表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/10

EP4_四天王の一人サキュバス登場

「へぇ……こんな掃き溜めにも、一人くらいは異世界の勇者が隠れているものなのね」



 宿屋のドアを魔法で軽く吹き飛ばすと、薄暗い部屋の中に一人の坊やがうずくまっていた。  鼻を突く、濃厚なオスの匂い。これは確実に童貞だ。しかも極上の、異世界の勇者のもの。  先ほどの勇者パーティは、ほんの挨拶代わりに精気を吸ったつもりが、あっけなく全滅させてしまった。まあ、森に捨ててきたからそのうち目覚めるだろう。問題は、生き残ったこの坊やがどれだけ我が軍の脅威となり得るかだが……。



 部屋に入り、一歩ずつ近づく。  薄暗い室内、頼りないロウソクの光が一つ。坊やはこちらを一切見ることなく、机に向かって何かをしている。


 私の視線が、彼の横に積み上がった大量の紙と冊子に釘付けになった。



(まずい! この子供、まさか魔法使いか!?)



 机に積まれたあの分厚い冊子の山、あれは『魔導書』に違いない。  


私は自分の迂闊さを後悔した。私はサキュバス。


魔法は使えるものの、専門は精神干渉や精気吸収だ。四天王のもう一人、魔導に通じたあいつに任せるべきだったか。  しかし、召喚されて間もない小僧にそこまでの力はないはず。  背後に忍び寄り、一気に精気を吸い尽くせば――。



 そこで初めて、坊やがブツブツと何かを呟いているのが聞こえた。  


高速詠唱だ。私は相打ち覚悟で踏み込む。



「ツギハオトサナイ……ゼッタイカベサー……ツギコソウカル、ゼッタイカベサー……」



(『オトサナイ』? 『カベ』!? 防御結界と広範囲攻撃の複合魔法か!?)



 なんの呪文かは不明だが、この距離なら発動前に魔導書を燃やせる!


 私は魔力を練り上げ、坊やが必死に書き込んでいる魔導書の中身を覗き込んだ。



「……なにこれ? えっ、めっちゃかわいいいいーー!」


「誰だお前。新聞なら間に合ってます。締め切りヤバいから少し黙ってもらえないですか?」



 一瞬だけこちらをちらりと見た坊やは、サキュバスである私に全く興味を示さず、再び机に向かって何かを書き始めた。  


魔導書ではなかった。絵だ。しかし、教会にあるような堅苦しい宗教画ではない。  目が大きくてキラキラした、とてつもなく可愛い女の子と、カッコいい男の絵だ。



「ねえ、これはなあに?」


「えっ、漫画だよ。知らないの?」


「マンガ? その机に積み上がってるのも『マンガ』という魔導書かしら?」


「魔導書?違うけど…。あーもう、気が散るなぁ。


勝手に読んでいいからさ、ちょっと邪魔しないで」



 そう言った坊やは、机の上から無造作にいくつもの冊子を取り出し、


肩越しにこちらへ渡してくる。  


罠かとも思ったが、その『マンガ』の表紙には先ほどのような魅惑的な絵が描かれており、警戒心よりも興味が勝ってしまった。


私はそれらを預かり、大人しく読み始めることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ