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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
短編 写真を撮ろう
112/118

第十話 占い




「あ……ええと……じゃあ、君は何なの?」

「へっ⁉」

 お、俺が……何なのか……? うーん、そうだな……。

「白紗季は幼馴染で…………友達です。時々、きつい冗談を言われることもありますけど……基本、仲はいい方だと思います」

「ああ……。そうか……そうなんだ……」

 完全に脱力したかのよう、どっさりソファーへ腰を落とす伊藤さん。

 それから、伊藤さんは一旦落ち着こうとしたのか。テーブル上にあるティーカップへと手を伸ばして……

 カタッ、カタカタカタカタッ。

 めっ、めちゃめちゃ手が震えてるっ⁉

 伊藤さんの右腕が、目に見えてわかるくらい激しく振動していた。 

 こ、こんな動揺するなんて……そこまで衝撃的だったか――

 

 バシャッアアアアァッ!

  

「ああっ!?」

 やっぱりこぼしたっ‼ 

「大丈夫ですか⁉ な、何か拭くものを――」

「待って‼ 待って待って待って待って待って‼」

「へっ?」

 直ちに拭き取った方がよいだろうに、何故か手を前へ突き出し俺の動きを制してくる伊藤さん。

「お、お願い…………孫と……結婚して……」

「はいぃっっ!?」

「たったっ、たたたた頼むよぉ! お金払うから……。結婚してよぉ……。ねえ。私の方が先は短いんだしさ。ねっ? ねっ? いいでしょう? 私が……その、もし、重病だったらどうするの? 明日死ぬかもしれないんだよ?」

「重病なんですか!?」

「違うけれども……結婚してよ、ねえ? いいでしょ? 白紗季は、世間でも随分可愛い方だと思うよぉ」


 ………………………………………………。

 

 ……。

 ………………かっ。

 か、か、か、かぁっ!


 勘弁してくえええええええええええええええええええええええぇぇぇ‼


 滝のように冷や汗をかきまくった俺は…………もうこれ以上構っていられない! 腰に(すが)りついてこようとする伊藤さんを、サッと回避するや。

「それじゃあ失礼します! あっ! あと、もう尾行はやめてくださいね!」

 そうハッキリ告げるや、慌てて家から外へ飛び出すのであった……。


          ○


「…………疲れた」

 なんか最近……精神的疲労を覚える頻度が増えた気がする。

 すっかり暗くなっていた夜道を車で帰宅した俺は、玄関に到着して早々、それはそれは深い溜息をついた。

 ちなみにというか、車の運転手である男には『公衆電話』で連絡を取った。

 というかどうして電話番号のメモを受け取った際に思い至らなかったのか。俺が……携帯もスマホも所持してないということに……。

 町中を隈なく探索し、どうにか公衆電話を発見したが……もし見つけてなかったら、間違いなく〝迷子〟と化していただろう。

「さて……」

 問題は本日知ってしまった事実を白紗季に教えるべきか……それとも黙っておくか、だ。

 伊藤さんからは、何も言われなかった訳であるが……。   

 でもこういうことは……やっぱり本人から直接伝えた方がいい気がする。一々、部外者の俺が口を挟まずに……な。

 何せあの二人は〝祖父と孫〟の関係だ。

 それにもしかすると。〝何も言われなかった〟のではなく、単に話を〝切り出せなかった〟だけ……という可能性も十分あり得る。

 ならば。もし今後伊藤さんから「白紗季に事実を伝えてくれ」と直接頼まれることがあったなら……その時こそ、俺が教えればいい話だろう。

「…………」

 それにしも。引っ越して以来、随分と不思議な経験を重ねてきたものだ……。

 そう思うと、何だか感慨深い気持ちが胸に込み上げてくるな。

 しみじみそんなことを考えながら、俺は何とはなしに窓から無数の星が瞬く夜空を見上げるのであった――

 


 翌日。

 休日で学校はなく……おかげで、慌ただしくない穏やかな朝を迎えられた俺。

 さて……今日は読書でもしようかな。 

 読書は俺の数少ない趣味の一つだ。

 実際。休日を丸々読書に費やす……なんてことは、割とよくあることだったりする。

 ……ということで。

 本日の予定が決定した俺は、早速図書館から借りてる本を読もうとした……その時。

 ガチャンと家の扉が開放される音がした。

「おお……白紗季か」

 現れたのは白紗季だった。

 全体的に白色多めな服に身を包み、膝にまでかかる長さのスカートを穿いていた。

 ちなみに、彼女はどうしてか我が家の鍵を未だに全く手放そうとしない。

 ……まあ、とはいっても。別に今すぐ返して欲しい訳でもないんだけどな。

 もはや今さらという感があるし……何より、白紗季が〝一人暮らし〟という事もある。

 何か困ったことがあった時、すぐさま俺の家へ駆け込めた方が都合が良い……なんて事態、将来的に訪れるかも……という、一応俺なりの配慮だ。

「どうしたんだ?」 

 てか珍しいな……休日はだいたい昼近くまでぐっすり眠ってるのに。……まあ、もう早朝という時間帯でもないが。

「龍太、一緒に写真撮ろう。ツーショット」

 …………。

「最近、似たような言葉を耳にした気がするのは……俺の勘違いか?」

「大丈夫。今回は連写しないから」

 白紗季のヤツ……さらっと無視やがった……。

 それにしても、時々白紗季は強引になるな。そして大体の場合、結局言うことを聞いてしまう俺なのだが……。

 いや、待てよ。

 これってつまり……俺という人間は〝押しに弱い〟ということか?

 そんなことをボンヤリ考えながら、写真撮影のため白紗季の隣へ並んでやった……瞬間。

 ふっ、と昨日の伊藤さんとのやり取りが思い返された。 

 それは伊藤さんの「娘と結婚してくれ」という無茶苦茶な〝お願い〟の言葉。

 ――その途端。

 俺は自身の将来が無性に不安でたまらなくなってきた。


 い……いくら〝押しに弱い〟っても……流石に結婚はしないよな……未来の俺よ……。

 

 カシャッ! と若干不意打ち気味みにシャッター音が鳴り響く。

「良く撮れたわ。これ」

 一方白紗季は……無論、俺の不安など知るはずもなく。相変わらずの無表情ながら、心なし満足げ気に撮れたばかりの写真を俺へ披露してきた。

「取りあえずスマホの壁紙にしておく」

 ……。

 ……。

 ……はあ。

 この先、俺は一体どうなっていくのだろうか……。

 ………………。

 ……………………!

 あっ!

 そうだ。

 図書館で本を借りて……そんでもって、試しに自分でやってみようかな……。

 自分の将来がどうなってしまうのか……それを確かめるべく。

 

 ――『占い』ってやつを。



白き光よ降り注げ!  ――写真を撮ろう――  終わり



 今回の短編はこれにて終了です。当初は「短編なんて長編と比べれば楽勝だろ!」……なんて愚かな妄想を抱いてましたが、結果としては色々難しい点が多かったと感じています。

 さて、次は〝第三章〟を書いていこうと思いますが……すみません、次回は少し間が空いてしまいそうです。恐らく二ケ月後とかになるかと……。

 出来るだけ忘れられないよう早く書こうと思いますので、投稿した際は再び読んでいただけると嬉しいです。それでは。

 ――作者

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