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白き光よ降り注げ!  作者: YGkananaka
短編 写真を撮ろう
109/118

第七話 心当たり




「それじゃあ、終わったらこの番号に電話してくれ。時間は気にしなくていい」

 男はそう言い残すや、そそくさと車を操りこの場を去っていく。俺はそんな男の後ろ姿が見えなくなるまで、しばしの間立ち尽くしていた。

「ここか…………」

 その外観からは〝現代的な建築〟……という印象を受ける。宇津白家のように古風な要素は微塵も感じられない。

 そして……周囲の住宅に負けず劣らず、随分〝立派〟な家であった。この家の住人は間違いなく金持ちに違いない。 

 ひとしきり外観を眺めまわした俺は、ひとまず壁面に取り付けられている表札を確かめてみた。

 

 『伊藤』

 

 伊藤さん。

 この家の人が俺の監視を男たちへ依頼したのか……。

 伊藤さん…………伊藤さん……伊藤さん……。

 …………。

 …………。

 ………………。


 って、誰だしっ⁉


 誰だよ伊藤さんって! 全然知らないよっ!

 『伊藤』という名前に思い当たる節がまるで無い。皆無だ。

 ……と、とにかく、今は行ってみるしかない……か。ちょっと怖いけど。

 車内で男に聞かされた説明によれば、インターホンは鳴らさず、勝手に中へ入って構わないとのことだ。

 なので俺は遠慮なく……とはいっても、やっぱり腰が引けるというか……若干おどおどしながら門を通過し、そのまま静かに家のドアを開けていく。

「よく来た。上がりなさい」

 ……っ!

 まるで俺を待ち構えていたかのよう、玄関には一人の男性が立っていた。

 それも、年齢は……七十代くらいか? 割と高齢だと思われるおじいちゃん。

 ……。

 おっと…………こいつは予想外だ……。

 ……いや。

 まだわからんぞ。出迎えたのが、たまたまこの男性であっただけかもしれん。

 さて、そんなおじいちゃんに俺は居間へ通される。

 そこは、いかにも値が張りそうな高級感漂う家具で揃えられていた。

 また、掃除も隅々まで行き届いるようで、どこもかしこも綺麗な状態だ。もしかすると、定期的に清掃を業者に依頼しているのかもしれない。

「そこに座って」

「はあ……」

 促されるままソファーへ腰かける俺の眼前へ、白い湯気がもくもく立ち込めるカップが差し出された。

 カップもやはり高級感溢れるデザインだ。というか絶対高いに違いない。

「紅茶だ。飲んでいいんだよ」

 ……。

 いや……あの。実は俺……ちょっと猫舌気味だったりして……。

 ……。

 す、すごい……すごい目力で、俺をじ~っと見つめてくる……。

 それはまるで「いいから早く飲めよ」と言わんばかりの強力な圧力を、嫌が応にも俺へひしひし感じさせた。

 ……。

 ……の……飲む……か……。

 「ふっ、ふっ、ふっ」と細かに息を吹きかけ冷まし、ちびっと口内へ流し込んでみる。

「ぶっ! んぁ熱っっぅ‼」

 熱い熱い熱いっ! めちゃくちゃ熱いっ! 何だよこれ見た目通り超熱いじゃん!

「もしかして……口に合わなかったかな」

「‼ いっ、いえいえ、そういうことでは……」

 もはや〝味〟以前の問題である。これはもうしばらく冷まさないと……。

「そうか、なら遠慮せず……グイッと」

「はっ?」

 ぐ、グイッとっ……? 

「いや、あの、その……それは……」

 言え! 

 言うんだ俺! ただ一言「無理ですっ‼」…………と。

 ただ……ただそれだけのことじゃないかっ‼

「……ふーふー。ずずっ……」

 ああ……ダメだ……断れなかったぁ……。

 何とな~く〝相手に悪いかな?〟……と結局飲んでしまう、弱腰な俺であった。

 どうやら人見知りな俺は、初対面の人に対し意味の分からない配慮をしてしまうらしい。

 ……いや、これは人見知りとは関係ないか?

 多少なりと時間をかけながら、どうにか小口でカップの中身を飲み進めていく俺。もはや単なる我慢大会である。

「うぅ……」

 の、飲み終わった……。

 もっと……じっくり、時間をかけて味わいたかった……。絶対、茶葉も高級なものだったに違いないし。

 尋常ならざる熱さのせいで、舌先をヒリつかせながら……俺はそっと、空になったカップをテーブルの上へと戻した。

「……えっ」

 瞬間、空のカップへ熱々の紅茶が注がれてしまう。咄嗟の出来事に俺はその光景を唖然と見つめているだけだ。

 何たる熱烈なもてなし具合だろうか……。思わず涙が零れそうになる。

「どんどん飲んでくれて構わないよ」

「あっ、あのぉぉっ‼ ……ど、どうして今日、俺を……」

 人見知りの俺もさすがに限界を迎えた。

 というか、このままじゃただの罰ゲームじゃないかっ‼

「……ああ。いや、そうだねぇ……」

 パチリと一つ大きく瞬きした男性は、俺の対面にあるソファーへゆっくり腰を下ろす。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 ――――って、黙ったままっ⁉ これじゃ埒があかないっ!


「どこから話したものか……」

 あっ! よ……よかった……話しを切り出してくれた……。



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