17.森での休息
カノンは一日の授業を終えると、夕食までの空き時間を一人、森で過ごした。
「ああ、疲れたなあ」
カノンは森の木にもたれかかって目を閉じた。
「エリス先生、驚いてたな……それにみんなも……」
カノンが調律魔法を使ったとき、みんな目を丸くしていた。
「僕、特別なことだって思ってなかったけど……そうじゃないのかな」
カノンの足元にリスが寄ってきた。カノンはリスを眺めていた。ふと、自分の寄りかかっている気が椎の木だということに気づいた。
「リスさん、ちょっと待っててね」
カノンは椎の木に両手を当てて、優しくハミングするように呪文を唱えた。椎の木に花が咲き、実がなった。ぽとり、と落ちたドングリをカノンは拾い、リスの目の前に転がした。
「どうぞ、リスさん」
リスはドングリを持ち上げ首をひねった後、口の中に入れた。
「ふふっ。ほっぺが膨らんでる」
カノンが立ち上がると、リスは走り去ってしまった。
「また、ひとりぼっちになっちゃうのかな……」
カノンが呟いたとき、遠くから声が聞こえた。
「カノン! どこにいるんだ!? 食事の時間になるぞ!」
「……ベンジャミン!?」
カノンは声のする方向に駆けて行った。
「カノン、何してたんだ? 一人で森に入ったら危ないだろう?」
「えっと、その……」
ベンジャミンはカノンの手を引いて、食堂へと歩きだした。
「カノンの調律魔法、すごかったぜ。あの嫌味なミランも、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してたじゃないか。カノンはいつから調律魔法が使えたんだ?」
カノンは一瞬躊躇したが、素直に答えることにした。
「……気づいたときには、使えてた」
「へー。じゃあ、やっぱ才能なのかな? さあ、食事に行こうぜ、みんなが待ってる」
ベンジャミンは特に何かを気にする様子もなくカノンを食堂に引っ張っていく。
カノンはベンジャミンの変わらない態度を見て、こころの奥でほっとしていた。




