RMTとBOTと六傾姫
アタルヴァ社本社ビル。
「RMTが行われているだと……。」
「はい、こちらがその報告書と……掲示板です。」
「RMTは規約違反のはずだ!!」
アタルヴァ社社長は机をドンと叩く。
「……彼らは法律に違反はしていないと言っております。」
「弁護士を呼べ!! RMT参加者を全部訴えろ!!」
「ですが、これらはヨーロッパや日本でも行われていて……!!」
「何のための海外管理会社だ!! すぐに連絡しろ!! RMT参加者を全員民事訴訟で訴えろ! 金と時間は幾らかかっても構わんッ!」
「はいっ」
社長の気迫に押されて、目の前の男が慌てて立ち上がる。
「まったく……しかしBOTとRMTか……。」
「対BOT専用プログラムねえ……。うーん、ちょっと難しいかも。」
そう言って原子は仕様を聞かれて頭を抱える。
「難しいのか?」
「うん、相手はどんどんやり方を変えてくるんでしょ?そう言うのに対してプログラムで対抗しようとしても無駄だと思うの。」
「それは、上の方の会議でも話題が出た。BOTの証明は難しいとな。」
「だからさ、RMT中心に潰していこうかなって思うの。」
「RMTは楽なのか?」
「うん、ネットでの情報を集めながら、<エルダー・テイル>でも情報を集めて照合させて……ってやるプログラム。
そっちの方で幾つかのアイディアがあるの。」
「幾つかのアイディア?」
「うん、とりあえず、まず作ってみて様子を見ながらやっていこうと……。」
「それじゃ遅いんだよ!!」
その言葉に原子はびくりとする。
「……すまん、言い過ぎた。今現在ゲームが進行している以上、様子を見ながらと言うのは問題があるんだ。探査方法はバンバンやって構わまい。とりあえずのピックアップと謎行動をしてる奴を報告させるようにしろ。」
「了解しました。」
このRMT業者とアタルヴァ社のイタチごっこはそれこそMMOの歴史において一つの転換点ともいえる戦いであった。
専門の法律チームと、幾つもの情報網の構築。それはネット上の戦争ともいえるこの戦いは人知れず進められていた。
「……<エルダー・テイル>の専門管理プログラムだぁ?」
「現状では報告専門だけどね。」
そう言ってハラコはにやりと笑う。
「……それで、BOTやRMTらしい人物をピックアップしたのがこれか。」
「そっ。」
「わかった、このリストを頼りに調べてみる。」
「こちらも色々とプログラムの改良とかあるから、そっちの方はお願い。」
「わかってるのか! 俺もきちんとした客なんだぞ!! 使用料だってきちんと払っているし。」
「でしたら、この規約はきちんと読まれていますよね。規約上RMTは認めておりません。我々は数度警告しましたが、貴方はそれに応じようとしませんでした。
ゆえに私達はこのような最終手段に出る事にしたのです。」
アタルヴァ社は、それこそどうやって情報を集めてるんだと思わせるほどの行動力で情報を集め、それこそRMT業者を軒並み自社に呼び出し交渉をまとめあげ、それこそどうやって集めたのかさえわからない、他社関連の資料も使って呼び出したRMT業者を軒並みつるし上げるという行動に出たのだ。
それだけではない。破滅したRMT業者が報復できないよう先手を打って全世界で反RMTキャンペーンを行い、RMT=悪の図式を植え付けたのだ。
「…えーと、リアルタイム翻訳プログラムもこうやって組み合わせておいて……。」
「おーい原子。あまり根詰めるんじゃないぞ。」
「とはいっても、プログラム止めるわけにはいかないですしねえ。」
MMORPGの利点。それは常に新鮮なシナリオをプレイヤーに与えることができる事がメリットである。
逆を言えば開発業者は常に新鮮なシナリオを提供し続けなければいけないのだ。
彼女の担当はプログラムを取りまとめるのが役割とはいえ、それこそ膨大な量のプログラムを取りまとめる必要があるのだ。
只いくつかのRMT業者が潰された一方で、ひっそりと残されたRMT業者もいた。
彼らはアタルヴァ社の目をかいくぐり、出し抜く手段をいくつも考えてそれを実行し続けたのであった。
このイタチごっこはそれこそとんでもなく長い間続いた。
そんな中、幾つかのシステムが変更され、プレイヤー評価によるプレイヤータウン進入禁止がなくなり、ある一定以上の問題行動を起こした人物はアカウント使用禁止になるようにしたのだった。
翻訳システムの作成や、AIシステムの改善、経済制御の為のメインシステムなどなど、それこそ目の回るような作業をしながら。
そんな中、幾つかの事件が同時的に起こる。
中国・中東サーバなどが相次いで参加したことにより、とんでもない事件が起こる。
サーバ間設定の不備。自国優位の設定や全世界設定の追加。
その中で一番の問題となったのは<六傾姫>だ。
中国サーバで設定された(だから中国語読み)この姫君達は今まで設定されていたアルブの設定を覆しかねない代物だったのだ。
その他にも、色々とすり合わせの難しい問題が出てきたりもしたのだった。
専門の部署を配置し設定の矛盾のすり合わせなどを行い……。
更なるアップデートが進み、幻想級アイテムと言うカテゴリが生まれ………。
再び次の拡張パックの日になった。
六傾姫の設定については独自設定です。
シロエが知らなくてヘッジホッグが知っているのはどうしてかなと思ったらシロエ達が入る前に設定された情報だから…と判断しました。




