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神託の天塔 その3

攻略は次々と進んでいた。

競い合うように、また協力するように攻略が進みながら、ついには最終階層にたどりついたのだ。


『ついに……ついにここまで来たんだ………。』

『どんなボスが待っているんでしょうか?』

『……落ち着きなさいって。どーんと構えて構えて。』


そう言いながら、『D.D.D.』の精鋭達がワイワイと騒ぎ合う。


ラストフロアを前に全員がわくわくしていた。これこそが自分達が生きているあかしだと言う事を誰もが実感していたのだった。


アタルヴァ社本社、社長室。

「これが、ハーフガイア内部における、各サーバの経済状況のまとめです。」

そう言ってUSBメモリを社長に渡す。

「それで、『A』は正常に起動していたのかね?」

「はい、問題なく稼働しています。」

「わかった、しかし次のレイドイベントだが……。」

「申し訳ありません。それについては、社員一同頭を捻っているのですが……。」

「まあ、すぐに思いつくものではない。のんびりやっていけば良いさ。しかし……。」

そう言って社長は窓の外を見る。

「こうしてみると、経済的にはともかく、軍事的にはハーフガイアの安定しなさっぷりはどうしようもないなぁ………。」

パソコンの中に記録されている無数のレイドイベントを見ながら社長は頭を抱える。

「1つの事件が解決したら、また別の大きな事件が起きる、そしてそれを解決したのならそれよりもまた大きな事件が……

 まったくもって安定しない世界だよ。」

「それがMMOですから。」

「そうだね、確かに全くその通りだよ。」

1人用ゲームならば、それこそラスボスや隠しボスと言った相手を倒せば挑戦は終わる。

まあRTA(=リアルタイムアタック)や制限プレイなどを含めたらそうでもないかもしれないが。

しかしMMOは終わらない。いや『終われない』のだ。より強くより難しいダンジョンをボスを冒険者は求めてプレイが始まり、そして解決すれば次のシナリオを求めていく。

それが本当にハーフガイアに必要な物かどうかはわからない。

「よし、決めた。この世界を終わらせるモンスターを作っておこう! 絶対に誰も倒せない、最恐、最悪のモンスターを! このゲームが終わる時に出てきて世界全てを滅ぼすようなモンスターを!!」

「そんなモンスター作ってどうするんですか。ゲームとしてそれは本当に面白い物なんですか?」

「だが、いきなりサービスを終了させるより、サービスを終了させる祭りをした方が、プレイヤーの皆も納得がいくだろう?」

「……でも絶対倒せないモンスターなんて文句が来ますよ?」

「うーむ、ならば倒せはする、しかし短いスパンで復活してくると言うのはどうだろう?」

そう言って社長はとめどなく文章を書いていく。

そこには社長の考えた『私の考えた最強のレイドボス』が書かれていた。

「これをとりあえず、少しずつ作っておいてくれ。」

「正気ですか?」

「うむ、こいつについては<セルデシア>世界最強最後のボスなのだ。手間暇をかけておいて問題ないだろう。

 没デザインの再利用でも何でも構わない。」

「わかりました。こちらでも対処いたします。」


世界を終わらせるモンスター。その出現は彼らが死神であり、世界の破壊者あることを証明するものでもあった。


やがて『D.D.D.』は神託の天塔を突破した。

その事実は、世界中のプレイヤーを驚愕させ、それと同時に彼らは次のレイドイベントを欲した。


それと……


アタルヴァ社本社

「……つまりはなんだ。宗教関連で今更問題視する奴らが増えてきた……そう言うわけか?」

「はい、今の今まで人気が無かったから問題視されなかったのですが、今回のアップデートで人がかなり増えまして、そのせいで宗教に関しての意見がかなり増えています。」

「………そうか……。」

「社長?」

「問題となっているのは、東欧サーバのエクソシストと、日本サーバのカンナギですね……。両方とも最初期から設定されていたから見逃されていました。」

「よりによって、最初期の奴か……。」

これはかなりきつい問題だ。関連するアイテムは100や200では効かない。スキルの見直しともなればその作業量は膨大な物になる。

それらを誰がやるのか、名前だけではなくフレーバーテキストまでの変更となれば、その作業量はとんでもない物になる。

「どうする?」

「……カンナギとエクソシストについては、何らかの形で宗教色を取り除くことで、許可をするとすれば問題ないと思います。」

「その上で、宗教色の強い……あるいは国家間においての問題のおこりうる地域については削除する……そう言った方針でどうでしょうか?」

「……確かにそうするしかあるまいが……納得するか?」

「納得してもらうしかないでしょう……万が一の時は会議を行い判断すると言う事で。」


かくして、宗教関連の話し合いが始まり……F.O.E.の代表が『巫女萌え』を20分ほど語り……。

そして全世界的冬のイベント『スノウフェル』が発表されたのだが、南半球はどうするんだと言う話が出てきて色々とこじれたのはまた別の話。

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