新緑の邪神 その1
食料不足の原因は、食料に関したクエストが急激に増えたことであった。
高レベル料理人が必要な『中華料理人決定戦』、サブ職業『食闘士』の設定、高レベルの強化型食糧アイテムの増加。
それにともなう急激な料理人の増加やAIの無数の判断ミスやシステムの不具合、乱数の偏りによる食材アイテムの不足。
アタルヴァ社はこんな時の為に幾つもの緊急クエストを用意しており、その中の1つが『新緑の邪神』であった。
『邪神はXXに封印されており、復活の時を待っています……。』
鏡から爺さんの顔が現れて、説明を開始する。
『遠見の鏡か……。こんなクエストの時は便利だな。』
複数個所で発生しているそのイベントを見ながら、シナリオ作成班はため息をついた。
新緑の邪神(複数形態持ち)
レベル90 クラス:レイド4
『レイド4………。』
<エルダー・テイル>最高級のランクを目の前にして一同が凍り付く。
『いきなりラスボスかよ。』
『高い報酬で罠かとも思ったが、この調子じゃ割に合わねえかもな。』
『馬鹿いえ、幻想級だぞ幻想級。ボスをポンと倒すだけで手に入れられるならこんな楽な事はねえ。……その分競争率もひでえがな。』
『一気に12個のギルドが戦えるように振り分けがされているみたいだな。』
同じ時間に複数のギルドが挑戦できるようにダンジョンの奥は分かれており、それぞれのギルドが一斉に戦う事が出来るように親切な設計になっていた。
『そう言えば『茶会』は?』
『いねえな……どうしちまったんだ?』
その頃のシロエ
『カラシンさん! そっちのフォローお願いします!』
『こういう狩りも悪くはないね。』
イノシシ狩りに苦労していた。
『ま、あいつらがいねえのなら幻想級入手のチャンスが増えるって事だな。』
『まずは俺達からだ!』
そう言って一番手の12ギルドが入っていった。30分で全滅した。
その頃のKR
『よーし、一本釣りだ!』
『しかし、こっちの海も海で悪くないな……よし、海の名前をつけたギルドでも作ってみるとするか。』
鮫狩りに苦労していた。
流石にレイド4。最高級のモンスターの名前は伊達ではない。
次々と挑みながらも次々とハイジン達が返り討ちにあっていく。
行動パターンの分析や解析などを次々と調べつくす。
『……はっ、運営も中々面白い物を作ってくれるッ……』
その頃のカズ彦
『一体あなたの所のカミナさんは何を考えてるんでしょう。』
『……何も考えてないと思んだと思います。物欲に乏しい人ですので。』
キノコ狩りに苦労していた。
『茶会のリーダーは一体何を考えてるのやらね……。』
『こういったコンテンツは終わったらもう二度と出てこねえっていうのにさ……。』
その頃のカナミ
『たかやさん。そっちお願い!』
『わかりました! そう言えば、邪神退治は参加しないのですか?』
ロック鳥狩りに苦労していた。
『原因と結果が逆じゃない? そんなクエスト乗り気になれなかったの。』
『原因と結果が……逆?』
たかやはその言葉の意味が分からず聞き返す。
『そ、悪い魔法使いが現れて姫様をさらう話じゃなくて、姫様がさらわれたから悪い魔法使いが現れるなんて変な話じゃないの。』
カナミはそう言いながらロック鳥の巣に近づく。それに気がついてあわててたかやが行動に移る。
『行かせはしないっ!タウントをしますッ』
たかやはそう言ってロック鳥に攻撃を加える。
そのはずみで、そのカナミの言葉をすっかり忘れてしまった。それぐらいどうでもいい事だったのだ。
『DPS(1秒当たりのダメージ量)は1レイドで30万ぐらい。最大出力としては50万ぐらいか。』
(作者注:レイドのDPSについては、原作の三なる庭園のイブラ・ハブラ戦を参考にしてHP2億9000万から作中描写から800秒として割った362,500を切り下げた物にしています。)
『となると4レイドだから150万で最大が200万って所だな。』
(作者注:3×4=120ですが、数が増えたぶんローテーションを行う事ができるので火力が増えています。)
『まあそのぐらいになるだろうな……。』
『そうだな。だとすると………。』
『行動パターンは…………』
『何処を破壊して………。』
無数の情報が集積しながら彼らの攻略は進む……。
その頃のにゃん太
『……こちらでいくらカニ退治をしても、食べられないのはつらいですにゃ。』
カニ退治に苦労していた。
『ここをこうしてあーして……………』
『火力を上げ過ぎるとタゲが跳ねるから…』
『そーしてどーして……。』
『なーしてかーして』
その頃のインクティス
立札:『パーティ募集中』
パーティ集めに苦労していた。




