テストサーバ
今回色々とツッコミが入ると思いますが、最後まで読んでいただければ幸いです。
「大規模テスト?」
貴也はそう言って、父の言葉に返事をした。
「そうだ、今度翻訳システムなどの調整なども兼ねて、ハワイサーバの改良を行う事にした。
その為のテストプレイヤーが、少々多めに必要でな。」
「それで、参加してという事ですか?」
「ああ、細かな報告書とかも書かなきゃいけないなら、色々大変だが、小遣いぐらいは出すぞ。」
「ええと、その時期は特に何も予定入っていませんし、別に問題はありませんけど…。」
そう言いながらも貴也は今後のスケジュールなども考えながら、そのテストサーバに協力する事になった。
そのテストサーバは、現実世界において、ハワイが存在する地域を模すことになった。
『うわっ、かなりの人だかりじゃ無い。』
『まあ、今回はテストへの協力という事だからドロップいいしな……。
というか、幻想級素材の確保の為にやってきている人たちが大半だろうがな。」
素材アイテムの中で、幻想級素材の確保は難しい。
レイド1ランクのモンスターの低確率ドロップかレイド3ランク以上のドロップ、あるいは課金しての素材入手ぐらいしか手段は無い。
『パーティーランクで幻想級素材の入手が可能なのは、こういったイベントに頼るしか無いんだが…。』
『そもそも、パーティーが組めてい無い人達が結構いますね。』
今回のテストサーバの冒険は、翻訳システムのテストの為に、幾つかの制限が存在した。
・メインダンジョンに入るには、2サーバ以上の出身の冒険者が必要である。
・ラスボスに挑むにはバラバラに侵入した4つのパーティーが必要。
・ラスボスの詳細は不明。ハワイに関するモンスターではないとの事。
『ねえ、かや、翻訳機能どんどん賢くなってない??』
そう言ってドラゴンナックルは、隣で休んでいるかやに声をかけてくる。
『ああ、明らかに翻訳の精度が上がっている。ただやっぱり変な会話が混ざったりするな。』
『……ていうか回り結構すごい装備ばっかりの人達だし、私達場違いじゃない?』
『そりゃ、クリア報酬が本来なら課金アイテムの《幻想の混沌鏡》が6つだからな。』
『他にも報酬あるけど。』
『あれに比べらたら、価値はずっと下だしな。』
『確かに。』
《幻想の混沌鏡》それは課金アイテムとして、とある事情から作成されたアイテムである。
課金ガチャ。それはお金を支払ってランダムなアイテムと引き換えるのだが、この時幻想級アイテムがごくごく稀に手に入ることがある。
しかし、しかしである。
装備は所詮装備、ジョブと装備のミスマッチングが何回か起きたのである。
その抗議に対しての答えが《幻想の混沌鏡》だ。
このアイテムは使い捨てのアイテムで使用することで12種類の幻想級装備が表示され、選択されたアイテムに変化するというものだ。
これにより、自分が欲しい職業のアイテムを選ぶことができるようになったのである。
なお下位互換アイテムに秘宝級装備に変化する《秘宝の混沌鏡》が存在する。こちらはわりと入手しやすく、
『……ドラゴンナックルさん、かやさん、お久しぶりです。』
会話を続ける、二人の横から声がかけられる。
『…子原さん、お久しぶりです。どうしてここに?』
『……ちょっと即時翻訳システムの事が(仕事上の都合で)気になりまして。』
『なるほど、こんなシステムだったらそれだけで(個人的に)気になりますよね。』
『確かに、世界でも例を見ないシステムですからね(これで英語の授業から解放される意味で)気になりますよね。』
微妙にずれた感覚のまま、そのまま会話に入る3人。
『……子原さんは、あれ?アメリカサーバですか?』
『ええ、ちょっと仕事の都合で移籍したからその都合でね。』
『……海外サーバへの移籍って、結構いろいろと手間がかかるって聞きましたけど?』
『まあ、会社規約とかあるけど、できないわけじゃないですし。』
『あっ、って事は子原さんと私達で後1サーバのメンバーを集めればダンジョンに入れるわけですよね?』
『そうなるけど、子原さん時間とかは大丈夫ですか?』
『大丈夫……だと思うけど、結構不自然に入る時があるからね……。』
『まあ、そん時はそん時でフォローはしますよ。』
かやはそうって、メンバーに誘う。
『それじゃあ、お言葉に甘えて。』
『そうだ、子原さんは英語できますか?』
『ええできるわよ? 』
『なるべく英語で話して頂けませんか? (仕事的な意味で)自動翻訳の凄さを知りたいですし。』
『確かにそうね(個人的な理由で)興味を持つのは悪くないですし。わかったわ、今設定を変えるから…今変えたわ。』
『翻訳モードきちんと入っています。英語で聞こえますか?』
『ええ、聞こえているわ。』
『他にメンバーを集めて、テストダンジョンに入ってみますか?』
『そうですね、ただ話すだけというのもつまらないですし……。』
翻訳システムの進化、擬似人工知能による世界の管理………。
それらは、果てしない電脳空間の中で『何か』が蓄積されていった。
後に『共感子』と呼ばれることになる、それは誰にも管理されることなく少しずつ電子と共に世界に広がり始めていった。
それは少しずつ少しずつ少しずつテストサーバの中に蓄積され、やがてほんのひとかけらが電子の欠片から離れて虚空に漂っていった。
その虚空の彼方に飛んでいった『共感子』の欠片はやがて『何か』にぶつかり、消滅した。
だがその消滅した際の『何か』は『共感子』を感じて喜び震えた。
彼らは直ちに周囲の捜索に入った。その行動はやがて『大災害』『5月事件』『合致』という世界を揺るがす未曽有の事態を引き起こすのであるが、それらが起こることをまだ誰も(多分)知らない。
多分みなさん、最後のシーンにツッコミがあるでしょうけど、色々と言い訳を。
『典災』と『航海種』をこのタイミングで出したのは理由があります。
ぶっちゃけると、最終話でいきなり出して彼らがやったことを書くと、
『アタルヴァ社が管理しているコンピューターにいきなり外からハッキング仕掛けて、顧客の大事なデータ(テストサーバに保管されていた予備ボディ)とゲームキャラ(典災)を勝手にのっとって好き放題してる連中』
になってしまうからなんです。
そのあたりのフォローも考えてこのタイミングで出しました。




