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人気者の君と一人ぼっちの僕  作者: 浅井天


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新たな出会い

僕は今日も補習に来ている。今日で4日目だ。補習期間のちょうど真ん中だ。まだ半分あると思うとかなり長く感じる。

昨日も一昨日も木下さんは生徒会の仕事の後に勉強を教えに来てくれた。この3日間はすごく楽しい補習になっていた。先生が山本君に教えて、木下さんが僕に教えるこの空間が僕にとっての普通になろうとしていた。

普通という言葉を思い浮かべたが普通って何だろう。

特徴のないもののことなのかそれとも、その人にとって当たり前なことだろうか。

僕は後者だと思う。教室では1人でいることが当たり前で学校では誰とも話さないことが当たり前だった。それが普通の学校生活だった。

とはいえ、社会という実態のない存在は僕の学校生活を普通であるとは判断しないだろう。

僕の普通は社会にとって普通ではない。

社会という他者に触れた時、自分の普通がおかしい事を指摘され、馬鹿にされる。

人々は馬鹿にされるのが嫌で、

明確な輪郭のない社会に合わせて、長年自分で作り上げた普通を簡単に変化させてしまう。

僕自身も長年、作り上げた普通を変えようと努力することを決意し実際に行動を起こそうとしている最中だ。

普通には正解などないにも関わらず、他者をまねて変化させる。

普通とは個人の経験や生活環境によって変わる、可変的な存在なのだろう。


いつも通りプリントが配られて、山本君が先生を呼び、僕は一人で解き始める。木下さんに教えてもらった成果だろうか。かなり、すらすら問題が解けている。あまり悩むことはなく、気づいたら11時にはすべて解き終わっていた。

木下さんがくる前に解き終わってしまった。このままでは、木下さんに教えてもらう問題がないが自信のないところを教えてもらえばいいかと思いながら木下さんが来るのを待っている自分がいた。人を待つということをしたことがなかったので不思議な感じだ。

今日はなかなか木下さんが来ない。

何かあったのだろうか。事件か事故に巻き込まれたのだろうか。その時気づいた。3日間で感覚がバグっていたと。僕と木下さんは別に親しい友人でも恋人でもないのだから毎日勉強を見に来ることがあるわけないではないか。約束をしていたわけでもないのだから絶対に来るという保証はどこにもないではないか。自分がただ一人で舞い上がっていただけだ。木下さんはただクラスメイトが勉強が苦手だから教えてあげるという純粋な善意だったのだ。自分自身の価値を間違えていた。木下さんと仲良くなるだけの魅力はない。


僕は木下さんを待つことをやめて帰ろうと思い、先生にプリントを提出した。僕が先生にプリントを渡したと同時に山本君も終わったようだ。山本君も先生にプリントを渡した。僕は荷物をまとめて帰る支度をしていると山本君が話しかけてきた。「帰るの?木下さんは?今日は来ないの?」

僕は「うん」とだけ答えて教室を出ようとした。

山本君は「じゃあ、途中まで一緒に帰ろう。家どこら辺?」と言ってきた。僕は悩んだが断るのもあれなので一緒に帰ることにした。「いいよ、笹岡の方に住んでる。」山本君は「なら近いよ、俺、竹中の方」

僕と山本君は先生にさようならと言って教室を出ていった。昇降口に向かいながら話していると山本君の第一印象はあまり人と関わらない人かと思っていたがそんなことはなかった。すごく人と接するのがうまいと感じた。僕は彼から学ぶところが多いのかもしれない。

「山本君は何組なの?」僕は当たり障りのない質問しかすることができない。

「1組。てか、俺の下の名前拓海っていうから拓海って呼んでよ。これから仲良くしよ。木村君は下の名前なんて言うの?」

「綾斗」

「おっけい、綾斗ね。これからよろしく」自分ことを下の名前で呼ぶ人、家族以外なら初めてかもしれない。

拓海は「綾斗って木下さんと付き合ってるの?」と聞いてきたので僕は驚いた。「え、、、付き合ってないよ」そう答えた僕を見て拓海はそのあと木下さんの話題は全く出してこなかった。

彼なりの気遣いなのだろう。今日初めて直接会話をしたのに僕があまり触れてほしくない、会話のネタにしたくないことを理解して深堀してこなかったのだろう。

実際、僕は異性についての会話で過去につらい経験をしたことがあった。

小学生の頃、友達に仲良くしていた女の子のことを聞かれて僕自身は友達的な好きのつもりで答えたつもりだったのに友達は恋愛的な好きだと解釈して周りに広めてしまった。もちろん、本人にもその情報は入るわけだ。本当は本人に弁明するべきだったのかもしれない。僕はそれができなかった。周りに揶揄されるのが嫌で避けるようになって、その子と話すことがなくなってしまった経験があったからだ。




「じゃあ、俺こっちだから。また、明日の補習でな綾斗。」

「うん、ばいばい拓海。」拓海と帰っていたので木下さんのことをすっかり忘れてしまっていた。

心のどこかではまだ少し期待してしまっている自分がいることに気づく、諦めようと思ったはずなのに。一度幸せを味わうと戻れないのだと気づいた。

「明日は会いたいな」小さな声で呟いている自分がいた。

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