第10話:アジアの救世主と、最後のパズル
1997年12月。韓国がIMFの管理下に入り、国家破綻の瀬戸際に立たされていた。 ソウルの街には絶望が蔓延し、国民は国を救うために金を供出していたが、そんな「精神論」では焼け石に水だった。
その時、金浦空港に一機のプライベートジェットが降り立つ。 機体には、今や世界で最も畏怖されるロゴ――『FG』の文字。
「……酷い有様ね。これが、昨日まで『漢江の奇跡』と浮かれていた国の成れの果てかしら」 エマが冷ややかに窓の外を見下ろす。その隣で、俺は小学生用の小さなネクタイを締め直していた。
「エマ、冷やかしに来たわけじゃない。……これより、韓国全土の『主要インフラ』と『先端技術』を、我がフューチャー・ゲートのポートフォリオに組み入れる」
俺たちが向かったのは、韓国政府の臨時司令部。 そこには、絶望に打ちひしがれた閣僚たちと、彼らを「支援」という名の植民地化で支配しようとするIMFの役人たちがいた。
「話にならない! そんな条件で融資が受けられるか!」 「嫌なら破産すればいい。代わりはいくらでもいるんだ」
欧米の金融エリートたちが、韓国の役人を小馬鹿にしていたその時――。 俺は、SPを従えて会議室の扉を蹴り開けた。
「その支援、僕がもっと好条件で引き受けよう」
静寂。 IMFの役人が、入ってきた「子供」を見て鼻で笑う。 「なんだ、このガキは? ここは学校じゃないぞ」
「……彼の名前を、知らないのですか?」 背後から、凛とした、しかし重みのある女性の声が響いた。 現れたのは、知的な眼鏡の奥に鋭い光を宿した、20代後半の美女。 洗練されたスーツを纏い、一分の隙もない立ち居振る舞い。彼女こそ、元・エリート銀行員にして、日本の政財界に太いパイプを持つ女 神崎 麗華だ。
「彼はフューチャー・ゲート代表、藤城蓮。……そして、今この瞬間、貴方たちの銀行の『筆頭株主』になった男ですよ」
麗華がタブレットを掲げると、IMFの役人たちの顔が、一瞬で土気色に変わった。 エマの情報網と、舞のハイスピード・トレードによって、俺は会議室に入るわずか5分の間に、彼らの背後にある銀行の議決権を買い占めていたのだ。
「さて……条件を話し合おうか。韓国の再建には、僕が10兆円を用意する。その代わり、半導体、造船、通信……これら全ての『次世代特許』を、僕の会社に譲渡してもらう」
「じ、10兆円だと……!? 個人がそんな……」
「僕を誰だと思っている。……『未来』を買う男だよ」
交渉は一瞬で終わった。 俺は、国家が逆立ちしても用意できなかった資金を即座に投下。 アジア通貨危機をたった一人の子供が「終結」させたこのニュースは、全世界に激震を走らせた。
数日後。 FGタワーの最上階。俺の新しい専属秘書となった麗華が、深々と頭を下げていた。
「蓮様。これより、私は貴方の『盾』となり、世界中の雑音を排除いたします。……お命じください、我が王よ」
凛(実務)、舞(技術)、エマ(金融)、麗華(政界・秘書)。 ついに、4人のヒロインが揃い、俺の帝国は完成した。
「麗華。次は……アメリカだ。2000年のITバブル、そして2001年の『あの事件』。……世界が混乱に陥る前に、地球上のすべての富を『僕の財布』に入れ替えるぞ」
小学生になったばかりの俺は、窓の外、太平洋の向こうにある超大国を見つめた。 0歳から始まった逆行人生。 第一章、完。 ここから先は、もはや「成り上がり」ではない。 一人の少年が、地球という星を「経営」する物語が始まるのだ。




