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人気者の君と一人ぼっちの僕  作者: 浅井天


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19/28

文化祭

文化祭当日だというのに学校について最初にすることが自分のスリッパを探すことだとは情けないものだな。登校の時間だから人がぞろぞろと入ってくるのに僕はきょろきょろしながら自分のスリッパを探しているなんて恥ずかしいものだ。掃除ロッカーの中にあった。あの人はなんであんなところを開けてるんだという他の生徒たちの訝しがる表情と視線がつらい。現実にブロックやミュート機能があれば僕の行動が見られなくて済むのにとかつまらないことを考えた。


全校生徒が体育館に集まって文化祭が始まった。体育館内に椅子がきれいに並べられ各クラス名簿順に座る。しっかり、自分の席に座っているのは最初だけで休憩を挟んでいけば名簿順なんてうやむやになっていく。結局、仲の良いもの同士が固まって人気のある人たちのところに人が寄っていくのだ。結果的に僕は文化祭が進めば進むほど端の方に寄っていく。体の中から不純物を取り除くがごとく、少しづつ少しづつ端に寄っていく。木村だから割と名簿は早い方に分類されるのに気づいたら後ろの方になっており、隣が森岡さんになっていた。

「お、木村君じゃん。こんなに端まで寄ってきたの?」

「うん、だんだん端の方に追いやられちゃって。森岡さんは動いてないんだね」

「木村君の2つ隣り雪ちゃんだもんね、仕方がないね。うん、私は動いてないよ」

「木村君私もいるんだけど、気づいてる?」

森岡さんの隣に石川さんがいた。全然気づかなかった。

「あ、ごめん。石川さんおはよう」

「ひどいなー木村君」笑っていた。

「茜ちょっと影薄かったんじゃない?」森岡さんはそう言って石川さんをいじっていた。

「今日、木村君ちょっとテンション低いんじゃない?疲れてるの?」石川さんが言うと森岡さんが「それな、元気ないよね」と言った。

「いや、そんなことないと思うんだけどな」

2人は口をそろえて「はい、絶対嘘だ。木村君嘘つくの下手だねー。結構いろいろ作業してたから疲れたまってるんじゃない?今日はゆっくり休みな」

休むという言葉を聞いて昨日のことを思い出してしまった。反射的に大きな声を出してしまいそうだったがぐっとこらえて深呼吸をして言葉を発した。

「ありがとう、今日はゆっくり楽しむよ」

休憩が終わり劇が再開されたので話をやめてステージの方を見た。まだ2年生の劇なので自分たちのクラスの出番はまだ少し先だ。


少し時間が経って2年生の劇が終わったので休憩になった。僕はトイレに行くことにした。

「木村君どっか行くの?」森岡さんと石川さんに聞かれた。

「ちょっと、トイレに行こうかなと」

「そうなんだ、行ってらっしゃい。席は守っといてあげる」森岡さんが言った。

「ありがとう、でも誰もこんな端っこ来ないでしょ」

「いや、わかんないよー私たちモテるかもしれないから」石川さんが言った。

「それは、確かに」

「いやないだろ」森岡さんが突っ込んだ。2人が笑った。

「木村君優しいね、トイレいってらっしゃい」

「うん」


僕はトイレに向かった。一番近いトイレはすごく混んでいたので少し離れたところのトイレに行くことにした。トイレに着くと話し声が聞こえてきた。こんなところにも来てる人いるんだと思いつつ中に入った。

「文化祭終わったら木下さんに告白しようかなー」

「えーまじ、いけるか?」

「任せろって、かますわ」

僕は用を足しながら洗面台の前で話している会話を聞いている。木下さんがモテることは最初から分かっていた。付き合いたいと思う人が多いのも当然だろう。そんなことははなからわかっていたはずなのになんで、モヤモヤするんだよ。体の内が重たく透き通らないこの気持ちはなんだ。今まで他人が誰と話そうが誰と付き合おうが興味なかったのに。

トイレにいったのにすっきりしないまま、僕は体育館に戻った。

「あ、おかえり。席残ってるよ」

「2人ともありがとう」

「顔色の悪さ増してない?」

「本当?なんでだろ。そういえば、人は寄ってきた?」

「あー、これからかな。」「そうだねー」「たぶん、私たち輝き過ぎてなかなか声をかけれないんだよ」「だね」「これからだよね本番は」「放課後がピークよね」2人はだんだん声が小さくなっていったので最後の方は良く聞き取れなかったが誰も来なかったようだ。


3年生の劇が始まり、2人は友達を見つけてのか盛り上がっているが僕は知っている人がいないので単純に劇を眺めているだけだ。少しづつ自分たちのクラスの出番が近づいてきた。3年の劇が半分終わると再び休憩に入り役者たちは着替えに向かったので人が一気に減った。

役者たちが着替えから帰ってくるとクラスはステージの近くの方で待機することになった。みんなおしゃれだなと思いながらこれが青春かと感心していた。

前のクラスが終わり自分たちのクラスの番になった。クラスメイト全員で円陣を組んだ。西村壮太が「みんな、頑張るぞー」と声をかけてみんなが「おー」と言った。

そこからはリハーサルで見た光景で特にトラブルなく終えることができた。自分たちのクラスが終わるとやり切った達成感と喪失感からか泣いている人もいた。


次の劇が最後だと思うと早いものだ。拓海は出るのだろうか。

劇が始まった。最初は数人の不良が話している場面から始まりみな特段盛り上がるといったことはなかったが突然、ゴミ拾いしているおじいちゃんが出てきたことによって体育館が笑いに包まれみな目を輝かせだした。これが、副生徒会長か。おじいちゃんの衣装になってもかっこいいのがずるいものだ。副会長は同学年だけでなく後輩からも人気の高いようで後ろの方からも副会長のことを話す声が聞こえてくる。

「やっぱり、副会長が一番イケメンだよね」石川さんと森岡さんも話していた。

そのあと拓海はゴミ拾いしているおばあちゃん役として登場してきてさっきのおじいちゃんとは夫婦関係のようでその2人が実はめちゃくちゃ喧嘩が強くて不良たちを更生させていくという話だった。

そういった具合で劇は終わり、一旦教室に戻って昼ご飯を食べて午後からは有志発表ということでバンドや漫才が行われる。


午後の体育館では大迫力の音楽と笑い声が響き渡り盛り上がりを増している。時間が進むにつれて終わりが近づいてこの楽しい時間が終わってしまってまた、受験勉強に本腰を入れなければいけないのだ。この楽しい時間を噛みしめたい気持ちと楽しい時間が終わってしまう悲しさが体育館を包み込んでいる。

トリのバンドの演奏になるとみな楽しいという感情を出し切ろうと全力を出し盛り上がりは最高潮に達していた。体育館がつぶれてしまうのではないかと思った。人生で一度はやってみたいことランキングトップ100ぐらいには入るであろうアンコールも行われ最後の曲と共に文化祭の終幕が告げられた。


放課後になると余韻に浸りつつ片付けが始まった。運動部は力仕事ということで体育館の片付けに駆り出されてそのほかの人たちは自分たちのクラスが使った場所を掃除する。なかなか、掃除は進まない。なぜなら、写真を撮りあっている人たちがほとんどだからだ。掃除が終わってしまうと文化祭という雰囲気はなくなり普段の学校に戻ってしまうから今のうちに噛みしめておきたいのだろう。掃除をしながらこそこそ話している人たちもいる。

「木村君も写真撮ろうよ」石川さんと森岡さんだ。最近、よく話しかけてくれるな。

「うん、いいよ」

2人と写真を撮ったら、他の数人の女子とも写真を撮った。

ふと、木下さんのことが気になって探して廊下の方に目をやるとすごい列になっていた。男女から人気があるから人気芸能人レベルで列ができている。これはすごいなと思いつつ疲れるだろうなと考えてしまった。

「あれ、すごいよね。」

「おーびっくりした」驚いて変な声が出てしまった。

「あ、ごめん」

「石川さん声かけるなら言ってよ」

「ごめんって」二回目のごめんは笑っていた。

「木下さんすごく人気だよね」

「すごいよね、アイドルみたいになってる。ちなみに副会長の上田君も今あんな感じだと思うよ。陽菜見に行ったし」

「えーそうなの。副会長も人気あるんだね。森岡さん、副会長のこと好きなの?」

「さあね」石川さんはとぼけた顔をした。

「そうなんだ」それ以上深入りするのはあまりよくないかと思い深くは聞かなかった。ごまかすということはあまり言いたくないことに決まっているのだから。

「逆にあそこまで人が並んでいると写真を撮るハードルが下がるよね」

「なんで?」

「だって、1人で立っているところに話しかけるよりも大勢がいるところに混ざって話しかける方が断然楽じゃない?」

「あー確かに。静かな教室では話しかけるの難しいけど騒がしい教室なら話しかけやすい的な感じか」

「そうそう、木村君わかってるねー」

「この状況を作った人はすごいよね。最初はあんなに列がなかったわけだから最初に木下さんに話しかけた人はすごく勇気が必要だっただろうね」

「確かにね、まあ友達なら簡単だろうけど」

「確かに」

「0を1にするのが一番大変なんだよね」

「そうなんだよ」この0を1にすることが一番大変だという考えが僕の一つの人生観だったのでそれを石川さんが言ったことに感動を覚えた。


40分ぐらい経ったら列はなくなっていた。木下さんが教室の中に戻ってきて窓際で石川さんと話している僕を見つけると近づいてきた。

「木村君、写真撮ろう」

「え、木下さんあんなにとってたのにまだとるの?」僕は驚いてしまった。もう、へとへとだろうに。

「木村君とはまだとってないじゃん」

「確かにそうだね」僕はうれしくなった。変な笑顔になっていないだろうか。

「じゃあ、私がとるよ」石川さんが言ってくれた。

「ありがとう茜ちゃん。お願い」

「おっけい、撮るよー。はい撮れたよ」

「ありがとう、木村君いい笑顔してるよ」

「え、どんな感じ?」僕は写真を見せてもらった。

「いや、どこがいいねん」不器用な笑顔だった。

「かわいいじゃん」木下さんと石川さんはそう言ってくれたけど僕は全くそう思わなかった。

そんなことをしていると森岡さんが戻ってきた。

「おかえり、陽菜。写真撮れた?」

「ただいま、撮れたよー。めっちゃ並んでた」

「陽菜ちゃんどこ行ってたの?」木下さんが聞いた。

「副会長のところ行ってたの」

「上田君のところか、やっぱり人気だよね」

「雪ちゃんもすごい人気だったね。すごい列でびっくりしちゃった」

「私も驚いたよあそこまでとは思わなかった。幸せなことだけどね」

「だよね」

「陽菜ちゃんと茜ちゃんも写真撮ろう」

「うん」2人は返事して写真を撮った。


放課後、人がまばらになった学校で告白をしたりしているのだろう。

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