第6話 ふたなりの夫婦
以前から夫のやり方に対する不満と危惧を募らせていた王妃は、暴走を止めるべく夫の暗殺を企てたが失敗に終わった。
アイーシャが王位につく条件で、王妃の助命にこぎ着けた。
迷走かつ暴走した王は退位させられ軟禁となり、アイーシャが即位した。
その隣には夫となったカシムがいた。
宰相の甥という高位の出身で、家臣団からも評判の良かった彼との結婚は、驚かれはしても反対されることはなかった。
既にアイーシャは妊娠し、カシムもまた身籠っていた。
新郎新婦が共に妊娠中という状態に、周囲や民衆は度肝を抜かれた。
二人はほぼ同時期に出産した。
アイーシャはカシム似の男女の双子を、カシムはアイーシャにそっくりな男女の双子を産み、更に驚愕させた。
アイーシャの即位式には二人の王子と二人の王女達も参列し、盛大な祝賀となった。
なぜカシムを伴侶に選んだのかと問われると
「その者、どちらも満たすものなれば」
そのようにアイーシャは回答した。
そして、自分自身もどちらも満たすものだったからだと、自分が両性具有であることを公表した。
ふたなりの中には子を成せない者は多いが、アイーシャとカシムは偶然にもそうではなかった。
予言の通りアイーシャを王であり女王にできたのは、その伴侶もまた同様に両性具有だったからだ。
『両性具有の王が国を治める時は繁栄する』
その言い伝えを証明すべく、二人は尽力した。
アイーシャは異母兄妹、おじと姪、おばと甥との婚姻の禁止を定めた。
無益な権力闘争を助長させないためだ。
近隣諸国も次第にそれに倣うようになっていった。
アイーシャとカシムの子孫達も善政を敷き、日没する国は長きにわたり栄えた。
それによってふたなりの者達の社会的地位も向上し、蔑みを受けることも忌み嫌われることはなくなっていった。
この国では、子を成そうが成すまいが、ふたなりは幸運の象徴なのだから。
以来、日没する国では、繁栄の象徴として共に妊娠した新郎新婦の図が用いられるようになった。
現在でも縁結び、子宝、夫婦円満、子孫繁栄の御守りのモチーフとして不動の人気を博している。
そのモチーフ名は「ふたなりの夫婦」と呼ばれ、結婚等の祝いの席での菓子の模様から、土産物のタイルや木彫りの小物まで広く使われている。
また、ふたなりの夫婦の足元や頭上、あるいは夫婦に被せてこの定型文が必ず添えられている。
「その者、どちらも満たすものなれば」と。
(了)
最後までお読みくださりありがとうございました。
いかがだったでしょうか?
ラブシーンを書くの難しい······いや、超絶恥ずかしいものですね。
TL、BLの作者様は凄い。尊敬致します。
(TL、BLを書く予定は毛頭ありませんが)
まだまだ修行中、先は長いなあ···。(遠い目)
また別の作品でお会いできれば嬉しいです。