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ロボット侍、悪霊を退治する

外に出てはみたものの、手掛かりとなるものを何も持っていないのでとりあえず

周辺を回ってみた。



勘兵衛:「この辺りは大体歩いてみたが奴の霊気は全く感じないな

    恐らくこの周辺にはいないのだろう」


カリン:「じゃあ、もう少し遠くまで行ってみる?」


勘兵衛:「そうだな、もっと人の多そうなところに行ってみるか」


カリン:「だったら駅とかはどうかな?」


勘兵衛:「お、良いかもしれないな

    しかし俺はこの辺りには全く土地勘がなくてな、カリンはこの辺の

    地理には詳しいのか?」


カリン:「うーん、それ程でもないけど、生きてた時に何回かは

    来たことあるかな」


勘兵衛:「そうか、じゃあ駅まで案内してくれるか?」


カリン:「うん、分かった」



カリンの記憶を頼りに近くの駅まで歩きだした。

すると途中に人が沢山集まっている場所があり、何やら物々しい雰囲気で

多くの人が遠巻きに向こう側を眺めていた。



勘兵衛:「なにやら騒がしいな」


カリン:「何かあったのかな?」


とりあえず近くまで行って見物人の一人に話しかけた。


勘兵衛:「これは一体何の騒ぎなんだ?」


見物人:「コンビニ強盗みたいですよ

     刃物を持った男が客を人質にして立て籠もってるらしいです。」


勘兵衛:「うーむ、人が多すぎてここからでは良く判らんな

     もう少し近くに行きたいがこの混雑ではな・・・」


カリン:「あの歩道橋の上からなら見えないかな」


そう言ってカリンは30mくらい離れたところにある歩道橋を指し示した。


勘兵衛:「少し距離が遠くないか?」


カリン:「大丈夫、私たちの身体には望遠機能が付いてるってセンセーが

    言ってたよ」


勘兵衛:「えっ!そんな機能が付いていたのか、あの科学者、侮れないな

     ではとりあえずあの歩道橋まで行ってみるか」



二人は歩道橋の上まで登って来ると店の方を眺めた。



勘兵衛:「おぉ、確かにここなら店が見えるな、しかし、やはりこの距離では

    店内までは分からんな」


カリン:「じゃあ、早速望遠機能を使ってみようよ

     視界の右下に ”+” と ”-” のマークがあるでしょ

     その ”+” の方を見ながら「押す」ように意識をしてみて」


勘兵衛:「”+” を見ながら押すって、こんな感じか、えいっ・・・と

     お、少し大きく見えるようになったぞ」


カリン:「そうそう、押すたびに大きくなるから

     良く見えるようになるまで繰り返してみて」


勘兵衛:「なるほど、えい、えい、えいっと

     おぉ、はっきり中の様子が分かるようになったぞ。

     うーむ、確かに刃物を持った奴が人質を抱えているようだな

     近くにいるのは、警官か?」


カリン:「そうだね、それより勘兵衛、あの犯人の男、なんか変じゃない?」


勘兵衛:「ああ、そうだな

     あいつには魂が2つ重なって見えるな

     恐らく誰かの霊が憑依しているのだろう」


カリン:「うん、その霊に操られているのかも」


勘兵衛:「そうだな、操られているかまでは分からんが

     精神に何らかの影響を受けている可能性が高いな」


カリン:「もしかしたら、勘兵衛の探している奴かもしれないよ」


勘兵衛:「いや、その可能性は低そうだ、奴ならこの距離であれば

    霊気が届くはずだが、何も感じないからな

    とはいえ、この状況を放っておくわけにもいかんな

    何とか近付けないものか・・・」



二人は歩道橋を駆け下り、急いで店に向かうが、やはり人ごみに阻まれ

近付けない。



カリン:「私だけなら上手くすり抜けられそう、先に行って何とかしてみるよ」


勘兵衛:「わかった、俺も後から行くからあまり無理をするなよ」



カリンは比較的人の少ない場所から、足元の隙間を縫って、人混みをすり抜け

店へと走った。



警官:「なんだ? 犬か? どこから紛れ込んだんだ?」



店の前まで来ると、警官がカリンを見つけ捕まえようと、手を伸ばしてきたが

素早くかわして店に突入する。

店に入ったカリンは一直線に犯人に向かって突進していく。



犯人:「な、なんだこの犬、一体どこから」



次の瞬間カリンは飛び上がり犯人の腕に噛みついた。



犯人:「うわぁ!、い、いてぇ、このクソ犬、離せ、離しやがれ!」



カリンに気を取られている間に、犯人は人質から手を離してしまい

その隙に逃げ出した人質は警官に保護された。



犯人:「く、くっそー、いい加減に離せ、このクソ犬がぁ」



カリンを振り払うと、犯人は窓を蹴破って外に逃げた。

丁度そこへ、ようやく人混みを潜り抜けてきた勘兵衛と鉢合わせた。



勘兵衛:「人に憑りついて悪さをするのはやめろ、悪霊」


 犯人:「な、なんだお前は、何を言ってやがる

    変な恰好しやがって、邪魔すんじゃねぇ」



犯人が殴り掛かっていくが勘兵衛は軽く身をかわし足を掛けて犯人を転ばせた。



勘兵衛:「まずはお前をこの人間から引き剥がさなくてはな」



そう言って勘兵衛はタマシーバスターを抜くと、倒れている犯人に斬り掛かった。


ザシュッ!



 悪霊:「うぅぎゃぁぁーっ!」



勘兵衛が振り抜いた光の刃は、犯人に憑りつく悪霊に大ダメージを与えた。

あまりの苦痛に犯人の身体から飛び出し、地面でもだえ苦しむ。

しかし犯人の身体には傷一つ付いていない。


 犯人:「な、なんだ今の声? お、俺は何ともないのに・・・」


勘兵衛:「どうやら、お前がこの人間に憑いていた悪霊だな」


 悪霊:「うぅ、お前の仕業か、一体何をした?」


勘兵衛:「俺の刀、タマシーバスターでお前をあの男から引き剥がしただけだが」


 悪霊:「引き剥がしただと? そのふざけた刀でか?

    そもそもお前は一体何者なんだ?」


勘兵衛:「俺はゆうれい侍改め、ロボット侍の勘兵衛だ

    とある人物を探していてな、人物と言っても

    もうこの世の者ではないんだが

    お前、定吉という幽霊を知らないか?」


 悪霊:「定吉だぁ? 知るかそんな奴、それよりお前

    俺にこんなことして───」



ザシュッ!



勘兵衛が再度悪霊を斬り付ける。



 悪霊:「うぎゃあー!」


勘兵衛:「本当に知らんのか? お前の様な輩は総じて嘘つきだからな

    言ったことをはいそうですかと信用する訳にはいかん」



勘兵衛と悪霊のやり取りを、驚いた表情で犯人が見ている。

どうやら犯人には悪霊の声は聞こえても姿は見えないらしい。



 犯人:「あんた、一体さっきから誰と話してるんだ、それに俺は何で強盗なんか

    確か眩暈がしたと思ったら突然暴力的な衝動が湧いて・・・」



もだえ苦しむ悪霊、混乱している犯人、丁度そこへカリンがやって来た。



勘兵衛:「おぉ、カリン、無事だったか」


カリン:「うん、人質は警察が保護してくれたよ」


勘兵衛:「それはなによりだ、こちらも今、悪霊を引きずり出したところだ」



そう言って再度刀を振り上げる。



勘兵衛:「この刀は斬り付ける度に対象の霊力をごっそり奪い取る

    さっさと定吉の居場所を言わねば、搾りカスになるまで

    斬りつけてやるぞ」    


 悪霊:「し、知らない、ホントにそんな奴知らないんだ

    俺はただあの男に憑りついて悪事を楽しんでいただけだ」



ザシュッ!



 悪霊:「ぐぅわぁーっ! 頼む、頼むからもうやめてくれ

    ホントに俺はその定吉とかいう奴とは無関係なんだ」


カリン:「勘兵衛どうするの? センセーに渡されたアレに捕縛する?」


勘兵衛:「そうだな、コイツを野放しにしておくのは危険だな

    柳田に言われた通り、捕縛するのが無難だろう」


カリン:「じゃあ、早速捕縛用のタマシーキャッチャーで───」


勘兵衛:「あー、いやその前に、もう少しコイツに聞きたいことがあってな」


カリン:「え? そうなの、何?」


勘兵衛:「お前が、定吉のことを知らないのは分かった、それはもういい

    その上で改めて聞くが、この辺りで強大な力を持つ悪霊についての

    情報を何か知っているか?」


 悪霊:「強大な奴? そ、それを教えれば見逃してくれるか?」


勘兵衛:「それは内容次第だな」


 悪霊:「俺が憑りついていたあの男の職場で、同僚の人間が言っていたんだが

    大量の悪霊を従えている悪魔王とかいうヤバい奴がいるって噂がある

    らしい、それ以上の詳しいことは知らない・・・」


勘兵衛:「悪魔王・・・あまり信憑性のある情報とは思えんな

    しかし他に手がかりもないしな、一応探ってみるか」


 悪霊:「ど、どうだ、役に立っただろ、見逃してくれるよな」


勘兵衛:「カリン、捕縛用のタマシーキャッチャーだ」


カリン:「はいよ」



カリンが口にくわえたタマシーキャッチャーを勘兵衛に投げる。

勘兵衛はそれを左手で受け取ると、悪霊に吸引口を向けた。



勘兵衛:「では、お前を捕縛する」


 悪霊:「え? や、約束が違う、見逃してくれるんじゃ───」


勘兵衛:「お前みたいな悪霊を見逃すわけがないだろう

    安心しろ、消滅させたりはしない、この中に捕縛するだけだ」


 悪霊:「な、何だそれは、俺をどうするつもりだ?」


勘兵衛:「こいつはお前を捕縛するための装置で

    取り込むとお前の霊力を吸い続け常に一割以下に抑え込む」


 悪霊:「い、嫌だー、そんなものに入りたくない、嫌だぁー!」



這いつくばって逃げようとする悪霊の背後から、勘兵衛は吸引ボタンを押した。


バシューッ!


悪霊は地面から引き剥がされ、タマシーキャッチャーの中に

吸い込まれていく。



 悪霊:「うわぁぁーー!」


ボンッ!


勘兵衛:「捕縛完了だな、あの女の手に渡ればもう二度と外には出られんだろう

    実験体にされて消滅するより苦しい思いをするかもしれん」


カリン:「勘兵衛・・・・センセーを何だと思ってるの?」



ここで、恐怖と混乱で固まっていた犯人の存在を思い出した。



カリン:「そういえば、この人どうするの?」


勘兵衛:「生きた人間は我々の専門外だな、警察が何とかするだろう」



勘兵衛が男に向かって話しかける。



勘兵衛:「おいお前、心に隙があるからあのような悪霊に付け入られてしまうんだ

    これからはもっと自分をしっかり持つことだな」



少し離れた位置でこちらの様子を見ていた警官達が近付いてきて

犯人を取り押さえる。

悪霊が離れたことで毒気が抜けたようで、大人しく連行されていく。

ひとりの警官が勘兵衛とカリンに近付いてきた。



 警官:「あんたのお陰であの男を逮捕出来た、という事で良いのかな?」


勘兵衛:「俺というよりは、このカリンの手柄だろう

    俺は生きた人間には興味が無い、ただ悪霊を退治しただけだ」


 警官:「悪霊? 何のことか分からないが、取り合えずあんたにも

    署に来てもらって話を聞きたいんだがよろしいか?」


勘兵衛:「断る、俺にはやらねばならないことがあるのでな

    無駄なことに時間を取られたくない」


カリン:「勘兵衛、警察に盾突くとこれからの活動に支障が出かねないから

    ここは従っておいた方が良いよ」


勘兵衛:「ん、そうか、お前がそう言うならそうしておくか」



勘兵衛とカリンはパトカーに乗せられ警察署に連れて行かれた。

長々と色々話を聞かれた後、柳田が迎えに来て帰ることになった。



 柳田:「全く、お前ら初日から私に迷惑を掛けやがって」


勘兵衛:「そう怒るな、そら土産だ」



悪霊の入ったタマシーキャッチャーを柳田に渡す。



 柳田:「ほう、初日から早速実験体を入手するとは、流石だな」


カリン:「へへー、私も手伝ったんだよ」


 柳田:「そうか、ではさっさと帰るとするか」

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