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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
第三章 ――ホワイトアシスト――
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第一話 困難



 七月上旬。

 地獄の定期テストをどうにか乗り越え、後は輝かしい『夏休み』の訪れを待つのみとなった……そんなある日のこと。

「おーい霧白! 夏休みにプール行こうぜ!」

 放課後。

 俺――きりしろりゅうが帰り支度を整えていると、しろすすむが馴れ馴れしく声を掛けてきた。

「えぇ……」

 このうだる様な暑さの中、よくそんな活動的ワードを発せられるな。

「いいじゃねえか! ほらっ……姉さんも連れてきてやるから。見れるぞぉ~姉さんの水着姿」

「きょっ、興味……ないね」

「心惹かれてんじゃねえかっ! なあ無理すんなって……わかるぜぇ。俺だってもし光道さんの水着が見れるってなったら……くううぅぅぅ!」

 進は中々にイケメンな部類へ属するのだが……今の気持ち悪いくらいゆるんだ顔からはイケメンだった面影が完全に失われている。

「なあ進。別に俺は誘ってもらうのが嫌って訳じゃないんだ。ただなあ……その……事あるごとに東子と俺をだな……。くっつけようとするのは、あまり褒められた事じゃないと思うんだが?」

 進は自身が抱くある『野望』のため、俺と東子を積極的にカップルへ仕立て上げようと画策してくるのだ。全く……勘弁してくれ。

「おっ! 霧白君、ここにいたか!」

 俺が進をいさめていたところ、不意に背後から元気な声が掛けられた。

 振り向くと……そこには凛々しい相貌、美しい佇まい、艶やかな黒髪はポニーテールとして垂らしている進の姉――しろとうの姿が。

「おっと……俺はお邪魔かな……。じゃあな霧白! それと姉さん……頑張れよ~」

「なっ! す、進‼ 一体な、なな何を言ってるのだお前は!」

 進の冷やかしを真に受けた東子が、トマトのように赤面しながらぶんぶんと大きく手を振り、分かりやすく狼狽し出す。

 そして。進が教室から完全に去っていくのを見届けると、どこか緊張した面持ちで、俺の方へゆっくり向き直った。

「こ、こほん。そ、そそそそれでだな……霧白君。ほら、もうすぐ夏休みだろ? だから良かったら……その……夏休み、わっ、私とプールにでも行かないかっ?」

「ぶっ! げほっ……ごほっ……」

「だ、大丈夫か霧白君!」

 東子は突然激しくむせ出した俺の背中を優し気にさすってくれた。

「と、東子……プールって……。進に何か言われたのか?」

「おっ? 進に? ……いや、心当たりないな」

 ということは。この姉弟は示し合わせた訳でもないにも関わらず、それぞれが俺を『プール』へ誘おうとした事となる。相変わらず息の合った双子だ。

「龍太は宇津白さんとプールに行くの?」

「いやそれが――ってわああああああぁぁっ‼ し、白紗季っ⁉」

 いきなり女の声が聞こえ心臓の鼓動跳ね上がる俺だったが、その正体が白紗季とわかり胸を撫で下ろす。

 雪のような純白の肌。意外と出ているところは出ているボディ、麗しい漆黒の髪は二つ結びにし、おさげのように前へ垂らしている少女――こうどうしら

 白紗季は現在、我が家の隣に住んでいる俺の『幼馴染』。

 彼女の前世は『忍者』かそれとも『スパイ』か。そうでなくては説明がつかないような驚異的ステルス能力をその身に宿しており……ことあるごとに俺は接近を悟れず、驚かされてばかりいる。

「龍太は宇津白さんとプール行くの?」

「……あっ、ああ……いや……その。今ちょうど誘われたばかりで返事はまだ――」

「えっ‼ 行かないのか霧白君……」

 しょぼんとテンションダダ下がりの東子。心なしか彼女のトレードマークであるポニーテールも何だか(しな)びたように感じられる。

「いやっ! 別にそうとは言ってないから――」

「じゃあ行くの龍太?」

「いやっ! そうともまだ決めてないというか……」

「えっ‼ や、やっぱり行かないのか‼ 霧白きゅん……」

 身体をプルプル震わせながら、東子がだんだん涙目になってきた。

 いやだからその……ええと……その……ええと……。

「行くの龍太?」

「行かないのか霧白きゅん……?」

 ……。

 …………おっ。

 おっ、俺は……。


 俺はどうすればいいんだぁっ! 


 東子に「行く」と返事をするのは簡単だ。

 しかし、進がどんなちょっかいを掛けてくるか分かったもんじゃないし……何より白紗季が怖い。

 かつて東子と俺が一緒にいたことを知った白紗季による驚きの行動ときたら……うぅ、思い返しても身震いする。

 椅子に拘束され、服を脱がされ、油性ペンで体にラクガキされ……。

 俺は暑さだけが原因じゃない、額から吹き出す玉のような汗を腕で拭い……どうにか現状打破を目指し、無い知恵を必死に振り絞ろうと試みる。

「ハッ! そ、そうだっ! 白紗季も一緒に行くっていうのはどう……でしょう……か?」

 すると、東子は少しむくれた表情を、一方白紗季はもともとの無表情がさらに無表情と化していく。

「むぅ……まあ、しょうがないな。ライバルとは正々堂々戦う方が私のスタイルに合っている」

「……わかった」

 その瞬間。東子と白紗季の視線が激しく衝突した……ような気がした。

 特に睨み合っているという訳じゃない。ない……のだが……なんだろう。この背筋を駆け抜けるような寒気は? って、なんで俺が怯えなくちゃいけないんだ!

 「それじゃあまた明日!」……東子は俺と白紗季に挨拶するや、軽やかに身をひるがえし、颯爽と教室を去っていった。

 東子の姿が見えなくなると同時、自然と俺の口から安堵の溜息が零れた。

 はぁ、よかった。何とか乗り切ったか……。

「龍太。家に帰ったら〝ねっとり〟……話があるから」

「ねっ……ねっとり? ねっとりって何だ⁉ そこは〝じっくり〟とかじゃないのか⁉」

 〝乗り切った〟……なんて認識はとんだ誤解。むしろここからが本番だったのかもしれない……。




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