銅貨30枚の1日
生き物は、常に何かを破壊しながら生きている。
木を切る。
石を砕く。
命を奪う。
世界をも書き換えていく。
何かを壊さずに、生きることはできない。
……なら。
壊れたものを使って生きる奴がいても、いいはずだ。
朝、袋の中身を確認する。
銅貨を机の上に並べる。
「……銅貨、30枚か」
少し考える。
「……今日は、ご飯食えそうだな」
久しぶりに、まともな飯が食えるかもしれない。
外に出る。相変わらず空気は良くない。
でも、もう慣れた。
歩きながら、落ちているものを拾う。
鉄屑。
割れた装飾品。
欠けた刃物。
ただの草
触れると、少しだけ形が整う。
鉄屑は釘になる。
割れた刃物は、短いナイフになる。
……地味だけど。生きていくには十分だ。
市場の外れ。
顔なじみの買取屋に入る。
「おう、今日はご飯食えそうか?」
カウンターの向こうから、おっちゃんが笑う。
「……まぁ、なんとか」
「随分、顔なじみになったもんだな」
「……今日もよろしく」
袋をカウンターに置く。
おっちゃんは中身を見て、軽く頷く。
銅貨を、追加で数枚置いた。
――お前、本当にゴミなんだな。
一瞬だけ。
頭の奥に、声がよぎる。
銀の鎧。
冷たい目。
「……」
振り払う。もう終わったことだ。
「……おっちゃん、これは?」
カウンター横の箱を指す。
「ああ? それか」
おっちゃんは、箱を覗く。
「あー……それな」
頭をかく。
「もう1ヶ月は売れてねぇな」
「置いててもしょうがねぇし、好きなだけ持ってっていいぞ」
「……助かります」
(しめた、これで価値のあるものにできる)
(今日は……宿、泊まれるな)
箱の中を漁る。
壊れた指輪。
錆びた鎖。
割れた魔石。
黒い指輪を手に取る。
軽い。
頭の中に、数字が浮かぶ。
――――――――――
名称:破損した黒鉄指輪
価値:0.2G
状態:破損(軽度)
素材:黒鉄 / 低純度魔石
所有者:未登録
――――――――――
「……安いな」
でも。
金は、金だ。
「……リサイクル」
光が、走る。
いつもより、強い。
一瞬、耳鳴り。
視界の端で、何かが歪む。
すぐに、収まる。
手の中を見る。
黒い指輪。
……でも。
「……ん?」
数字が、出ない。
代わりに。
――測定不能
「……測定不能?」
壊れてるのか?
……いや。
「……でも、リサイクルは出来るみたいだな」
もう一度、意識を向ける。
リサイクル。
――――――――――
【名称:■■■■■■】
【価値:■■■■■■】
【所有者:■■】
【状態:■■■■】
【機能:■■■■■■■■】
【制限:■■■■■■■■■■】
【権限:一部解放】
――――――――――
「……」
……読めない。
……まあ、いいか。
指輪をポケットに入れる。
「……とりあえず、飯食おう」
今日は久しぶりに、腹いっぱい食えそうだ。




