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永遠の歌姫

今回、犬塚惇平氏の『ヤマトの国の大地人』の設定を一部使用しております。

アタルヴァ社プログラム室。

本社に戻ってきた原子に待っていたのは凄まじい無茶振りであった。

「寝るんだ原子! もう1週間も休んでないだろう!!」

「……私が寝たらみんなが(過労死で)死んじゃう……。」

「落ち着けッ、そのセリフは色々とヤバいっ! というか、お前が先に(過労死で)死ぬッ!!」

彼女達が現在作っているのは、リアルタイム音声翻訳プログラムだ。

<エルダー・テイル>の売りにする予定なのだが、その実、翻訳システムの基礎部分の構成は難航していた。

それこそ、複数の形式の言語を翻訳するという前人未到の領域に一同全員がそのリソースつぎ込んでいた。

運営はどーしてるんだと思うのだろうが、管理システムである『A』が非常に優秀なため、緊急性を要する仕事がなければ、

「というか、遊びにそこまで取り込むなっ!」

「私にとって(仕事という意味で)<エルダー・テイル>は遊びじゃないのよ……。」

「……それは俺達もだ!」

「……とりあえず基本部分はできたから、テストお願い………。」

そう言いながら原子はよろよろと仮眠室へと入っていく。


残された彼らはパソコンの前で何個かの言葉をしゃべる。

「………このレベルの翻訳速度なら、一応使えないことはないが……。」

「……問題は音声合成か。」

「翻訳に関しても、少々チンプンカンプンなところもあるな。」

「間違えた場合は、エラーを入力して設定を変更すればいいらしいな。」

カタカタと彼らはデータベースをいじっていく。

「…………」

「音声合成はやっぱり上手くいかないのか?」

「……ああ、となると<F.O.E.>の交渉次第か……。」

この交渉に関しては、アタルヴァ社はかなりの大きい権限を<F.O.E.>に与えている。

この交渉の成否が<エルダー・テイル>の成否を分けることになる……。

彼らはそう理解していた。



日本・静岡……。

「コラボの方はどうなっている?」

良馬はそう言って北海道にいる部下に電話をかける。

「向こうは結構乗り気みたいですね……あとは向こうの要望をどれだけ聞けるかですね。」

「頼むぞ、そっちの交渉の成否がこちらにも影響してくるんだからな。」


時間は飛んで2か月後……。水原家。

「………ねえ、父さん。本当に交渉成功したの?」

「ああ、それがどうした??」

「……だってさ、これって明らかに向こうに押し切られた感じじゃないですか?」

「しょうがないだろう。世界中に宣伝するのにちょうどいいって事で、向こうが言ってきたんだからな。」

「アタルヴァ社の方は怒っていないんですか?」

貴也はそう言って父親の方を見る。

「技術協力には成功した。それ以上の問題はない。」

貴也はそこにある広告を見た。

<エルダー・テイル>の小型アップデートのお知らせだ。

そこには新たな<古来種>登場のお知らせが大々的に載っていた。

「………お祭りの内容を知っているって、不公平ですよね。主に知っている方が。」

「……知っている側は知っているということで知らない人間を盛り上げなければならない。それはとても大変なことだ。」

良馬はそう言って貴也を戒めた。


<エルダー・テイル>ゲーム内。

『新たな<古来種>MAJIDE??』

『アップデートの告知から考えて間違いないでしょうね。』

『場所はどこだ?』

『……現実では静岡あたりですね……一体何があるんでしょう。』


そしてアップデートの日になった。

そこには明るい緑色のツインテールの女性が現れた。

『こんにちわー!』

≪××××≫はそう言いながら、集まった冒険者に挨拶を行った。

恐らく世界中の冒険者たちの目が点になったのだろう。

『やっちまったなあ…………。』

『フシミィ……………。』

『彼女ということは、吟遊詩人の強化が入るのか。』

『お前気にしてるのそっちかよ!!』

『……というか、情報をここまで隠せたな………。』


彼女はそれこそ最大級の扱いを受けてこの世界に降臨した。

ヤマトの大地全てに移動できる権利と、あらゆるものを攻撃できない変わりにあらゆるものから傷つけられない力を。全ての歌を歌う力と、異界の歌すらも歌う権利を。

それは最大の賛辞であった。


アタルヴァ社……

『……今のところ変な翻訳をしてるところがありますけど、フォローできる範囲内です……。』

目のくまを隠す様子すらなく原子は社長に報告を行う。

『これでぐっすり眠れる………。』

そう言いながら原子はゆっくりと仮眠室に入ってくる。


それからしばらくして、文字翻訳システムが<エルダー・テイル>に実装されることになる。

さらに後、優秀な音声翻訳システムが追加されるのだが、それにY×M×H×の技術が利用されることに興味を持った人間はほとんどいないのであった。


原子は夢を見る。それは<エルダー・テイル>の物語ではない、<ニュー・リアル>の物語。

そう、それは始まりの物語。

知り合いに読んでもらったところ、導入がわかりにくいということでしたので、ちょっとプロローグ部分というか<エルダー・テイル>前史を追加していこうと思います。

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