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『二度目の人生はゼロ歳から。未来知識(チート)で詰んだ日本を買い叩く 〜伝説の投資家、赤ん坊のフリをして経済圏を支配する〜』  作者: Serizawa


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第4話:崩壊の序曲と、百億の神童

1989年12月29日。  日経平均株価は史上最高値、3万8915円を記録した。  テレビの中では、証券会社の社員たちが万歳三唱をし、誰もが「来年は5万円、再来年には10万円だ!」と熱狂していた。


 だが、その熱狂を冷徹な目で見つめる3歳児が、世田谷のマンションに一人。


「……宴は終わりだ」


 俺はPC-98のキーボードを叩き、全資産を「空売り」へ、あるいは「プット・オプション(売る権利)」へと、複雑なスキームで組み替えていた。  親父の健一は、俺が指示したあまりにも不気味な「売り」の連発に、ガタガタと震えながら隣に立っていた。


「な、なあ蓮……本当にいいのか? 世間じゃあ、まだ上がるって言ってるんだぞ? もし外れたら、うちは破産だ……」


「パパ。僕を信じて。一週間後、パパの周りの友達はみんな泣いているけど、パパだけは僕が世界一の金持ちにしてあげるから」


 俺は、おしゃぶりを咥えたまま(こればかりは体の構造上、落ち着くのだ)、父親に不敵な笑みを向けて見せた。    そして、1990年――新年。  大発会とともに、日本経済の「死」が始まった。


 株価は崖を転がり落ちるように暴落した。  昨日まで億万長者だった男たちが、一晩で借金まみれの亡者に変わり、証券会社の窓口には怒号と悲鳴が飛び交う。    そんな中、俺のパソコン画面に表示された資産総額は、もはやバグのような数字を叩き出していた。


「……125億、か」


 思わず独り言が漏れた。  親父の給料から競馬で1000万、そこから株の回転売買で数億、そしてこのバブル崩壊を完璧にショート(空売り)したことで、資産はついに「100億」の大台を突破した。


「ひ、ひえぇぇ……! 蓮! 通帳の数字が、ゼロが多すぎて読めないぞ!?」


 健一が腰を抜かして床にヘタリ込む。  3歳児の部屋には似つかわしくない、巨万の富。  だが、これはまだ序章に過ぎない。俺の本当の狙いは、この「ゴミのように安くなった日本」を買い叩き、再構築することにある。


 翌週、俺は幼稚園に向かった。  園内は、お通夜のような空気に包まれていた。  昨日まで自慢話をしていた保護者たちは顔を真っ青にし、何人かの園児は「パパが帰ってこない」と泣いていた。


 砂場の隅で、凛がポツンと座っていた。  彼女の家、冴島財閥は膨大な不動産を抱えている。価値が暴落した今、銀行からの貸し剥がし(融資の強制回収)が始まっているはずだ。


「蓮くん……」


 俺の姿を見つけるなり、凛が駆け寄ってきた。  その瞳は潤み、今にも零れ落ちそうだった。


「パパが……パパが、もうおしまいだって。お家も、会社も、全部なくなっちゃうって……!」


「……言っただろう、凛。僕が買い取ってあげるって」


 俺は彼女の肩を優しく叩いた。


「今から君の家に行く。君のパパ――冴島総帥に会わせてくれ」


「えっ……? でも、今はお客さんがたくさん来てて、すごく怖い雰囲気なのよ。銀行の人たちが怒鳴ってて……」


「ちょうどいい。ハイエナどもを追い払うには、ライオンが必要だからね」


 俺は幼稚園を早退し、健一(もはや俺の忠実な運転手兼、代理人だ)の運転するベンツで冴島本邸へと向かった。


 豪華な応接室には、黒いスーツを着た銀行員たちがズラリと並び、凛の父親である冴島会長を責め立てていた。


「冴島さん、もう猶予はありません! 今すぐこの土地を売却し、残りの融資を返済してもらわないと、我々も強硬手段に出ざるを得ない!」


「待ってくれ! あと一ヶ月、いや一週間待ってくれれば……!」


 かつての財界の巨頭が、汗を流して頭を下げている。  そこへ、ガチャリとドアが開いた。


「その融資、僕が肩代わりしよう」


 静寂が訪れた。  銀行員たちが一斉に振り返る。そこにいたのは、最高級の子供用スーツを着こなし、クマのぬいぐるみを脇に抱えた(母が持たせたのだ)一人の幼児だった。


「……なんだ、このガキは? 遊び場と間違えたか?」


 銀行の支店長らしき男が鼻で笑う。  だが、俺の背後に立つ健一が、震える手で一通の書類――スイス銀行の残高証明書を突き出した。


「な、なんだこれは……。1、100億……!? 個人口座に、即時動かせるキャッシュが、100億だと……!?」


 銀行員たちの顔から、血の気が引いていく。  今の日本で、これだけの「現生げんなま」を即座に用意できる人間など、どこにもいない。


「冴島会長。銀行への返済分として50億、僕が出資しましょう。その代わり、冴島グループの株式の30パーセントと……」


 俺は、隣で震えている凛の手を引いた。


「凛さんの将来を、僕に預けてください。彼女を、僕の『最初の社員』として雇わせてもらう。文句はありませんね?」


 3歳児の口から出たとは思えない、冷徹なディール。  冴島会長は、もはや言葉も出ず、ただ涙を流して頷くしかなかった。


 銀行員たちが這うようにして逃げ出していく。  俺は、呆然とする凛に向かって、ニヤリと笑ってみせた。


「さて、凛。倒産騒ぎは終わりだ。明日からは、世界を支配するための勉強を始めてもらうよ」


 伝説の投資家『REN』。  その名が、ついに表の財界へと響き渡る。  資産100億。この資金を元手に、俺は次なる獲物――秋葉原に潜む「天才プログラマー」の確保へと動き出す。

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