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或るラブレターの一生  作者: 林 秀明
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「僕という存在」

「軽率なラブレターほど、相手を傷つけるものはない」


中学校時代の僕は目立ちたかった。周りの人からは苛められ、釘を打たれ、特別才能のなかった僕は、表舞台に立つ事はなかった。ずっとクラスの一員としてそこに存在しているだけの空気そのものだった。


だからこそ学校とは別の塾では目立ちたかった。学校の自分の存在を否定するように明るく振舞ったり、アホな事を言って注目されたかった。

そこで当時の僕が考えたのは……


「好きでない奴に、ラブレターを書く」という行為だった。


当時は携帯電話は市場に出回っていたが、持っている奴はそれほどいなかった。

なので相手に想いを伝えるには、直接告白をするか、手紙を書くという手段が主流だった。


「ハヤシ君、お前好きな子とかおらんの?」

少し老けて見えたのか、同じクラスの友達から君付けで呼ばれていた。休憩中に開催される思春期話題のお話し。受験勉強が忙しい三年生の僕たちが唯一、肩の荷が降ろせる気楽な話なのだ。

「おれへんよ、今そんな時間ないし」

「いやあるやろ。万年机に向かって勉強してるわけないし。どうせこのクラスの隣の子とか違うんちゃうんか?」

下地の一言にどきりとした。顔や言葉では違うと否定しても、心の鼓動は抑えれなかった。鼓動が先ほどの数倍早く鳴り響いている。


僕は矢田愛子が好きだった。

10人クラスの男女5名。短い時間の中、仲良くなる機会はごく僅かったが、矢田の笑顔は特に可愛かった。背が低く、少し色黒でくりっとした目が大きかった。肩に被さるくらいのツヤの良い髪がさらさらと舞い、友達の中でもすれ違うとシャンプーの良い香りがすると評判だった。そんな男子にも人気の矢田に僕は簡単に恋心を抱いた。


そして矢田の注意を引こうと、ダメ人間の行動を起こしたのである。


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