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急な仕様変更

日付はやや飛ぶ。

「オープンβですか?」

「そうだ。プログラムも問題なく稼働しているし、バグも見つからない。

 ただハラコはバランス調整に向いていないというか……性能についての調整が遅れているんだ。」

「それはハラコのプログラム作成が速すぎるだけでは??」

「………そうとも言う。」

そう言ってその男は、ため息をつく。

「……彼女が悪いわけではないのだがな……とりあえず彼女にはサポートツールを幾つか作ってもらっている。」

「オープンβとなると、テストプレイヤーが必須になりますが……。」

「うむ、それについては幾つかの地域でテストプレイヤーを募っている最中だが……。」

そう言ってパラパラと応募票を見せる。

「…300人の募集に対して350人ですか……。」

「そうだ。まあ、こんな始めて見る会社のソフトににしてはよく応募してくれたと思うよ。」

「………日本やヨーロッパからもプレイヤーを募るのですね。」

「ああ。流石にアメリカだけだと宣伝として弱いからね。」

そう言ってその男は資料を見る。

「……しかしもう一つの地球か……。」

≪ハーフガイア・プロジェクト≫と書かれた資料を見ながらその男はつぶやく。

「良いんですか? 我々の地球とそっくりの世界ってのは。 国境問題とかどうするつもりです?」

「………作る都市とかは経済の中心部をメインに。そういう国境問題が起きている所は問題が起きていたせいで『作らない』方針らしいな。」

「……何とも安直な……」

とはいえ、そのあたりを作るとなると、問題が発生するのは目に見えている。

話ている男もそのあたりの事は理解していたし、その実、問題視しないという事がこの世界においてかなりの有効的手段だという事は理解していたからだ。


カタカタとパソコンのキーボードの音が鳴り響き、その様子を淡々と黒髪の女性が覗き込む。

「……問題なく動いていますね。今の所埋め込んだバグ以外のバグは見つかっていません。」

そう言いながらハラコは疲れも見せずに報告をする。

バグを見つける為に、わざと数か所にバグを埋め込み、それを発見していくというのはバグの発見の方法としてはよくある方法だ。

「………ええとな。その言いづらい事なんだが………仕様が変わった。」

「え??」

その言葉にハラコの体が凍りつく。

「……なんでもな。サブ職業をさらに追加できるようにしてほしいという事なんだ。

 それも戦闘力を上げるようなサブ職業をな……。」

その言葉にハラコはバンっと机をたたく。

「いまさら遅いです! せめて3日前に言ってください!!そうすれば無駄にテストしなくて済んだのに………。」

あまりの勢いに上司が押される。

「これは決定事項なんだ……なんでも株主の息子さんが、生産だけなんてつまらないって言ってな……。」

「………わかりました。設定の変更を行います。」

ハラコはそう言いながら、あきらめたかのように言葉を紡ぐ。

「頼んだよー。」

無責任に上司はそう言うと、立ち去っていく。


カタカタとハラコはプログラムをうち続ける。

「……なあ、ハラコ怒ってる?」

「はい。」

只一言、そう言ってさらにプログラムを打ち込む。

「機嫌なおしてくれよ……ハラコがいないと絶対期限までにメインプログラムが完成しないんだからー。」

「今話しかけないでください。プログラムを作る時間が無くなります。」

「ありがとう! 終わったらバーベキューパーティーに誘うから、許してくれよ。」

「わかりました。これが完成したら、皆で食べましょう。」

そう言ってその男はさっさとハラコの元から去っていく。

そのままハラコはプログラムをうち続ける。

「……基本的にこの辺りのソースはNPC用のプログラムを流用すればOKよね。」

そう言ってハラコはさらにカタカタとパソコンをうち続ける。

「本来、NPCのステータスシステムを流用して……こうこうと……。

 あっ、勝手に動かないようにシステムを調整しないと。」

そう言って幾つかのプログラム文を消去する。

「……動作確認よし………。」


そして夜の11時……。

「完成」

そう言ってハラコはぐーーーーと背伸びをする。

「……確認は明日ね。」

そう言って、ハラコは開発室から立ち去る。


そして次の日、朝6時

「ええと実はハラコ君……仕様なんだけど……。」

「なんでしょうか?」

「サモナーを実装するから、この辺りの仕様をこの仕様書の通りに……。」

「わかりました。」

何一つ文句を言わずに仕様書を受け取ると、そのまま一気にプログラムをうち始めるハラコ。

「ねえ、ハラコちゃん怒ってる??」

「………はい」

「………頼むからストライキなんかしないでくれよ……。」

「それはわかっています。」

こんな感じで、開発の日々は過ぎていくのであった……。


βテストが開始されてなお、ハラコの仕事は終わらなかった。

バグチェックこそ上がってこなかったものの、仕様追加が次々と起こる事により、彼女のやるべきことはどんどんと増えていった。


最終的には追加用のプログラムについてもほぼ全ての作業を行う事になったので、彼女の労働12番目の拡張パック<ノウアスフィアの拡張>が発売される20年近く働くことになる。

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