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終焉の魔獣 その1

今回、かなり俺TUEEEEE要素を含めます。ご注意ください。

東欧サーバのメンバーと意気投合してたかや達は、テストサーバのダンジョンに入る。

『ラスボス狙いですか?』

『ええ、さすがにあの報酬を見せられたら、やってみたくなるの人情ではないですか。』

『でも幻想級は維持に手間取りそうですよ。』

『それだけの価値はありますよ。』

高い装備は高い維持費を必要とすると事で、ある程度のゲームバランスを取っていた。

幻想級ともなれば、アイテムの維持だけでそれこそ他の報酬を捨てる必要があるぐらいだ。


『ですが、現在ラスボスにかなりの数が挑戦してますけど、まだ誰も成功していないって変じゃないですか?』

『まあ、このルールだと即席レイドチームしか作れないならね。そんなものでクリアできたら誰も苦労はしないよ。』

『……そういうもんなのですか?』

『そういうもんなんです。』

子原の言葉に他のメンバーが返事する。

やがて一同はダンジョンの奥にたどり着いた。

『ここまでは結構楽でしたね。』

『さて……地獄はここからだ。』

転移装置の前に立ち、6人は転移を行う。

〔規定のパーティー数が揃いました。直ちにラスボス戦を始めます〕

その言葉とともに周りに別の3つのパーティーが現れる。

『ええと、あっちは、イギリスの第14騎士団をメインとしてるな。あっちはアフリカサーバのメンバーか……。あっちは……ゲ。』

たかやはやや露骨に嫌な顔をする。

『どんなメンバーなの?』

『各国の中でも嫌われ者の集まりって感じの奴らばっかりですね。PK、詐欺、盗人、クエスト妨害………なんだってやるような奴らの集まりです。』

おそらくなんらかの形で意気投合したのだろう。と付け加えながら、たかやは説明を行う。

『ラスボスの画像がえらく簡単なんだけど……。』

真っ黒な円柱だけでできたドラゴンのようなアバターを見ながらドラゴンナックルはツッコミを入れる。

『テスト用モンスターにそんなに力を入れるやつはいないって。』

『画像解析度増やすとサーバの負荷が上がるのよね……。』

子原がしみじみに言う。

そう言いながらもたかやはパーティーメンバーにいつでも回復魔法をかけられるように準備を行う。

ポリゴンのドラゴンが衝撃波のエフェクトを放ちながら第14騎士団の方へと向かう。

『ダメージはそれほどでもない、2発目の準備をしているから速度重視の範囲攻撃。

追加効果は無し……牽制か……。』

『じゃない、1パーティーが全滅してる!』

『俺たちが蘇生します。抑えていてください!』

たかやは他のメンバーにそう言って、ラスボスを第14騎士団に任せると、倒された奴らのフォローに向かう。

『あいつらにはひどい目にあわされたこともあっけどさ!!』

そう言いながらも、フォローを怠らない他のメンバー達。

蘇生魔法が発動し、前衛戦士職である守護戦士がHPを満タンにして立ち上がる。

その瞬間に2度目の衝撃波が彼らを襲う。

『HP全快の守護戦士を一撃で倒す範囲攻撃を連発だって?』

それはゲームバランス的にあり得ない事態だ。範囲攻撃は単体攻撃よりも攻撃力が低いのが普通で、連発できるのならさらに攻撃力が減るのが普通だからだ。

しかも……。

『俺たちはそれほどダメージを受けていないぜ。相性とかなんかそういうのがあったんじゃないのか?』

『そうか、PKメインだから、神聖属性無視してたからか?』

『やってねえよ。装備はバランス型だから、相性のせいはないよ。』

ぶっ倒されたPKギルドの面々が倒れたままツッコミを入れる。

『……かやー、子原さんに回復魔法お願い!』

『わかった、すまん、ダメージ理由がわからんから、復活は諦めてくれ!』

『どちくしょー。クリアしたら報酬くれよ。』

倒された相手のその言葉を聞きながら、かやは回復魔法をかける。

『子原さんは、バフをかけてください。』

『わかったわ……。』

次々と攻撃をしていくのだが、さすがはラスボス。簡単には倒せない。

『顔の色が変わった!!』

しばらくしたら顔の色が黒色から青色に変化する。

次の瞬間、顔から青いブレス状の何かが第14騎士団の面々に襲い掛かる。

『ダメージがでかい!、ドラゴンナックル、俺たちが出るぞ!!』

『わかったわ!!』

大ダメージを受けた第14騎士団が後ろに下がり、ドラゴンナックルとかやが前線に立ち、他の4人がそれをフォローする立場に入る。

ガシガシガシガシガシとドラゴンナックルの連続攻撃がドラゴンに入ってくる。

かやはすぐにフォローできるように、ドラゴンナックルの近くにいる。ブレスの範囲に巻き込まれないように、それでいてすぐに魔法をかけられるぎりぎりの範囲だ。

『……って距離ピッタリすぎじゃない?』

メンバーの一人がそう言ってツッコミを入れる。

『こいつの動きならしっかりわかりますよ。』

そういってかやは回復魔法のフォローを行う。

『下がれ、MPが足りなくなってきた!』

『こちらと変われ!』


次々と交代しながら、攻撃していくが本来4つのパーティー……否、24名のチームで戦うべき相手なのだ。

分析をしながら、18人は戦ったのだが、結局は倒すことができずにかや達は全滅したのであった。

『なんなんだよあのモンスター! 攻撃力が異常だぜ。』

そう言いながら、攻略チーム達は、幾つかの仮説を立て合う。


体の色が変わるのは、能力が変わっているのではないかという仮説が立てられてそれに合わせて幾つかの仮説を次々と検証しながら、攻略方を突き詰めていく。


『アインスさん、よくここまで情報を集められましたね。』

『ほとんど、検証数を増やしただけですけどね。』


そう言いながらも、メンバー達は幾つかの仮説をたてていく。


『頭の色が赤は、おそらく『隠れる』という行為に対してのヘイト減少が無効化されているのだと思います。』

『回復役がヘイト下げようと魔法使っても意味がねえってわけか。この辺りはえげつねえな。』

『青は広範囲の冷気属性ブレス。バステは鈍足。あまり気にする必要はありませんね。』

『他の部位からの攻撃もあるが、発射までが遅いんだよ。あれ。』

『緑は、おそらくダメージの軽減。おそらくすべての攻撃に対して500ポイントの軽減でしょうね。』

『でかい攻撃を当てねえとダメージが通らねえってのは、色々ときついな。』

『ですが、守護戦士にヘイトを集めやすいのはメリットですね。』

『……そして黒は……現在不明です。』

そう、攻略が進む中で、幾つかの解明されていない能力が存在したのだった。

ドラゴンの頭の色で能力が変わることはわかっていたのだが、その能力の中で黒だけが仮説すら立てられていない状態だった。

わかってることは1つ。頭が黒の時にはプレイヤーへのダメージが0.7倍〜10倍と恐ろしいレベルで変化していることだ。

『装備差異、ステータス、相性の、全てのパターンを検証してみましたが、プレイヤーごとの相関は見つかりましたけど、それ以外の相関は見つかりませんでした。』

『プレイヤーごとの相関だ?』

『はい、大ダメージを受けたプレイヤーは次の挑戦の時も大ダメージを受け続けるという検証結果は出てますが、それ以外は不明です。』

アインスがそう言って、URLを示す。

『……つまり、プレイヤー毎のなんらかの設定差異が、ダメージに影響を及ぼしてるって訳か?』

『だとすると、 一体なんだというのです?』

個々のプレイヤーにダメージ差異があるとして、それにはなんらかの基準があるはずだ。

MMOにおいて公平性というのは、きちんとしなければならない。

装備やスキルが同じならば基本的には、同じダメージでなくてはならない。

それはゲームをやる上での絶対条件だ。それを打ち破る黒い頭には絶望しかない。

『黒い頭は、ナメプって言ってる人もいますけど?』

『そいつは、まだ、仲間が倒されたことのない奴だな。いきなり連続範囲攻撃で、1パーティーが壊滅したのならシャレにならんぞ。』

『かなりの人数がそう言ってますけど?』

『アタッカーがいきなり全滅して、フォローできずにそのまま殴り殺されるってのもあるな。』

そう言いながらも、彼らは頭を抱えた。

アタルヴァ社本社。

会議室の中で幹部達が話し合っていた。

『……黒の頭について、抗議の声が上がっていますな。』

『ああ、想定済みだ。今はまだ公開しなくていい。あれは『抑止力』だ。

 自分の行動を振り返り、考察すればほとんどすぐにでもわかる事だ。』

『他の頭に関しては、かなり攻略が進んでいるといわれますが?』

『ああ、まさか赤の頭のスキルをこうも早く見切るとは……シロエ君だっけ?』

『はい、かなり早い段階で赤の頭正体を見切ったようですね。』

『……なるほどな、まあ赤の能力はわかりやすいからな、だがこの段階で見切るとは私の想定外だよ。』

『所詮黒以外は攻略されるための能力。』

『黒の頭の能力を知った時、彼らは何を考えるのかな?』

『……黒の頭、攻略不可能にして攻略する必要のないシステム。』

『かの力がもたらすのは平穏か、混乱か……。』

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