≪傭兵特訓訓練≫
さて、時間は少々さかのぼる。
「原子くん、君の作ったクエストなんだが……?」
そう言って、シナリオ調整係のメンバーがそう言う。
「なんでしょうか? 難しすぎましたか?? 自分なりに調整したつもりなんですけど。」
「いや、逆だ。テストプレイヤーが簡単すぎだプギャーって言って笑っていたぞ。」
「うーん。簡単に受けられるクエストだから簡単な方が良いかなって思ったけど、そこまで言われたんだったら極限まで難しくしちゃおうかな。」
「ああ、そうした方が良いだろうな。只でさえこのクエストは簡単に受けられるんだ。かなりガチガチに組んでも誰も文句は言わないだろう。」
「OK、では反応速度を最速に設定! パーティー戦闘プログラムを全開放! 学習プログラムならびに対パーティー編成プログラムを最高レベルまで設定ッ!」
そう言いながら原子はカタカタとプログラムを打ち続ける。
「後は裏で色々と学習させながら……もうちょっと思考プログラムは安定させた方が良いかしら。」
怪しい言葉でそう言いながらハラコはプログラムを打ち続ける。
「じゃあ、頑張ってこのクエストの難易度を上昇させろよー。」
「………わかりましたー。」
かくして≪傭兵特訓訓練≫は難易度が急激に上昇した。
テストプレイヤーが情報を見ただけで『簡単』と言った事を誰も知らないままで。
「それと、例の『A』、今の所問題なく稼働しているぞ。今度『B』なども増やしていく予定だ。」
「まあ、私の最高傑作ですからね、私の名前を継ぐ、私の大事な子供ですから……。」
そう言って原子はニヤリと笑った。
「ただ、『B』以降についてはサブシステムですから、機能制限をつけようと思っています。」
「わかった、上にはそう伝えておく。」
『やりたいやりたいやりたいやりたーい! このクエストやりたーい!』
初心者の中の1人がそう言いながら街中でバタバタと叫んでいた。
『…だから、これは疑似GVGクエストだから24名いないとできないんだよ……。
それに、これはアメリカサーバのクエストだから、アメリカまで移動しないとやれないんだ。』
たかやはそう言いながら、その初心者をなだめる。
『……何々? 我々は冒険者の戦い方を学びたいと思っています。様々な戦い方を学びたいと思っているので、我々も様々な戦い方をしようと思っています。どうか皆様お気軽に声をかけて頂ければ幸いです。
ターミナル傭兵団 一同より
新規クエストにしては、割と単純だな……報酬は……とりあえず金貨だけで誰かが5連勝すれば……新規の秘宝級アイテムだって? 割と良心的なクエストだな……。
レベルこそ下げられるが、こんなクエストを高いレベルでクリアしても楽しくないだろうからしょうがないか。』
『面白そうじゃん。やってみようよ。』
『レベルも30って良心的ですし。』
『レイドレイドレイド~~~。』
『私達だって学べるものがあると思うんです。』
雰囲気に押されてか、何人かのメンバーが賛同する。
『……これはこれは。面白い事になりましたにゃ。』
『人数的には……困ったなちょっと人数が多いな。』
『ふむ、新しいシナリオならやってみても悪くないだろう』
『ヘッジホッグさん!! 勢いで言わないでください!』
たかやがそう諌めるが、割と全員ノリが良かったらしい。
『それじゃあレイドを3つ作って都市間移動ゲートに行ってみようか。』
そう言ってたかや達はパーティーをまとめながら都市間移動ゲートへと移動する。
『みんなありがとうー。』
そう言ってわがままを言っていた少女……カナミはにっこりと笑ったのであった。
(あれ? 都市間移動ゲートまわりのタンクが無くなっている? 外したのか??)
まあ、フレーバー的な魔力タンクをはずしたぐらいで都市間ゲートが動かなくなることもなく、全員目的地にたどりつき。
『ちょっと、こいつら動きがはやいっ!』
『これがレイドっって速度がッ速度がッ』
『これだけ猛攻すれば、もうそろそろMPが切れるッ!
『待てッ、今後ろの付与術師が<マナ・チャンネリング>使ったぞッ。ガチだっ。
こいつらガチのパーティーだッ。』
『えっ、このタイミングで攻撃魔法を? 復活が間に合わ……。』
『しまった、復活魔法の再使用時間を見越してッ……高火力攻撃魔法を温存したのかッ。』
『ぎゃあああああああっ。』
3レイドとも全滅したのだった。
『はん、やっぱり日本の奴らじゃ無理だな。と言うか初心者にクリアできるわけねえだろ?』
そう言いながら数名のプレイヤーがやってきて笑う。(ここは英語なのだが、たかやが翻訳した。)
『まっ、俺達が華麗な活躍で1勝してくるから、そこできっちり見てきなって。』
そう言って、おそらくは北米サーバの人間なのだろう。彼らが次々と挑戦していきながら……。
『ってこいつスカーレットナイトってインチキもいいかげんにしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。』
『速度がッ速度がッ!』
『アサシネイトが潰されたッ!このままじゃ。』
『『『『どわあああああああああああっ』』』』
『なんなんだよ。このクエスト…………。』
次々と廃人達が挑戦していき、全員でわいわいと楽しみ合う
『…なるほど、付与術師は緊急時の魔力タンクとしての役割を………。』
ガチガチに動いている傭兵団の動きを見ながらシロエは冷静に分析していく。
同レベル同士でのガチガチの戦い。こういうものは初心者は滅多に見れるものではない。
『これはこれは、すごい戦い方を見せてもらったのですにゃ。』
『ギミック無しでも、頭がこんがらがりそうだ。』
『それだけに、これと言った攻略方法もない。これはこれで面白い戦いになるな。』
そんなこんなで、何度も挑戦して……廃人の1ギルドがようやく1勝した時は皆で大いに盛り上がった。
そして、皆でアキバに帰ってきて………。
『……にゃん太。ちょっと話があるんだ。時間あるか?』
そう言って1人の猫人属がにゃん太に声をかけてきた。
『じゃあ、みんなここで解散しよう!』
たかやはそう言って一同を解散させる。
『ねえねえ、シロくんあのレイド楽しかったよね。』
そう言ってカナミとシロエは色々と話し合いながら、何やら話し合いを始める。
ちょっと遠い場所。
『にゃん太。俺は<エルダー・テイル>を止めるよ。』
『……そうですかにゃ。』
そう言ってにゃん太は寂しそうにうつむく。
『猫まんまの残りも俺とお前だけになっちまったしな。あの会議に出た9ギルドも全部なくなっちまったし。』
そう言ってその男はにゃん太に声をかける。
『<ブラック・ブレード・ブラザーズ>は、リーダーとサブリーダーの対決で分裂。
<猫まんま>は代表がいなくなって自然消滅。
<ポセイドン>はメンバーが入れ替わりすぎて、もはや別物。
<青空同盟>はギルドごと止めちまったしな。
<関西にプレイヤータウン作ろう同好会>は……まだメンバーだけは残ってるな。プレイヤータウンができたらすぐ解散しちまったけど。
<シャーウッド>はヴァージョンアップで産廃になっちまって止めたしな。
<赤き挑発者>はなんでも会社がつぶれたらしい。
ホワイトベルはあの後、子育てでゲームを止めたらしいからな。』
『……時代は変わっていくのですにゃ。』
『ああ、そいつは構わない。俺達が歴史の遺物だと言う事も。それでもな……。』
『…………。』
その言葉にその男が少し悩んだように話しかける。
『なあ、<猫まんま>は本当になくなっちまったのかな?』
『それはどういうことですかにゃ?』
『色物ギルドと言われ続けて、色々とやってきたんだが、ああやって楽しくやっていこうって思いだけは残っている。
俺が教えた奴が何名か先生代わりにやっていた奴もいる。
玉三郎が生きているなんて思ってる奴はいない。だけどなそれでも、玉三郎がやってきたことは間違っていないさ。』
『そうですかにゃ……。』
『………時代は少しずつ変わっていっているんだ。ならばせめて、この楽しい世界が少しでも長く続くことを祈っているさ。』
この男は、これを機に<エルダー・テイル>に二度と姿を現すことは無かった。
それが、幸せな事だったのかまだ誰にもわからない。




