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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第一章 ――ホワイトアタック――
22/118

第二十一話 作戦


          ○


 (1)光道に「今日部屋に行きたい」と頼み、宗教施設内に立ち入る。

 (2)光道の部屋に向かう途中猛烈な腹痛に襲われるフリをして、光道に薬を持ってきてもらうよう願い、一人になる。

 (3)一階に急行し『白き扉』を探し当て地下に向かい『復活の薬』を入手。

 (4)光道に調子が悪いと言ってその日は帰宅。翌日、俺と光道が確実に二人きりになれる場所にて、そこで薬を突き付けつつ再び『白光神援教』を脱退せよと説得する。

 

 ()()()()()()()()


 しかも今日、俺は信頼性をさらに高めるための秘密兵器『カメラ』を持ってきている。

 これで俺が〝市販の目薬〟を加工して光道の鼻面に突き出しているのではなく、本当にあの施設から奪取したものであるという、確固たる証拠として光道へ訴えることができるわけだ。

 しかし……この計画には〝一つ〟……ただ一つ……問題となる点が存在する。

 『白き扉』だ。

 これの場所が曖昧不明確。この作戦はいかに迅速に扉を発見することが出来るかが、重要となるだろう……。

 


 昼休み。教室が生徒の声で活気づく中、俺は今まさに弁当の包みを解かんとしていた光道の横顔へと声をかける。

「光道、今日お前の部屋に行ってもいいか? ああ……施設の方な」

「なんで?」

「それは――」

 俺は、はっとする。

 しまった! どんなふうに光道へ理由を告げればよいのだ。

「そ、その……だな……気になって……な……」

「何が?」

「な、なに……と言われると……だな……」

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ! こんな何も始まっていない段階で(つまづ)いてどうするんだ俺! もっと脳を酷使するんだ!

 片手で後頭部を何度も軽くつつきながら、俺は猛烈に頭を回転させる。

 そ……そうだぁ‼ 

 脳内に雷鳴轟くイメージが流れると共に、素晴らしきアイデアが急浮上してきた。

「じ、実はだな。前にお前の部屋に行ったとき、もしかしたら忘れものをしたかもしれないんだよ。そう! 忘れ物! それで……急いで必要なものだから何としても今日、自分の足で忘れてないか確認したくてな。とにかく……困ってるんだ!」

「困ってるの?」

「ああそうなんだよアレがないととにかく俺は困って困ってしょうがないんだ」

 ………………。

 くそっ……心持ち早口になりすぎたか? これはもしかすると警戒されたかもしれ――。

「わかった」

 ほっ……。ハラハラとした胸をそっとなで下ろす。

 よかった……疑われなくて……。

「ところで忘れたものって……?」

「えぇああぁ! あぁー、それは…………え、鉛筆? とか?」

「シャーペンなら今貸せるけど」

「ち、違うんだよ! そう、お、思い出……! 思い出のある鉛筆なんだ片時も手放したくない大事なモノでまさかそれをなくしてしまうとはいやーびっくりびっくりぃ!」

 ここで咄嗟に〝思い出〟という単語を用いて、ある程度説得力のありそうな切り返しを即座に出来たのは、きっと今朝アルバムを眺めてきた影響によるのだろう。

 アルバムを見ていた時には、何かに利用できそうにないと考えたものだが……こうして瞬時に機転を利かせられただけでも、アルバムに目を通した意味が十分あったというものだ。

「……そう」

 散々焦った挙句に生まれた、案外機転の利いた俺の言葉に対する光道の返事がわずか二文字というのは……何やら上手く言い表せない残念な気持ちに包まれる俺である。

 何をそんなに慌てていたのだ俺は……と。


          ○


 放課後。

 まだ夕方……というほどではないが、そこそこに日が傾きだした頃。

「「おかえり・おかえり・おかえり・おかえり・おかえり・おかえり」」

 十階建てくらいの、外面はマンションを装う異常に白い建物。

 入った瞬間、素晴らしくにこやかな笑顔を顔全面にたたえ、惚れ惚れするような見事な整列状態を維持しながらスキップしてくる男女の集団。

 みんな白い服を着ている。前回の訪問時と全く変わらない、奇妙な出迎え光景。

 ああ……やっぱりこれ、毎回やってのか……。俺は半眼で、よくまあしっかりと膝が上がっている、いかにも疲れそうなスキップで近づいてくる男女を黙って見守る。

「おかえり、光道さん!」

 代表の女が一人、光道へ近づくように一歩前に踏み出てくるや、ハリのあるよく通った声で光道に挨拶した……と思った直後、目を大きく見開かせながら凄まじい勢いで俺の方を振り向いてきた。

「あなたは…………ダァレ?」

「し、知り合いです! 光道のぉ!」

 悪いが俺の周りを囲んで、どこかの民族の雨乞いみたくぐるぐる回られるのはもうお断りだ。俺はすぐさま力強く〝知り合い宣言〟をし機先を制す。

「お知り合い?」

「私の知り合いで間違いない」

 アシスタントするように間髪入れず光道も肯定してくれた。

「光道さんのお知り合いぃぃぃぃぃ!」

 女がそう叫ぶと、すぐに他の者も息ぴったりのタイミングで叫ぶ。

「私たちのお知り合いぃぃぃぃぃぃ!」

 隊列は一斉に回れ右、そのまま再び軽やかなスキップを開始。

「しりあい・しりあい・しりあい・しりあい・しりあい・しりあい」

 どこか建物の奥の方へ消え去っていく一団の後ろ姿を見送る遠い目をした俺、そしてなんも考えてなさそうな顔の光道であった。

 それにしても、やはり変なお出迎えをするな……ここの人達。

「こっち……」

 光道が右足を一歩踏み出した瞬間、俺は光道の足の運びの違和感を即座に察知。それを認識した時点で俺は矢のように飛び出した。

 一歩、二歩、三歩……。

 体の傾き具合から光道の落下地点を予測した俺は、彼女の前方へ体を捻るように自身の身を躍り出させる。

「あっ」

 セリフと意思が噛み合っていない、大して驚いてなさそうな短い間の抜けるような声を上げた光道。

「大丈夫か?」

 どうにか俺は転びそうだった光道を受け止めることに成功した。彼女のわずかな体の傾きを早期発見できたことが、この成功の大きなカギになったといえるだろう。

「……うん」

「今度からこの床を歩くときは要注意な」

 光道によって時々もたらされる、我が背筋をひやっとさせるアクシデントは極力勘弁して欲しいものだ。現場に遭遇して、その度あわあわする俺の身にもなってくれ……胃が痛い思いだ……。


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