私はあなたに何かしてあげれましたか?
席替え当日の私の発言からクラスメイトが木村君をあからさまにいじめるということはなくなった。
私は木村君のために行動、発言して周りの行動を正すことができたのだろう。
いじめがなくなったはずなのに木村君は今までより元気がないように感じる。話しかければ必ず話してくれるのにやはりどこか元気がない。
いじめをなくしたいという私の正義感は彼にとってはお節介だったのだろうか。私にとっては正義であっても彼にとっては正義ではなかったのだろうか。自分の過ごしてきた人生によって組み立てられた正義感を彼に押し付けてしまっていたのだろうか。彼の過ごしてきた人生について知ろうともしていなかった。
私は彼に何もしないほうがよかったのかな
私は彼に話しかけないほうがよかったのかな
この正解が存在するのかもわからない難問について考えながら下校をしていた。少し違う刺激が欲しかったのでいつもとは違う道で下校することにした。いつもと違う道、建物、風景、すべてが見慣れないものだったが普通の公園の近くを歩いている時視界の端に見慣れた制服と顔の人が数人いた。イヤフォンをしていたがすこし声が聞こえてきた。
その数人は木村君とクラスメイトの男子だった。仲良く遊んでいるとは到底思えないような言葉と行動の攻防だった。余計なお世話になるかもしれないと考えてしまい止めに入るべきか迷ったが頭がそんなことを考えている間にすでに体は動いていた。
「ちょっと、藤村君、岡崎君、木村君喧嘩はやめなよ」
そういうと藤村君と岡崎君は何も言わずにどこかに行ってしまった。
「木村君大丈夫?3人で何してたの?喧嘩?それともいじめ?」
あまりにも衝撃的なシーンのあまり私は質問攻めをしてしまった。
「大丈夫、なんでもないよ」
そういって木村君は立ち去ろうとした。私は反射で木村君の手を握ってしまっていた。
「お願い、何があったのか教えて。私、木村君が喧嘩をするような人に思えない。だから、もしかしていじめなくなってなかった?学校で周りが木村君のことを無視したりすることがなくなったからいじめはなくなったんだって思い込んでた。自分がいじめを止めたんだって思いあがってた。
でも、木村君学校で元気なさそうだったし余計なことしたのかなとか考えてどうすればいいのかわからなくなって…」
私は後半泣きながら話していた。本当は泣くつもりなんてなかったのに木村君を困らせるだけだってわかってたから。
私は本当にまだ未熟な人間だ。何も見えてなかった、考えれてなかった。
木村君は砂の付いた制服をはらいながら私が発する涙交じりの声を黙って聞いていくれていた。私の涙が落ち着くと木村君は話し出した。
「結果はどうであれ変わるきっかけをくれたのは木下さんだよ。もうすでにたくさんのことをしてもらったしたくさんのものをもらってるよ。だから、ありがとう木下さん。」
私は落ち着いたはずの涙が再びあふれてしまったのでしばらく何もできなかった。




