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10 街に出よう

遅刻しました!

そんな訳で日曜日。


「華憐、そろそろ起きる時間だぞ? 取り敢えず、着替えだけでも綾香さん(メイド)にさせて貰えよ」

「やっぱり思ってた通り、起きられなかったね」


華憐は、朝8時に誠に起こして貰い、半分夢の中な状態のまま、メイドに出掛ける用意を整えて貰った。

そんな華憐を見てクスクスと笑いながら、澄人が「予想通りだよ」なんて言っている。


「この状態では、とても朝食など食べられそうにありませんね……。おにぎりを用意しておくので、食べられそうな時に食べさせてあげて下さい」


朝食を食べる様なコンディションにはなっていない為、いつも朝食が食べられなかった通学の時にしているのと同じ様に、車の中で食べられる物を篠崎料理人が用意してくれる。

こんな時の為に、篠崎料理人はいつも持ち運びしやすい軽食を用意してくれる。ホントに良く出来た、気のきく人物なのだ。


普段はもう少し寝起きの良い華憐。

その華憐が、本日起きられなかった理由、それは……。


何時もは夜9時にはベッドに入る華憐なのだが、休みの前日だけは11時頃まで起きている事が多い。

その理由は様々なのだが、一番多いのはTVでアニメやディズニー映画を放映する時だろうか……。

昨夜も、大好きな工場見学の映画がやっていたので、ついつい夜更かしして見てしまったのだ。完全ノーカットだった為、映画が終わったのは11時30分。それから寝る準備を整えてベッドに入ったら、もう夜中の0時を過ぎていた……。

そんな訳で、9時間は睡眠が必要な華憐は今朝、中々ベッドから出る事が出来なかったのである。


澄人はチョコレートな映画が、土曜日の夜に放映される事を知っていた為、金曜日に『起きれるのか』と問うたのだった……。

そして、兄の予想通り。案の定、華憐は起きる事が出来ず、1人では外出の準備も行えないありさま。


だが、こうなる事も全てが想定内であった澄人と誠にとって、この程度の事は問題にもならない。

ウトウトしている華憐を、安定の子供抱っこで抱きあげて、さっさと車に乗せてしまう。華憐の家から美咲の家までは、1時間ほどかかる。

そして、他のメンバーと待ち合わせしているのは、11時。

現在が9時なので、朝食を食べないのであれば車の中で2時間は眠れる計算だ。待ち合わせて直ぐに、昼ごはんを食べれば良いのだが、それだと小さな華憐は低血糖を起こしかねない。

なので、華憐が本気で寝入ってしまう前に、誠と澄人は篠崎料理人が用意してくれた小さなおにぎりを、半分寝たままの状態である華憐に何とか食べさせておく事にした。

これで昼までのエネルギー補給は出来る筈だ。


朝食を食べさせた後、誠は華憐に膝枕をして髪を撫でてやる。

その動作にウットリとした表情を浮かべ、あっという間にスヤスヤと寝てしまう華憐。

助手席ではそんな華憐の様子を、フロントミラー越しに愛おしそうな眼差しで、澄人が見つめていた。

そして、美咲の家に着いてからは、華憐に注がれる愛情に満ちた危険な視線が、1つ追加されるのだ。


「おはようございます、華憐さん! ……って、あら……。寝ているんですか? もしかして、具合が悪いとか?」

「いや。昨夜は、工場見学の映画が放映されただろ? アレを最後まで見てたせいで、今朝は睡眠時間が足りていないんだ」

「DVDもBDも家にはあるっていうのに、『今見なきゃいけないの!』って言って、聞かなくてね」


後部座席で誠に膝枕されている華憐を見て、美咲は心配そうに眉を寄せたのだが、誠と澄人の話を聞いて、安心したように頬笑み、華憐の寝顔を眺め始めた。


「可愛いでしょ? 華憐の寝顔……」

「こればっかりは、外では見れないレアものだぞ?」


ウットリと華憐の寝顔を見ている美咲に、誠と澄人がドヤ顔で声を掛ける。その声色には、優越感が窺える。


「ええ……。この寝顔だけで、ご飯が3杯は食べれそうですよね……。この顔をいつも見られるお二人が羨ましいです」


美咲は、華憐バカの一員として、素直に2人を尊敬し羨ましいと思った。


自分も華憐の幼馴染として産まれたかった!

しかし、自分はここからなのだ! これから親友の座を勝ち取って、華憐の横に常に寄り添う存在となるのだ!!


そんな決意を胸に、美咲は華憐の寝顔を眺めながら、今日の買い物に思いを馳せるのだった……。



他の生徒会メンバーとの待ち合わせ場所に到着する頃、やっと華憐の目はしっかりと覚めて来たようで、フラフラとはしているが、1人で座る事が出来る様になった。

そんな華憐に、お茶を飲ませたりチョコレートを口に入れてあげたりと、誠はそこいらに居る母親も真っ青な程の過保護ぶりを見せる。

華憐もそんな誠の過保護なお世話を、ウトウトポヤポヤした状態で受け入れ、丁度待ち合わせ場所に到着した所で、しっかり目を覚ました。


「おはよぉっ! 華憐ちゃん」

「昨夜は、チョコレートの映画を放映してたから、寝不足なんじゃない?」


華憐が車から降りるなり、海斗と陸斗が親しげに声を掛けてくる。


「おはよう! 歩くのが辛くなったら、誠に抱っこして貰うんだよ?」


新は、まだ少しフラフラしている華憐を心配して、誠をこき使う様にと提案している。


「お、おはよう、御崎。凄く寝むそうだけど、大丈夫なのか?」


公人は、無愛想にならないように引き攣った笑顔を浮かべていた。


「おはよう、華憐ちゃん。今日は宜しくね?」

「おはよう。俺達も、体力には自信があるから。疲れたら、何時でも抱っこしてあげるからね?」


勇と稔は、まだ誠のポンコツさ具合をきちんと理解していないので、とんでもない地雷発言をブチかましてくる。


「おはようございます、皆さま。今日は1日、宜しくお願いしますね?」


そんな彼らに向けて、華憐はまだ寝ぼけが残った表情で、ポヤポヤと高慢が混ざった様な状態で言葉を発する。

その様子がまた可愛らしくて、澄人はニコニコと微笑み、美咲は静かに鼻を抑えて顔をそらし、誠はデレデレと締りのない顔をさらす。

生徒会の面々も、誠ほどでは無くても締りのない顔で、嬉しそうに華憐を見つめていた。


周囲から見れば、イケメンを8名も侍らせる美少女と美幼女に見える。だがその実態は、1人の幼女の見た目と心を持つ15歳の少女に、骨抜きにされてしまったポンコツ集団なのだ。

そんなポンコツ戦隊は、まともに朝食を食べていない華憐の為、早速、華憐好みの店をそれぞれが検索し始めたのだった……。


この場で決定権を持っているのは華憐。

その彼女に喜んで貰う為、それぞれ事前調査もしてきている。


検索結果をスマホの画面に映して、必死にプレゼンを行う9人。

その中から華憐が選んだのは……。

澄人プレゼンツのおしゃれなカフェ。選定理由は、安定のチョコレートだったのだという……。

何故だ?

買い物が始まらない……orz

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