課金の問題
『……よしこちらに来たぞっ。』
アカツキがそういって数体のモンスターがやってくるのを確認する。
『たかやー。パンチしてもあまりダメージ与えられないよー。』
『前衛戦士職はそんなものさ。武器攻撃職と魔法攻撃職業の火力がとんでもないけどな。』
『ふっ、ならば我が灼熱の火球の中に消えろッ。オーブ・オブ・ラーヴァ!』
どうやらホルダーは火力重視らしく、腕から生まれた火球がモンスターに当り一気にHPを削る。
『あれ……?HP残っちゃった?』
『そりゃあ、まだ低レベルだし、その程度の攻撃でやられるような奴じゃないしさ……。』
『かやさん。技の大半が使用不可能なのですが……。』
『そりゃタケルさん、武士は再使用時間が長い技が多いですから。』
『ええと、本当にユニコーン課金しなくて大丈夫ですか?』
『攻撃職業が多いって事はその分、敵の殲滅速度が速いって事です。その分HPの回復も減らせますし、反応回復魔法は先に使えますから戦闘から離れ離れやっていけばMPは持ちます。』
『………なるほど、そういう考え方もあるのですね……。』
かやはそう言いながらパーティメンバーのHPを確認しながら、その様子を見る。全員が特に問題なく動いている。
『アカツキさん。そろそろ攻撃を休めた方がいいよ。そろそろタゲが跳ねそうだし。』
『タゲが跳ねる?何を言っているのだ? 運よくドラゴンナックル殿に攻撃が集中しているうちに敵を一体でも多く……。』
『いやさ、相手を狙うのは運じゃなくてヘイト値。今はドラゴンナックルにヘイトが集中しているけど、そろそろアカツキさんにヘイトが溜まって……って思いっきりアカツキさん狙われてるー!!』
『いやこれは運が悪くて……。』
『ヘイトの溜まりすぎです! 一回下がってください!』
子原がそう言って大慌てでアカツキを下げさせる。
アカツキさんは一旦俺の後ろに下がって……』
『今下がったら戦線が……。』
『俺が前に出ます! 攻撃しなければヘイトは下がりますから、こちらでフォローできます!』
『私もフォローしますっ!』
かやが前に出つつ、子原のゴーレムがそれをフォローするようにカバーリングを行う。
『すまない……。』
『なーに、初心者にはよくあることです。』
そう言いながら全員の状況を確認する。一時期混乱したが特に問題なく動いている。
『ヘイト値は動きでしか判別できませんからね。』
『詳しいですね。』
『まあ、基本的な仕様は全部読んだ事があるので……。(というか作ったのは私ですし)。』
『なるほど。』
その言葉に納得するかや。こういったプレイヤーは効率厨であることが多いから、こういった礼儀正しいプレイヤーは新鮮だ。
『アカツキさん、ヘイト蒸発がもうそろそろ終わるから、攻撃お願い。』
『うむ、わかった。』
『……我が偉大なる魔力がつきそうなのだが……。』
『少々飛ばしすぎたかな。こっちもMPがカツカツだな』
『ゴーレムもそろそろ限界ですね……。どうしましょう?』
『ここは一回アキバに帰りましょう。そろそろ集中力も途切れるところでしょうし。』
そういってたかやは全員を一度下がらせることにした。
アキバ、マリーナの店。川沿いの店に6人が入る。
『へー、ゲーム内にこんな場所があるんだ。』
『アキバが生まれてからずっと変わらない場所。まあ女将のグラフィックは変わっていますけどね。
初代の顔はかなりの根暗だったんですよ。』
(それあたしの顔だったんだよね……。あの時はモデルがほしいからって時間が無かったんだよなー。)
子原……原子は心の中でそう呟く。
『そういえばさ、子原さんは課金プレイヤーだって言ってたけど、それほど強くないね。』
『基本、課金よりもドロップ品やクエストアイテムの方が強いからねー。維持コストも考えると課金装備もコストが必要ですし。』
子原がそういって、苦笑いする。
『ですね。課金アイテム修理するために課金素材アイテムとかだったら、まずブチ切れますし。』
『それは嫌ですね。』
『………ただスタートダッシュ的には便利です。成長を少し早くできますから、時間の無い社会人とかに優しいシステムですし。』
『それは、金持ってる人間からさらに搾り取るシステムでは……。』
『時間の無い人間からさらに時間を搾り取るシステムよりはましですよ。』
冷静なアカツキなツッコミをさらに冷静に答えるかや。この辺りは『課金させようとして課金』させるのではなく、『廃人とそうでない人間の差を埋めるため』にやっている側面が強い。
『<エルダー・テイル>にだって課金アイテムはあるさ。だけど基本的に、<時間の無いプレイヤー>と<時間が有り余っているプレイヤー>が並んで遊んでいられるようにと考えた方がいい。』
『……言っている意味がよくわからん。』
タケルがそう言って、頭を抱える。
『つまりだ。時間があるプレイヤーは一生懸命遊んで稼ぐ。仕事なんかで忙しいプレイヤーは仕事で稼いだお金を使って、少々の強化を施してから稼ぐ。その割合なんだが、基本的にスキルポイントは、リアルマネーで稼いだ方が早いんだが、秘宝級装備に関してはこちらで稼いでやるしかないからな……。』
ぶつぶつと言いながら、かやは説明を行う。
『まあ、課金については、長時間プレイして、現実捨てるような人間が有利になりすぎないように調整してるのさ。』
『………なんか課金=悪! みたいな感情があったけど、結構考えられている課金もあるのね……。』
『……まあ、世界中で展開しているんだ。そのあたりもきっちりと考えているさ……。まあ一部、課金超有利な場所もあるけどさ………。』
やや遠い顔をするたかや。
『……そろそろ時間だな。ドラゴンナックルはもうそろそろログアウトしないと怒られる時間だろ?』
『本当だ! どうしようどうしよう!』
『ああ、そのままログアウトで構わないさ。』
『……すまない。少々相談があるのだが……。』
ゆっくりとアカツキが呟く。
『何?』
『来週も一緒に冒険してくれないか?』
『……私はいいわよ。かやは?』
『俺は基本毎日だからな……OKだぞ。』
『私も余計な仕事が入らなければ問題ないわね……。』
『俺もOKだ』
『ふっ。邪眼の目を持つ私がもう一度協力してやろう。』
『む、みんなすまない……。』
感謝の言葉を言ってアカツキは言葉を紡いだ。
そして次の週になった。
『……全員レベルバラバラだね……。』
1週間後、再びであった6人であったが、レベル域が全員違うという事態にかやは頭を抱えた。
『プレイ時間とか結構違うからなー。』
『まあ、ギルドを組まないならこんなもんだろう。子原さんが一番レベルが低いってのが、驚きでしたが……』
『ちょっと外せない用事が入っちゃってね………。プレイできる時間がそれほど取れなかったの。』
子原は困ったように言う。
『……あー。リアルは大事にしてください。この世界の為にリアルを犠牲にするなんて間違っています。』
『父さんが運営の一人なんでしょう? そんなこと言っていいの?』
『………父さんはリアルの為にこの世界に関わっているから……。リアル最優先だよ。私も。』
かやがそう言ってドラゴンナックルの言葉を返す。
(ごめんないさい。リアルでこの世界にかかわっています。)
原子はそう言いながら、かや達に謝る。
『………これほどレベル差が広がっても大丈夫なのか?』
『師範システムを使えばレベルを下げて対応できるんだけど……。』
『へーそんなシステムがあるんだ。』
『……課金システムも師範システムも皆で楽しめるように設定されているわけなんだ……。』
『そうね………みんな頑張っている。そして世界を作っているんだからね………。』
子原はしみじみとその言葉を噛みしめながら、自分に言い聞かせるようにその言葉を紡いでいた。




