港
初めての作品なので、読みにくかったり、分かりづらい所とかあると思いますが、ご了承ください。
虫の鳴き声しか聴こえない真っ暗な夜。僕は、一人夜道を歩いていた。
目的地は、漁港にあるフェリー乗り場だ。こんな真夜中にフェリー乗り場に行く理由なんてない。
夜物思いに更けていると、よく眠れなくなる。そんな時は、無性に外の空気が吸いたくなる。お気に入りの煙草に火を点け、バラードを聞きながら僕は黙々と歩いていた。そんな時に思い出すのは、決まって元カノのことだ。
高校に入って出会った彼女と付き合いだしたのは、高2の夏からだ。二人でいろんな所に行ったし、多くの時間を過ごしてきた。お互いに別の大学に入ってからも、付き合い続けた。互いに自分の夢を叶えるために努力し、その後結婚するのだと信じていた。
しかし、現実はそんなに甘いものではなく、僕はもともと努力をするのが苦手な人間であり、周りの空気に流され、その場その場を楽しんでいればいいと思い遊び呆けるようになった。彼女とは遠距離なため、二か月に一度会うか会わないかという生活の中で、次第に彼女への愛情は薄れていき、ほかの女の子に目移りするようになっていった。そして、バイト先で出会った娘にだんだん心惹かれていき、彼女と別れることにした。
それでも、彼女は僕のことを思い続け、連絡してきたり、僕の所に遊びに来たりした。そんな彼女の思いを知りながら、僕はやさしい言葉をかけて、ストックにしていた。彼女が来るごとに、自分の気持はまだあるように思わせ、彼女を何度も抱いた。彼女が自分に好意があることをいいことに、元カノを性欲処理の道具のように扱った。
だが、彼女もそんな僕の気持に気がついたのか、次第に連絡は減り、会いに来ることなど全くなくなった。僕は、本命のバイト先の娘に好かれようと必死になっていたため、そんなことどうでもよかった。
バイト先の娘とは、結局うまくいかず、一人の時間を多く過ごすことになった。そんな時に、夜のフェリー乗り場を見つけ、寝れない夜は、そこに行くようになった。一人の夜を過ごしていく内に、元カノが傍にいてくれた時の温もりや、優しさが急に恋しくなり、音楽を聞きながらフェリー乗り場で泣くようになっていた。一人の寂しさから逃げ出したくなったから、元カノに連絡を取った。彼女は、前と全く変わらずやさしい言葉を僕にかけてくれた。その優しさが、人恋しさで冷めていた僕の心を温めてくれた。しかし、その反面でこんなに自分のことを思ってくれている彼女を傷つけてきた自分が嫌いになっていた。
自分には、彼女しかいないと思い、再び彼女に告白をした。自分のしたことの反省を込め、一生一緒に居て、彼女を絶対に幸せにしようと考えていた。
彼女は、少し時間が欲しいと言った。自分のしたことを考えれば、当然の報いであると思い、僕は彼女の言葉を待つことにした。
三日後、彼女から連絡が来て、再び僕たちは付き合うことになった。僕は、絶対に彼女を幸せにしようと、夢であった弁護士になることを諦めた。自分の今の実力じゃ到底弁護士になることはできないと感じ、彼女を幸せにするために、早く職につきたいと考えるようになったからだ。
その一週間後彼女からメールがきた、「気になっていた人から告白された、別れてほしい。」このメールを見た瞬間、理解できず彼女にすぐさま電話を掛けた、電話口の彼女はとても暗い声で、メールの内容と同じことしか言わない。そんな彼女が急に薄情な人間に思えた僕は、じゃあ勝手にしたらいいと電話を切った。
悲しさや虚しさもあったが、それ以上に彼女のことが憎くてしかたなかった。
しかし、時間が経つにつれて、彼女を失った悲しさが僕の胸を埋め尽くすようになっていった。また、眠れない夜を過ごすようになり、フェリー乗り場でタバコを吸うようになっていた。
ひとりで物思いに更けていると、たまにこのまま海に飛び込んで死んだほうがましだとも思うようになっていた。しかし、暗い海はとても恐ろしくこの世の終わりのような感じがした。
ある日、明け方までフェリー乗り場にいると、遠くの海から光が近付いてた。それは、漁船であった。漁港なのだから当然のことなのだが。昼の漁船は、ロープにつながれ海に浮いているだけだったので、暗い海の中を港目指して帰ってくる漁船を見るとすごく心強く、立派だと感じた。
漁師は、自分や家族のためにこの世の終わりのような海に出て、生活を営んでいる。僕は、彼女のために夢を捨て生活を営むために仕事をしようと考えていたが、その彼女を失った今、僕は帰る港のない漁船なんだと思った。この世の終わりのような、先の見えない真っ暗な人生の中で僕はどう生きていけばいいのか分らなくなっていた。
就活が始まり、いろいろな企業を受けたがなかなかうまくいかず、焦りを感じた。しかし、インターンシップで伺ったある会社の社長の一言に僕は衝撃を受けた。
「自分の人生なんだから、自分がリスクを背負うだけなら、自分の好きなように生きてみたらいい。」、その社長は、大手の広告代理店に勤務していたが、会社のやり方に限界を感じ自分で起業して、会社を立ち上げていた人だったので、とても説得力があった。それに、彼女を失った自分にとってその言葉は、自分の夢と改めて向かい合わせてくれる言葉だった。
それを機に、就活を辞め大学院に行くことを決めた。周りがどんどん内定をもらっていく中での勉強は、とても辛く、自分の選んだ道が大丈夫かとても不安にもなった。しかし、何も守るものも失うものない自分にとって、弁護士の夢こそが、自分の人生を生きていく中での最後の支えになっていた。
無事大学院に合格することができ、あとは卒業を残すのみとなった。そんな中、最近全然行ってなかったフェリー乗り場に久しぶりに行くと、ちょうど漁船が出港しているとこだった。それを見ていると、今の自分は、先の見えない暗い海に出て行く漁船のようだと思った。
説明がくどくなり過ぎないように、大まかな話の流れで書きました。ご意見、ご感想が聞けたら嬉しいです。