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異世界ダンジョンで空母機動部隊は奮闘す  作者: 敵機直上急降下


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ハワイ作戦

ハワイ作戦


 遂に帰還の年が来た。

 120年はあまりにも長く、機動部隊の乗員達は元の世界の記憶が大分薄れていた。人生の大半を戦いに身を投じた事になり、異世界に来る前とは精神性も少し変化していた。


 しかし、元の世界で与えられていた任務遂行には全く支障がなかった。そのための準備も万全であり、むしろ戦闘能力は大きく増してすらいた。

 任務の目的は、東南アジアにおける南方作戦を行う上で、アメリカの介入を防ぐため、ハワイのアメリカ太平洋艦隊の戦力を削ぐ事であった。


 精神性はやや変化していたが、任務もその目的もしっかりと把握しており、早期講和という目標も覚えていた。

 もちろん日米交渉が妥結し、作戦中止命令が下れば、それに従うに否やはなかったし、いざ作戦決行となれば、全力で臨む積もりであった。


 帰還の日時を割り出した専門機関によれば、元の世界の同じ日時の海域に戻れると予測されていた。

 帰還にあたり、機動部隊以外の艦船も同行する事は可能とのことで、異世界行きを希望した女性探索者達が操船する艦船も、一緒に連れて行く事になっていた。


 同行する艦船は、航行に必要な人員だけを乗せ、できるだけ多くの艦船を持ち帰る事にしていた。

 侃々諤々の議論の末、改翔鶴型空母10隻、改陽炎型駆逐艦10隻、給油艦10隻が選ばれ同行する事になった。元の世界に帰還した後は、これら艦船は一路日本へ向かう事になっていた。


 同行する艦艇で、空母は輸送船に偽装され、駆逐艦は武装を隠蔽していた。日本に到着しても、一見艦艇と分からないように工夫がなされていた。

 空母の格納庫には航空機を満載し、空いている空間には航空機製造に使った工作機械や治具が積み込まれていた。


 120年分の膨大な報告書や資料も同行する艦船に載せており、艦船ともども海軍へ送られる事になっていた。

 事が事だけに、機動部隊から事情説明と詳細報告のため、士官が一人同行する事になっており、この船団の代表となっていた。


 迷宮都市国家では、まもなく派閥「艦隊」の主要構成員が元の世界に帰るという事で、新聞・ラジオ・テレビで大きく報じられていた。

 迷宮都市国家に科学文明をもたらし、地下迷宮深層を120年もの間第一線で探索し続けてきた彼らを知らぬ者はなく、多くの人々が別れを惜しんだ。


 いよいよ出港となり、大規模な泊地となった湾には多くの人々が見送りに訪れ、機動部隊は目標海域へ向け進みだした。

 甲板では乗員達が帽振れを行い、陸が見えなくなるまで続けられ、120年という歳月に思いを馳せていた。


 目的の海域に到着する頃、空は雷雲に覆われた。





 艦隊が雷雲を抜けると、さっそく元の世界の電波を受信することができ、無事帰る事ができたと判明した。

 艦隊は日時と位置の確認作業に入りつつ、同行してきた艦船を日本へ送り出した。


 魔法は異世界の地上と同様に使える事が確認された。

 これにより、異世界で行ってきた訓練が、そのまま役に立つ事が判ったのである。


 翌日には「ニイタカヤマノボレ一二〇八」を受信し、真珠湾攻撃の命令が下りアメリカとの開戦が確定した。

 艦隊の乗員達は静かに士気を高めていた。


 数日後には落伍していた伊23と合流し、驚愕される事になった。

 俄かには信じられない事実を並べられ混乱する伊23の艦長であったが、空母がやや大きくなった翔鶴型に統一され、見るからに若返っている艦隊司令部要員を見て無理矢理納得するしかなかったのである。





 軍令部では、開戦を前に突然現れた30隻の艦船に混乱していた。

 その船団は機動部隊の士官が率いており、膨大な報告書と共に海軍にもたらされたのである。


「機動部隊が丸ごと異世界に迷い込み、異世界で120年奮闘し、ようやく帰ってこれた。というのだな?」


 軍令部総長は搾り出すように声を出し、船団を率いてきた士官に確認した。


「はい。幸運にも異世界には延命の方法がありましたので、120年延命しつつ艦隊を再建できる段階にまで異世界を発展させ、艦隊と船団で帰ってまいりました」


 軍令部総長は、士官が魔法が使える証拠として出現させた大きな氷壁を見ながら頭を抱えた。

 何もないところから氷壁は出現し、泊地には輸送船に偽装された正規空母が10隻も現実として存在するのである。事実として受け入れざるを得ないのであった。


 聞けば異世界に行った機動部隊の乗員達は全員魔法が使え、人を超越した驚異的な身体能力を持っているという。

 それではまるで、機動部隊の皮を被った怪物の軍団ではないか。軍令部総長は、そう思いつつも口には出さず、機動部隊の奮闘を労った。


 異世界から来た船団の乗員達も、同様に魔法が使え驚異的な身体能力を持っており、女性とはいえ軽視できない集団となっていた。

 船団を率いた士官によると、彼女達も百年程戦いの中で生きてきており、来る戦争にも協力を申し出ているとのことだった。ただ見返りとして、日本への移住と国籍を求めていた。


 どんなに強いとはいえ、女性を戦場に送ればいろいろと問題も出てくるため、異世界人達は内地で海軍が預かる事になった。

 異世界人達は海軍式の訓練を既に受けており、船はもちろんのこと航空機の操縦もできるとのことっだった。困った事に、非常に使える人材ばかりだったのであった。





 機動部隊は、真珠湾攻撃を開始した。

 奇襲に拘る必要のない程の実力を有しているため、予定よりも遅く発艦を行い、現地時間十時頃に攻撃が開始された。


 しかし奇襲は成功し、第一次攻撃隊の戦闘爆撃機と攻撃機は飛行場や艦艇を爆撃した。

 投弾後は魔法攻撃が開始され、軍事施設や艦艇を攻撃していった。


 魔法は地下迷宮と比べれば、効果が落ち射程も数百mと短くなっていたが、搭乗員は全員高位階であるため十分な威力を発揮した。

 魔法攻撃は、魔力が半分になった段階で終了としており、障壁を張る魔力を残す形を取っていた。


 第二次攻撃で軍事施設からの対空砲火が沈黙し、米戦艦も対空戦闘能力を低下させていった。


 一次・二次攻撃隊を収容し、艦隊は第三次攻撃隊を編成し送り出した。

 目標は、真珠湾外に出て来るであろう米戦艦であった。


 第三次攻撃隊の攻撃機は雷装しており、真珠湾外に出ている大型艦艇をことごとく沈めていった。

 また、魔法攻撃により、オアフ島の砲台など強固な軍事施設を破壊して回った。


 第四次攻撃隊を発艦させたところで、艦隊は米空母からと思しき攻撃を受けた。

 艦隊直掩の戦闘機が対応し、撃退に成功した。撤退する米艦上機を偵察機が追跡し、米空母の発見に至った。


 三次・四次攻撃隊を収容後、米空母への攻撃は翌日に持ち越され、艦隊はオアフ島から距離をとった。


 翌日、夜間発艦した偵察機が米空母を2隻発見した。

 ただちに攻撃隊を送り出し、米空母を2隻とも仕留める事に成功するのであった。


「米艦隊の戦力は低下した。さらに米海軍の戦力を削るため、オアフ島を攻略する」


 機動部隊司令長官は力強く宣言し、陸戦隊を編成させた。

 オアフ島へさらなる空襲を行いながら艦隊は接近し、先鋒として攻撃機の後部座席の搭乗員が、落下傘なしで空挺降下していった。


 地下迷宮ほどの魔法の力は出せないが、地上でも万夫不当の猛者である搭乗員達は、問題なく先鋒を務め、陸戦隊上陸を支援した。

 魔法の射程は数百mあり、高位階の人を超越した驚異的な身体能力を持つ陸戦隊は、次々と米軍の抵抗を粉砕していき占領地を広げていった。


 機動部隊は、南方作戦へのアメリカの介入を防ぐという目的を果たし、米海軍の戦力を削ぐ事にも成功した。

 艦隊はハワイ諸島を占領していき、ミッドウェー島やジョンストン島なども占領していった。


 機動部隊司令長官は、即断即決・臨機応変な判断を行い、ハワイ作戦で大勝利を収めたのであった。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
占領やない、それは蹂躙やで・・・
スカッとする内容で読みやすくて面白いです。毎日の更新、楽しみにしています。
こちら側からしたら 「空母機動艦隊が消えたと思ったら、そこに居た。ちょっと見た目が違うけど」 なんですよね?
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