プロローグ
プロローグと1話目は説明回になります。
私立星陵学園。
ここは、日本の政財界の上層部に君臨する家の子息・令嬢が多く通う学校である。一般家庭の子供も通ってはいるが、『飛びぬけた学力がある』や『スポーツにおいて、秀でた才能を有する』等、何かしら“普通”とは違う才能を持っているのだ。
この学校は初等部から大学部まで、一環教育が行われており、入学してしまえば、特段問題を生じない限りはエスカレーターで進学できる様になっていた。勿論、途中からの編入や、外部入学も受け入れられており、その狭き門を突破できるのは、それだけである種のステータスとなる。
紳士・淑女の教育も徹底されており、この学校を卒業すれば、上流社会で恥ずかしくないマナーや立ち居振る舞いを身につける事が出来た。
なので、この学園の生徒は皆、気品を感じる動作で学園生活を過ごし、問題など何もない学園に見える。
表向きは……。
表向いては何も問題が見えないと言う事は、裏を返せば問題が起こっても巧妙に隠蔽されていると言う事でもある。学園として隠蔽されているのでは無く、学生たちによって表向きな問題とならない様にされているのだ。
上流階級の子息や令嬢が多いこの学園、金の力を使う事は当然、幼少からの教育で身につけた権謀術数を遺憾なく発揮して、敵を排除する。これは、年を重ねるほどに巧妙になり、高等部においてはもはや、魑魅魍魎が跋扈しているのではないかと思うほどだった。
マンガなどで良く見る、“金持ちの高飛車な苛め”等が見られるのは、初等部までである。
小さな小競り合いは時々見られるが、明らかな苛めや嫌がらせは見られない。それが一番怖い所だが……。
まぁ、唯一の救いは、どうしょうも無い性悪は殆どいない事と、やり過ぎればそれなりの報復が待っている為、あまり過激な事が起こらないという事だろうか。
更に言えば、学園に長く務める教師たちもまた、化け狐や狸ばかりで、あまりに酷い企みは事前に潰されたり、逆に制裁で学園を追放されてしまうと言う事が多い。
こんなある意味恐ろしく管理されている学園だが、毎年入学式の後だけは暫く荒れる。それは、外部入学の生徒たちが、学園の恐ろしさを知らずに暴れるから。
我儘丸出しで、何の捻りもない小学生の様な自己顕示欲を振り回す子息・令嬢が、毎年一定数存在するのだ。そんな者たちは、『出る杭は打たれる』とばかりに数カ月の間に酷い目に会い、大人しくなる。悪くすれば、学園を去っていく。
こうして、学園の表向きな平和は保たれているのだった。
こんな学園に置いて、現在最も影響力と実力を持っている集団。それが生徒会だった。
元々生徒会の影響力は大きかったが、今年の生徒会は更に凄い。
3年生を押しのけて、主要メンバーの全てが2年生で構成されている事が1つ。
そして、そのメンバーが錚々たる人物なのが、理由の2つ目。
会長には龍崎 誠、副会長に御崎 澄人、書記は天前寺 新、会計には観道 海斗と陸斗。
どの家も財界の大物や、政界の大物という、誰も迂闊に手が出せない上に、“魑魅魍魎”としても上位に位置する様な人物ばかりなのだ。
この生徒会が機能している間は、どんな小さな問題も起こらないだろう。
そう学生たちに噂されている程、彼らの実力と人気は凄まじかった。
だが、こんな予想は、今年の外部入学生によって、あっという間に覆されてしまったのだった……。