている面も感じられたものの……結局は情けない気持ちで心がいっぱいに埋め尽くされた俺は、大人しく彼女に謝る。

「ううん、わかってくれればいいの。とにかく誰の前であろうと、龍太は()()()()()()()

「ああ、そうする」

 今の俺は……自分で言うのもなんだが、例えば学校の体育の時間であったら、少しばかし過剰に活躍できるだろうくらいには、他人よりも運動能力が高かったりする。

 だが、活躍するのはやめておいた方が賢明そうだな……。

 彼女の言葉通り、誰に対しても〝極力目立たぬ〟よう、振る舞うことを強く胸に刻みつけながら、平穏無事な日々を祈って生活を送っていこう。

 なにせ…………もう、あんな酷い目にあうのはこりごりだ……。

 それに、他の人から()()()()()()()()()()()()()()()()()。ただでさえ友達いないっていうのに……万が一にでも高校生活だけでなく、一生涯嫌われ者にでなってしまっては大変だ。

 その未来を想像した瞬間、俺の全身を北極の寒さに負けないくらいの強烈な冷気が駆け巡るような、恐ろしくゾッとする感覚に襲われた。

 その後、努めて俺は普通の振る舞いを行うように意識しながら、別の店で光道の欲しがっていたソファーと一人掛けの椅子を購入し……俺たちは帰宅したのである。


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