表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/10

EP2_締切という名の呪い

東京駅、バスの停留所。  


修学旅行の終わりを告げる喧騒の中、俺は息を切らして集合場所に滑り込んだ。  


存在感の薄い俺のことなんて、誰も待っちゃいない。


案の定、俺以外にも遅れてきた数人を待って、ようやくバスの荷物室が口を開けた。



「うわ、重そう……佐藤、お前それ何が入ってんだよ」


「あ、いや……お土産とか、いろいろ」



 クラスメイトも土産袋を抱えているが、俺の荷物は段違いだった。


戦利品が詰まったパンパンのキャリーケースと、入り切らなかった数箱の段ボール。


 荷物を預けた者から順に、我先にと陽キャグループたちがいい席を取るためにバスへ乗り込んでいく。



 その時だった。  入り口近くにいた女子の一人が、素っ頓狂な声を上げた。



「え……? 何、これ。プロジェクションマッピング?」



 アスファルトに、見たこともない強大な光の模様が浮かび上がる。


 逃げる暇もなかった。光はバスも、東京駅の雑踏も、混乱するクラスメイト全員を飲み込み――。



 一瞬の静寂の後、目を開けると、そこは豪華絢爛な「王の間」だった。



 俺はまだ、バスに預けるはずだった大量の荷物を両手に抱えたまま、


冷たい石床の上に呆然と突っ立っていた。



「おお、勇者様方! よくぞ参られた!」



 高笑いする王の前で、クラスメイトたちの「能力鑑定」が始まった。  


クラスの主役であるリア充が『聖剣士』を、その取り巻きたちが『賢者』や


『魔法剣士』といった強力なスキルを引き当て、会場は歓喜に包まれる。



 そして、最後の一人。俺の番が来た。



「鑑定……。おや、珍しい! スキルを二つ保持しております!」


「おお! 素晴らしいではないか! して、どんな能力だ?」



 王の期待に満ちた問いに、鑑定士が眉をひそめて首を傾げた。



「えっと……一つは『ペーパー・ワーク』。紙の上に墨を乗せることができる……だけ?


聞いたこともない無能スキルですな。そしてもう一つは……」



 鑑定士の顔が、恐怖に引きつった。



「『強制締切』……。国王様、これは『バッドステータス』ですぞ! 定められた時間が過ぎれば、持ち主に不幸が訪れる呪いの類です!」



「なんだと!? そんなゴミのような無能、我が国には要らぬわ!」



 さっきまでの笑顔が嘘のように、王が忌々しげに顔を歪めた。



「とっとと国外へ追放しろ! 衛兵! 運気が下がる前に、その疫病神をつまみ出せ!」



 俺は反論する間もなく、屈強な男たちに腕を掴まれた。  


せっかく手に入れた戦利品(同人誌)の山と共に、俺は異世界の冷たい路上へと放り出されることになった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ