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ワールド・イズ・マイン

美咲さんの本性です

私は、13歳までは、斎藤さいとう 美咲みさきと名乗っていた。今は、母が愛人から妻へ昇進したので、西条さいじょう 美咲みさきへと名字が変わった。

母が正妻になった事で、色々と変化があったのだけど、中でも生活環境が一番ガラリと変わった。私はただの一般ピーポーからセレブへと変身を遂げたのだ。

その時私の感想を一言で言うなら、「乙女ゲームのヒロイン設定、ktkr!」だった。ちょうど、各種恋愛シュミレーションゲームに嵌っていて、この絵に描いたような現状にwktkしていたのだ。

そう、私はかなり痛い少女だった。

周囲は誰も、私がこんなに痛くて色々拗らせてる事は知らない。まあ、年齢から考えても、丁度あの思春期特有の病“厨二病”を発症する年齢だった訳だし、しかたないよね?


それに、私が自分を『乙女ゲームのヒロインみたいじゃね?』と思ったのは、他にも理由があったのだ。



私は子供の頃から見た目のせいで、とにかくトラブルに巻き込まれやすかった。

なんでも私は、『か弱く、守ってあげたくなる』見た目をしているらしいのだが、それもいきすぎると女子の反感を買うらしい。

男子が私に群がったり、何かにつけて優遇しようとするのを女子の皆様は、事のほか不快感を示した訳だ。無視されたり、消しゴムを隠されたりと、小さな嫌がらせを沢山受けた。そして、それに気付いた男子がまた私に構うため、更に女子の反感をかうと言う無限ループ。

子供の頃からそんな事を繰り返していた私は、自分の事を少女漫画のヒロイン体質だと思っていた。


それでも私自身は、そんな事に巻込まれて「斎藤さんって、ちょっと可愛いからって調子に乗ってるよね」なんてよくわから無い理由で、女子から疎まれるのなんて真っ平御免なので、出来るだけ目立た無い様に過ごしていた。

それでも、人の多い場所にいると男子も女子も寄ってくるし、直ぐにトラブルが起こってしまう。

だから、そんな私の出没ポイントは、主に図書室。煩わしい人達との接触を避ける為、私は図書室で本を読むか勉強をするか、という生活を主に送っていた。

1人でいるのが、一番気楽なんだよね。友達なんて、めんどくさくて作る気にもなれなかった。

だって、自分の好きな男子が私に構うからって、「友達だと思ってたのに!うらぎりもの!!」なんて、平気で言ってくるのが女子でしょ?そんなのと、友達づきあいするのって凄くめんどくさいじゃない。

それなら、誰にでも笑顔で対応して、一定距離以上は近付かない方がよっぽど楽だよ。そうしていれば、“人当りが良い”なんて、勝手に解釈してくれるわけだし……ね?

そんな私だから、学業成績は優秀、その上人当りが良くて周囲に嫌われることがない。見た目も美少女と呼ばれるもので、人からーー主に男性ーーから好かれる体質。


ほら。こんなテンプレヒロイン、探しても中々見つから無いでしょ?


なので、父から星陵学園の外部入試を受ける様に命令された時も、「リアル乙女ゲームだよ、おい」なんて人ごとの様に楽しんでいた。


星陵学園ってお金持ちが通う学校だから、許嫁持ちの生徒も多くいるんだろうな。

って事は……えっと。

もしかして、攻略対象っぽい生徒に婚約者がいたら、私ってば略奪しなきゃいけないのかしら?

……めんどくさっ!

でも……、少女マンガみたいだし、見てるだけならかなり楽しそうだよねぇ。


まぁ、例えこの世が乙女ゲームの世界であろうが、そうじゃなかろうが、“私”の本質は変わらない。私は、周囲に深くかかわるつもりはないし、一歩離れて周囲を観察して楽しむのだ。

もし、私がどうしてもゴタゴタに巻き込まれる運命だったのだとしても、そのスタンスだけは変える気がない。自分の運命・人生さえも楽しんでやる。


この頃、厨二病真っ盛りだった私は、“大きな運命を背負った自分”という設定に、どうしようもない程に酔いしれていた。




そして、実際学園に入学してみたら……。

笑えるくらいテンプレな攻略対象らしきキャラ達が生徒会に集まっていて、更には、生徒会長の婚約者と言われている女性は、絵に描いたような“悪役令嬢”で……。


「うはっwww 超受ける!」


と誰にも聞こえ無い様に呟いたのは、まだ記憶に新しい。

私ってば、彼女にいびられたりするのかな? 超、楽しみ! なんて考えていた。


でも、私の予想に反して、イベントらしき物は何も起こらないし、御崎 華憐との接触は全くない。したがって、彼女は私に何もして来ない。

さらには、攻略対象っぽい生徒会長は、どう見ても“悪役令嬢、御崎 華憐”を溺愛している様に見えるのだ。


そこで、私は次なる設定の可能性に気付いてしまったのだ。

そう、もう一つのテンプレ設定。


これってもしかして、ネットで王道の悪役令嬢転生ってやつじゃない?


って、事だ。

ネット小説なんか見てると、乙ゲー転生は“ヒロイン転生”よりも、“悪役令嬢転生”の方が需要が多い。その場合、悪役は私って事になるわけだ。


ちょっwww

じゃあ、私が御崎 華蓮を追い詰める為に、色々画策しなくちゃいけないの?

うわっ! メンドくさい!!


私は苛めて喜ぶ趣味も、苛められて喜ぶ趣味もない。

テンプレな悪役令嬢に見える“御崎 華憐”だけど、見た目は小学生位にしか見えないのだ。そんな子に意地悪する高校生とか……、どんな鬼畜だよ?

私がどれだけ乙ゲー転生の設定を妄想してるとしても、そんな事は絶対にしない。厨二を卒業する事になったとしても、絶対に! だ。


この日から、私は自分の中の厨学生との決別を始めたのだった。

そんなに簡単には卒業できない事はわかってたけど、これが大人への一歩なんだと思うんだよね……。




そして私は、何故か生徒会に入る事になった。

表向きの理由は、“学業が優秀だから”って事だったけど、私には解る。シナリオが動き出したんだよ、コレ!

「ゲームのシナリオですね、解ります」なんて思いながら生徒会室に向かったら、一年からは更に2人が生徒会の手伝いに選ばれていた。

1人は、悪役令嬢こと、御崎 華憐。もう一人は、五十嵐いがらし 公人きみと

もう、完璧シナリオが動いてるとしか思えないでしょ!?


私の中の厨学二年生が、大暴れしてる!

卒業の前に盗んだバイクで走り出して、夜の校舎窓ガラス壊してまわってるよ!


私が、厨二病の支配から卒業する日は、いつくるんだろうね?



で、生徒会。いや、御崎 華憐。


華憐ちゃんは(私の名前と彼女の氏が同じ呼びなので、私は彼女を頭の中でこう呼ぶ事にした)、近くで見ると、ホントにちんまりした気の強そうな美少女だった。

彼女の口から紡がれる言葉は、どれもマンガのように高飛車な物ばかり。純正ツン100%!

デレは? デレは何処に置いてきたの? 華憐ちゃん!?


でもここまでくると、その見た目も相まって『怖い』とか『腹立たしい』なんて感情は不思議と起こらなかった。まるで、TVでも見ている様な気分で、華憐ちゃんのツンツンを楽しんじゃってる私がいる。

だって、小型犬が一生懸命「キャンキャン」吠えてるみたいで、可愛いと思っちゃったんだよね。


それに、華憐ちゃんより、五十嵐君の方がよっぽどクセが強そうだと思うんだよ。

いつでも無表情で何を考えてるか全然解らない。だけど時々、華憐ちゃんに向ける視線が何だか凄く気になるんだよねぇ。会長も私と同じ事を感じているのか、五十嵐君がそんな視線を華憐ちゃんに向けた時は、あっという間に自分の手元に華憐ちゃん引き寄せていた。そして、華憐ちゃんの所有権をアピールするように、抱きしめたり膝に乗せたりしていた。


会長って、生徒たちからは“イケメンで優秀、パーフェクトな男”なんて言われてるけど、そこはかとなくポンコツ臭が漂ってる気がするんだよねぇ……。




そんな風に、ソツなく生徒会で過ごしていたあの日。私は“運命”と言うものを始めて感じた。



私は、子供の頃から大好きな物があった。

でもソレは、母の体質的な問題で、どんなに欲しくても手に入れる事が出来なかった。


小動物。特に齧歯類。


子供の頃に某谷のお姫様が飼っていた“キツネリス”が、私の小動物愛に火をつけたキッカケだった。

なので、私が一番好きな小動物は、シマリス……。

あの落ち着きない動きや、あざとい仕草。私を萌え殺そうとしているに違いない、あの生き物。


華憐ちゃんは、そんなシマリスにソックリな小動物女子だったのだ。

頬袋一杯にチョコレートを詰めて、それでも更にチョコレートを口に入れようとしている姿とか。可愛すぎるでしょっ!

挙句の果てには、ウルウルお目目で眉を下げ、プルプル震えながら小首を傾げて「いじめる?」だよ!?


まんま、◯マリス君じゃない!

そりゃ、私達も声を揃えて突っ込むよ。だって、お約束だもんね?


生徒会長達ってば、こんな可愛い小動物を囲い込んでいたなんて……。

ずるいっ!

私だって、華憐ちゃんを可愛がりたいっ!!



こうなったら、女同士ってのを武器に、あんな事やこんな事をしてやるんだからね!

私の中の厨学二年生を舐めるなよ!?

私ってば、影響されすぎ!!


ニヤニヤ……。

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