はじめての<エルダー・テイル>
貴也は<エルダー・テイル>の新人研修の為のサブキャラを何体か持っている。
基本的に、制作級の装備でそれなりに戦えるように色々と計算しているし、基本的に『スタンダードな戦い方の一歩先』で戦っている。
これは新人に変な印象を与えないためであり、『わざと』通常の戦い方をし続けている。
これはメインキャラである『たかや』に関しても変わりなく、スタンダードな防御スタイルと、新人のミスをフォローできる攻撃スタイルを混ぜ合わせている。
サブ職業はアンデッドハンター固定。理由としては『種族による設定の差異』を説明しやすいからだ。
この時、新しくサブキャラを作ろうとしたのは空手バカの幼馴染が<エルダー・テイル>に興味を持ったからで、それならばいっそ新しくキャラを作ることにしたのだ。
「……職業は武闘家で良いんだな。」
「うん、種族はヒューマン、性別は女性っと……。」
素直に作っていく彼女を見ながらたかやはせっせと情報を集めていく。
「それじゃあ、あとはチュートリアルだからしばらく聞いててくれ俺もすぐ家に帰ってから、準備するから。」
「わかったー。」
さてしばらくのち、ゲーム内アキバの大神殿前。
【かや:施療神官:女:Lv4】
その名前で新しくキャラを作った貴也は幼馴染をそこで待っていた。
【ドラゴンナックル:武闘家:女:Lv4】
約束の時間を数分遅れて、彼女のキャラがやってくる。
『おせーぞ。』
『……やっぱり女性キャラなんだ。』
『サブキャラは、サイコロで決めるようにしてんだよ。』
『……そんな適当な……。もうちょっと考えて性別決めなさいよ……』
幼馴染とそんな会話を繰り広げる。
『そうでござる……性別はしっかり考えて決めるべきでござるよ。』
横からそんなチャットが響いてくる。どうやら彼女はシャウトしていたらしい。
『む……。』
そこで名前を見る。
【アカツキ:暗殺者:Lv4:男】
『小生、忍びのアカツキというもの。些か旅をする仲間を探している途中……もしよろしければしばし一緒に旅をしていただけぬか?』
(初心者だな……演技の具合が強いな……ネナベ(女性なのに男性プレイをする人物のこと)か?)
貴也は、ネカマ、ネナベに対してそれほど違和感を持っていないし、変だとも思っていない。
装備のグラフィックが明らかに違うことがあるからだ。
日本、韓国サーバでは女性用のグラフィックに力が入っており、東欧サーバでは男性用のグラフィックに力が入っている。それぞれグラフィッカーの力の入れ具合が異なっており、それを気にして性別を変える人間がいる。
最も能力は変わらないから、趣味のレベルなのだが。
(初心者レベル上げなら3人で十分か。)
たかやは施療神官で現在動いている。まあ初心者が楽しいプレイができればいいのだろう。
『ねえ、たかやは何で鉄の鎧を着ているわけ? 私達皮鎧なのに。』
『いやさ、このレベル域だったら、MDEF(魔法防御力)よりDEF(防御力)のほうを優先するし、ヒーラーがやられて、回復できずになぶり殺しは流石に気まずいし。ヘイト値は回復量で決まるから、回復力を上げるより防御力を上げたほうが効率いいし。』
特に前衛戦士職業が武闘家の場合、回復職の防御力が高くなるというのは珍しいことではない。
『…うっうむそうなのか……暗殺者の装備のおすすめは……。』
アカツキがそう言って悩み始める。
『何を目的とするかだな……個人的なお勧めは、装備できる秘宝級装備を手に入れてからそれに合わせてスキルを変えていく方法だ。それまではスキルポイントを貯めておいて、それからどうするかを決めれば、個性が出て面白いぞ。』
『ふむ、かや殿は物知りでござるな。』
『サブキャラだし。メインはないしょ。』
『そっそうでござるか………。ではご一緒によろしいかな?』
『ドラゴンナックルはどうかな?』
『私もOKよ。基本6名がパーティーって聞いたけど……。』
『まあ、ちょっとした狩りなら3人で……パーテイー募集が3名いるな……』
シャウトを確認しながらたかやはその文章を見る。
『まあ、良いんじゃない? 人が多い方が面白そうだし。』
『確かにその通りでござるな。そちらの方々も連れていくとしよう。』
移動がてらに挨拶と自己紹介をしあう。
『私はかや。施療神官ですね。一応回復魔法は使えますけど、前にも出れます。』
『私はドラゴンナックル。武闘家です……特徴は何だろう?とりあえずたしかみてみろ!ってな感じですね。』
『私は子原と言います。召喚術師ですね。課金でゴーレム3体持っています。』
『……課金……』
『クエストを受けたほうが早いのに……それにゴーレム3体ですか?』
『課金ゴーレムですから一般技能を持っています。』
『いや、それ意味ないですよ。ゴーレムに生産コマンドありませんから。』
『戦うだけしか能がないゴーレムより良いじゃないですか!』
その言葉に貴也は苦笑いを浮かべる。意味不明なこだわりも初心者プレイヤーの特権だ。
それに課金をしても、日本では秘宝級装備や幻想級装備は手に入らない。スタートダッシュ用のアイテムを課金で手に入れるのが普通の為、時折社会人たちが使う程度なのだ。
『この帯域でのレベル差6ですから、気にしなくてかまいませんよ。すぐに補正で追いつきますから上げたままの方が経験値がちょっと高くなるでしょうし。』
たかやは割と課金プレイヤーに対してのハードルは低い。まあ父親が父親なので課金プレイヤーは大事なお客様なのだから。
それに秘宝級以上は日本サーバでは課金では手に入らないようになっているのだ。
『拙者……いや小生はアカツキと申すものでござる。暗殺者でござるな。』
『私は真なる邪眼を手に入れることを目指すダークアイマスター(予定)ホルダー。全ての物は私に魅了される事になる。』
『ええと、妖術師で火力重視型か……。』
『最後になったが、武士のタケルだ。よろしくたのむ。』
『あれ? 回復魔法使えるの私だけ?』
かや……貴也が冷や汗を流す。
『………そうなの?』
『私が今から課金して、ユニコーン召喚獣にしましょうか?』
『いやいや、これ以上課金しても大変なだけですって………。まあ、火力は十分ありますから、大丈夫でしょう……多分。』
かや⇒ネカマ
ドラゴンナックル⇒初心者
アカツキ⇒ネアカ
子原⇒課金プレイヤー
ホルダー⇒厨二
タケル⇒普通
『………大丈夫だよね。』
ちょっと不安になるかやであった。
アカツキさん、パーティーを組むの巻。




