会議
『……ではその件に関しては、賛成をお願いします。』
『こちらとしても資金援助は助かります。というか、良いんですか?
幻想級アイテムをこちらのサーバにおいて。』
『ええ、うちの地域にこもっている連中を外に出す丁度いい機会ですよ。』
≪エルダー・テイル≫を運営し続ける会社は13社。それぞれが特徴を持ちつつも、個々の社員の存在や、商売としての立場から様々な束縛が存在するのだ。
『………では、この通りに。』
『わかりました。』
アタルヴァ社 中央会議室
12個のモニターとカメラがあり、その中央にアタルヴァ社の社長がいた。
『これより、次の拡張パックの話を始める。』
そういって社長が話を始めた。
『しかし世界中で大人気とは厄介なものですな。拡張パック1つ作るのにこう13人も社長が集まる必要がある。』
『仕方あるまい。1社が先走って、厄介事を巻き起こすよりはな。』
そう言って一つのモニターから皮肉が走る。
『バレンタインデーの件はすまなかった。まさか同じ日に別の記念日があるとは知らなかったのでな。』
『…部下の手綱を握るのも上に立つ奴の役目だぞ。』
皮肉を別の人間からフォローされてか毒気が抜けたように声が響く。
『……話をつづけるぞ。次の拡張パックであるが、レベル上限を100まで上昇させることが決定した。』
アタルヴァ社社長の宣言に一同が騒ぎ出す。
『これは、サブ職業におけるレベル100のバランス調整が終わったからだ。』
<エルダー・テイル>には100を超えるサブ職業が存在する。それら全てにおいてある程度のバランス調整が終わったから拡張パックを出すと、アタルヴァ社社長は宣言したのだ。
『100以上存在したからバランス調整に時間を要したが、ある程度めどが立った。』
そう言いながらも頭を抱えるアタルヴァ社社長。
『さて、今回は少々特殊な敵を用意した。』
『特殊ですか?』
『うむ、ゲームシステムの一部に直接干渉ができるモンスターだ。
一部のNPCの動きを止める、擬似的な会話システムを搭載しているなど、少々別の領域からの干渉を始めている。
シリーズ名はゲニウス……それとも日本語風にジーニアスと言った方が良いかな?』
『ゲームシステムに干渉ですか?』
『そうだ。それぞれの国での表記は任せる。少々特殊な名前を付けてもかまわないぞ。』
そう言いながらアタルヴァ社社長は言葉を一回止める。
『さて、ここで皆に重要なお知らせがある。』
『……何でしょう?』
『アルブ関連の設定についてだ。』
そこで全員が言葉に詰まる。
『その実アルブ関連の設定は、各サーバで隔たりが色々と多いんだ。『六傾姫』や『時逆王』とかな。』
『『時逆王?』』
『かつての栄光を取り戻すために時間を巻き戻して世界の再構成を企むアルブの王の設定だ。』
『あまり知られていませんな。』
『時期が悪かったんだ。中国サーバが六傾姫の設定を大々的に打ち出したんだが……。
その前にシナリオの隠しデータでそう言うのがあったんだよ。
アタルヴァ社社長が直々に考えたシナリオがな……幸い、六傾姫の設定が出た後、直ちにクエストを停止させたら問題は出なかったんだが……。』
フォローを行いつつも一同が会議を続ける。
『さて今回のエンドコンテンツは……ちょっと特殊なクエスト形式で行う。』
『特殊……ですか?』
『ああ、今回のエンドコンテンツはテストサーバで行う。』
『テストサーバでですか?』
『その通りだ。今回はかなり大きなギミックをやろうと思っているからな。』
そう言いながらアタルヴァ社社長は自信満々に答える。
『アルブの設定については、次の拡張パックでは扱わずに、ユニットデータだけをテストサーバに送ってほしい。
こちらで色々と調整をしてからアルブ関連はまとめて発表する。』
そう言いながら次々と意見をまとめていく。
『そして、次の拡張パックのタイトルは?』
『それはきちんと決まっている≪ノウアスフィアの開墾≫だ。』
次回 最終回




