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第99話 魔道帝


タカラは周り一面ガラス張りの最上階の一室へと案内される。

まるで空の中にいるみたいである。


「やあタカラ、よく来たね。会えてうれしいよ」


ローブを身にまとった男性がタカラにそう話しかける。

身長や体格はタカラとそれほど変わらないが、顔の彫が深く、目元もはっきりしている。

どうやらこの男性が『世界魔導推進局』の局長のようだ。


「僕のほうこそ久しぶりにアウゼルに会えてうれしいよ」


タカラはそう言いながら男性と握手を交わす。

どうやら男性の名前はアウゼルというようだ。

そしてタカラの口ぶり的に、会うのは初めてではないらしい。


「久しぶり……か。タカラはそうかもしれないが、実は私は始まりの町「コト」で一方的にタカラのことを見てたんだ。だから私はそれほど久しぶりという感じはしないな」


アウゼルがそう言うと、タカラは驚いている表情をしている。


「えっ、そうだったの!? 声かけてくれたらよかったのに! ちなみにどこで見たの?」


「冒険者協会の闘技場だな。ものすごい盛り上がっていたからちょっと覗いてみたんだがまさかタカラのギルドとは思いもしなかったよ。たしか『疾風の黒豹』だったか? そのギルドとのギルド対抗戦だな」


「そうだったんだ。それは恥ずかしいところを見られたね」


タカラはそう言いながら苦笑している。


「そんなことはない。まさかタカラの戦う姿を見れるとは思いもしなかったからな。覗いてみて正解だったよ……まあ、タカラの相手のことは気の毒に思うが」


アウゼルはそう言いながらふっと笑う。

元S級パーティー『神秘の陽樹』のメンバーにしてS級冒険者でもあるタカラの相手をさせられる身になって考えると、思わず笑ってしまうほど気の毒に思ったのであろう。


「久しぶりに僕の戦う姿を見てどうだった?」


「うむ、なんだか新鮮な気持ちになったな。昔を思い出したというか……まあ、よかったと思うぞ」


「そっか。“魔導帝”アウゼルにそう言ってもらえて嬉しいよ」


「タカラにその二つ名で呼ばれても冗談にしか聞こえないが……まあ、いいか。そう言えばタカラも二つ名通り“憤怒”の……」


アウゼルがそこまで言いかけると、


「わぁー! ちょっとアウゼル!? その名前で呼ぶのはだめだよ! その名前を知っている人はごく一部の人だけだし、万が一誰かに聞かれてたらどうするの!?」


タカラは慌てた様子でアウゼルの会話に割って入る。

どうやらタカラにも知られたくないことがあるようだ。


「すまんすまん。ついつい口が滑ってしまった。しかし、いつ見てもタカラの反応は面白いな」


アウゼルはそう言いながら笑っている。


「ちょっと僕で遊ばないでよ! こう見えて意外とアウゼルはいたずら好きなんだから困ったもんだよ」


「最初に煽ってきたのはタカラのほうだろう?」


「うっ……確かにそうだけど……」


そう言いながら2人は笑い合っている。

こうして二人の会話を聞いていると、どうやらタカラとアウゼルはかなり仲がいいようだ。


「それで今回はどういった用件でここに来たんだ? ただ雑談をしに来ただけではないだろう?」


アウゼルがそう切り出す。


「うん、実は今日から僕のギルドの拠点を魔法都市「フースイ」に移すことにしたんだ。その挨拶にね」


「そうか。私たちとしてもタカラのような優秀な魔導士がこの都市で活動してくれるのは非常に嬉しいよ。他の魔導士たちも喜ぶだろう」


アウゼルはそう言いながら快くタカラ達を受け入れてくれる。


「それと、僕のギルドには魔導士以外のメンバーもいるんだけど、可能であればそのメンバーにも『世界魔導推進局』のクエストを受ける権利を与えてほしいんだ。どうかな?」


タカラはアウゼルにそう尋ねる。

するとアウゼルは少し考えてから、


「うむ、他でもないタカラの頼みだ。特別に許可しよう。だが、『世界魔導推進局』の建物の中には魔導士しか入ることができない。この決まりは守ってもらう。だから魔導士以外のメンバーがクエストを受けたいときはタカラか他の魔導士のメンバーが仲介してクエストを受注してくれ」


「うん、わかった。ありがとう、アウゼル」


タカラの頼みごとにアウゼルはすんなりと了承してくれる。

本来魔法都市「フースイ」で活動する魔導士以外の冒険者たちは『世界魔導推進局』でクエストを受注することはできないのだが、アウゼルの計らいでそれが可能となったのだ。

これはかなりのアドバンテージである。


「それともう一つお願いがあるんだけど……」


タカラは少し申し訳なさそうにしながらアウゼルにそう言う。


「なんだ、まだ何かあるのか?……まあ、いい。とりあえず言ってみろ」


アウゼルは少し呆れながらそう言う。


「実はこっちが本命のお願いなんだけど、僕のギルドの魔導士数名をアウゼルに鍛えてほしいんだ」


「私が?……魔法であればタカラが教えたらいいのではないか?」


アウゼルは不思議そうにタカラにそう問う。


「それも考えたんだけど、ここにはアウゼルがギルドマスターを務める『純潔の魔導団』のメンバーもいるでしょ? アウゼルが教えてくれれば『純潔の魔導団』のメンバーとも交流できるし、お互いにいい刺激を受けられると思うんだ」


タカラはそう言いながら自分の考えを話す。


「それに、アウゼルは《月刊ニューヒーローズ》の冒険者ランキング7位の猛者だし、“魔導帝”アウゼルの名前を知らない人はこの世にいないくらい有名だ。アウゼルが魔法を教えてくれるならこれ以上のことはないよ」


タカラはアウゼルの目を見ながらそう話す。


「なるほどな。タカラの考えはわかったが、一つ引っかかることがある。タカラはさっき()()()()いい刺激を受けることができるといったが、タカラのギルドの魔導士はそれほどの人物なのか?」


アウゼルは先ほどとは別人のように鋭い目つきでそう言う。


「こんなことはあまり言いたくないのだが、『純潔の魔導団』には他とは比べ物にならないレベルの魔導士が集まっている。わかりやすい例を出せば《月刊ニューヒーローズ》のギルドランキングでは3位に位置するほどだ。タカラのギルドを下に見ているわけではないが、本当に私たちに刺激を与えてくれるほどの人物はいるのか?」


アウゼルはそう言いながらタカラに問う。

やはり世界中の魔導士が集まってくるだけあって魔法都市「フースイ」を拠点にしている『純潔の魔導団』の魔導士のレベルははるかに高い。

《月刊ニューヒーローズ》のギルドランキング3位というと、世界トップレベルの実力である。

ギルドマスターを務めるアウゼルに至っては冒険者ランキング7位の実力者であり、魔導士だけで言えば世界で3本指には入るだろう。

それほどの実力者たちが集まる集団にいい刺激を与えることができるのか? というアウゼルの疑問はもっともな疑問である。

それに対してタカラは、


「そこは同じ魔導士として僕が保証するよ」


タカラはそう即答する。

そんなタカラをアウゼルはじっと見つめていたが、


「……はぁ、タカラがそう即答するということはどうやら本当のようだな。もちろん、タカラの魔導士としての腕は認めているからそこは疑いようはないのだが……」


アウゼルはそう言いつつも、まだ納得いっていないようにも見える。

アウゼルは『世界魔導推進局』の局長として、そして『純潔の魔導団』のギルドマスターとして多くの魔導士を見て来た。

そんなアウゼルだからこそ、魔導士に関しては非常に目が肥えているのである。

なのでタカラのギルドにそれほどの人物がいるとはいまだに信じられないのであろう。

しかし、アウゼルはのちに知ることとなる。

自分が思っていたよりも世界は広いのだということを……。


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