42.戦い
「さあ、早く校舎へ!!」
アラン先生が生徒たちを校舎の中に導いている。
「僕たちも逃げよう!」
「あ、ああ」
ベンジャミンもそろそろと足を動かし校舎の方を向いた。
「危ない!」
ライラ・クロークの声が響いた瞬間、ドラゴンの足がベンジャミンを捕えた。
「うわあっ」
「ベンジャミン!」
ドラゴンはベンジャミンをつかんだまま、空に舞い上がった。
「このっ!」
ライラがドラゴンの足の付け根に向けて、氷の刃を放った。
「強化魔法!」
カノンは氷の刃に向かって手をかざし、魔力を送った。氷の刃が固く、鋭く強化される。
研ぎ澄まされた氷の刃が、ドラゴンの足の根元をえぐった。ベンジャミンをつかむ足の力が弱まる。
「……!? これは!?」
ライラが振り返り、カノンを見つめる。カノンの首に光るペンダントを見て、ライラは息をのんだ。
「まさか……カノン!?」
「かあさん……いえ、ライラ」
ライラとカノンが見つめあい、一瞬時が止まったようにカノンは感じた。
「うわああああっ」
「ベンジャミン!」
ライラが落下するベンジャミンに空中で追いつき、抱きとめた。
「君、大丈夫?」
「は、はい」
ベンジャミンは血の気の失せた顔でガクガクと頷いた。
「良かった。さあ、早く逃げなさい」
ライラはベンジャミンを地上におろすと、また空に駆けあがった。
「カノン、貴方も逃げなさい」
「いいえ! 僕は貴方と一緒に戦います!」
カノンは地上から、ライラに向けて強化魔法をかけ続けた。
「ぐおおおっ」
ドラゴンの声が大地を震わせる。
「弱ってきたわね……これならドラゴンを時のはざまに封印できる……!!」
ライラが調律魔法を唱えると、青空に浮かんだ亀裂のような暗闇が、一層大きく深く、ドラゴンの脇で広がった。
「ファイアーボール!」
ライラが巨大な火球をドラゴンにぶつけた。衝撃で、ドラゴンが暗闇の押し込まれる。
「さあ、時空のはざまを漂いなさい!!」
ライラが調律魔法をかけると、時空の亀裂が大きく揺らいだ。その揺らぎにライラも飲み込まれそうだ。
「ライラ・クローク! ダメだ! 逃げて!」
カノンは叫んだ。
「私のことは……忘れなさい!」
ライラは寂し気な笑顔で、カノンに言った。
「嫌だ!!」
カノンはありったけの力を込めて、ドラゴンを飲み込んだ時空の亀裂に向かって、調律魔法を放った。
ライラが時空の亀裂から逃げるように、地上に降り立った。
カノンはライラに駆け寄り、その手を取った。
「ライラさん……一緒に逃げよう!」
「駄目よ、カノン……。私は時空の亀裂を閉じなくてはいけないの。あの亀裂の中に入って……調律魔法を使わなくてはいけない」
ライラはもう一度、空中に身を浮かせ、時空の亀裂に向かおうとした。
「駄目だ!」
カノンはライラにしがみついた。カノンの体も宙に浮いた。
ライラと共に時空の亀裂の中に入ると、カノンのペンダントが赤い光を放ち始めた。
「貴方は地上に戻るのよ」
ライラがカノンのペンダントに魔力を送った。ペンダントが強く発光し、カノンの体がライラから離れたと思った瞬間、カノンは地上に降り立っていた。
「ライラ!! 貴方も逃げて!!」
地上におろされたカノンは、ありったけの魔力をペンダントに込めて、ライラに投げた。
ペンダントはきらめきながら、時空の亀裂の中に入ったライラの手に吸い込まれるような、軌跡を描いた。




