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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第一章 ――ホワイトアタック――
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第十七話 魂胆


          ○


 ここで、文章は終わっていた。

 ふう、と気を重くしながら小さく息を吐き、目の疲れを癒すように眉の辺りを指で軽く揉む。

 さて……このメモ、どう解釈するべきかな。

 取りあえず簡単にまとめると……『エレベーター』――は都会に来てその便利さに驚いたやつだ。それがあの施設には存在しており、地下に降りると『復活の薬』が無数にある。

 …………どうでもいいが直球な名前だな……『復活の薬』。

 俺は立ち上がり、少し凝り固まった気のする体をほぐすように首やら肩を回す。

 あの若い男にも、それなりの歴史があったというわけだ。

 文章は淡々とした一人語り。加えて、別に何かお願い事をされるわけでもない。

 これだと……この人の気まぐれと思しき理由で託された、遺言めいた文章を持て余してしまいそうだ。

 …………と思いつつも、実はその一方である決意を俺は心中で固めていた。


 〝光道をあの宗教から抜けさせる〟


 以前の俺は、それを決意するのにためらいを感じていた。それはひとえに『白光神援教』が光道の生きる支えになっていると思ってのことだ。

 だが、今は事情が違う。それは――。

 ()()()()()()()()()()と判明したからだ。

 男の文章には『美しき光の部屋』選出者の内、生還を果たした者はいない……と、記録されていた。選抜基準に関してしっかり把握することは出来なかったものの、この先万が一にでも光道が選ばれでもしてみろ……大変なことになる。

 俺は光道に死んで欲しいと全く思わない。

 転校した学校で、ようやくまともに会話する人間が出来たのは素直に嬉しいし……いや、例えその事情を除いたとしても、光道との思い出はたくさんある。何せ昔はよく遊んだ幼馴染だ。

 つまり、俺にとって――――光道は〝他人〟じゃないのだ。少なくとも、困っていたらお節介を焼きたくなるくらいには……な。

 もし、光道に余計なお世話と思われたとしても、助けられるなら助けたい……。



「どう、見終わった?」

 そんな一言を携えながら戻ってきた光道のとんでもない姿に、俺は思わず眼を見張る。

「ま、まま、待てっ! 光道、ふ、服……」

 光道の身を覆う水色の寝巻。それが……ぱっつんぱっつんなのだ。全体的に。

 袖は短く両手首は完全にあらわになっており、さらに胸元はやたらと強調され、光道が隠れ巨乳の持ち主であったことが否応なく判明してしまう。白いお腹はちらりと露出しており、ズボンもサイズがあってなく、細身のはずの光道の足がやたらとむちむちした良い肉付きであるよう見える。

 ……何なんだ、この光道の姿は! 上下ともボディラインがむやみやたらと強調されているではないか。純情な男子高校生の精神を容赦なく揺さぶってくる…………とにかく、ひたすら目のやり場に困る、セクシーな格好だ。

 無意識にも光道の全身をじっくり凝視していた自分に気づくや、そのまま脳深くに刻み込まれてしまった邪念を取り払うように首をぶんぶんと激しく左右に振る。

「寝巻、昔のしかなかったから……」

 そ、そうか。掃除をしたせいで忘れかけていたが……光道が寄りつかなかったが(ゆえ)、この家はしばらく歴史が止まっていたのだった。むしろ、これでもよく着れた方だろう。

 ……うん? 待てよ……歴史が止まる……?

 そこで、俺はある疑問の存在に思い当たった。

「なあ……今ふと思ったんだけどさ」

「どうしたの?」

「前、光道にこの家へ帰りたくない理由を聞いたときさ、「帰りたくない、帰ってはいけないって気分になる」……そう言ってたよな?」

 俺は大変目に毒である光道の危険な全身像をなるべく視界に収めないよう、視線を天井や壁だったりとあちこち、きょろきょろ彷徨(さまよ)わせながら尋ねる。

 光道は「うん」と、首肯して返事をよこしてみせた。

「それじゃあ、どうして今日俺を家に呼んでくれたんだ?」

「それは……」

 ――光道の感情を読みとるのは非常に難しい。

 元々、俺自身あまり人の感情を察する能力に長けた人材ではないという自覚はある…………が、光道の際立った表情変化の乏しさは、きっと俺以外の人間だとしても、その感情を読みとる難易度は高いものとなるだろう。 

 そして現在も、例に漏れず光道が何を考えているのか俺にはわからない。……わからない……の、だが……しかし一つだけある変化が光道に訪れたのを俺は発見した。

 本人は自覚しているのかいないのか……微かに頬を赤らめているのだ。

「何となく……そんな気になった」

 さすがの俺も、その些細な態度の変化から光道が何を考えているのか、わかってしまう。

 光道……お前……。

 

 最初から、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 くぅっ! なんたるやつめ。この汚い惨状の家を見せつけた上で「掃除が苦手」などと発言したのは、きっとたまに帰るかもわからない家を俺に掃除をさせる魂胆があったからだろうさ。

 そして仮に俺が掃除をすることを提案しなかった場合でも、パソコンを貸す条件として掃除させることを提案していたに違いない。

 光道よ、お前はそこまでして掃除をしたくなかったのか……。

 しかし、すぐに光道が掃除するたびに室内をみるみる汚していく様子が頭をよぎる。

 ……ま、まあ……仕方ないといえば、仕方ないかな。光道の掃除の苦手具合は折り紙付きだし……。

 それに、実際大して気にしてはいない。多少時間は取られてしまったものの、結果的に目的を果たすことができたのだ。掃除自体も嫌いじゃないしな。綺麗にすると自分の心もすっきり爽やかな気持ちになるし。

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